第3話 気づくことの大切さ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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今回の「ザ・対談』は、Flashアニメーションの二大巨頭が登場! 正月映画『ピューと吹く!ジャガー 〜いま、吹きにゆきます〜』の公開が決定した監督のFROGMAN(蛙男商会)さん。そしてDVD『ペレストロイカ』と『CATMAN』がリリースされたばかり青池良輔さん。お互いの新作インタビューと同時に、普段読めないようなユルくてタメになる談義をお送りいたしましょう!


第3話 気づくことの大切さ



渋谷ユーロスペースのオフィスをお借りして、青池さん(左)とFROGMANさん(右)


渋谷ユーロスペースのオフィスをお借りして、青池さん(左)とFROGMANさん(右)


未完成作『地獄の暴走機関車スティーブ』と『ヘンチマン』



──キャリアを積まれて、手間のかけ方は変わりました?

FROGMAN●僕は最初から、個人でFlashアニメーションやるときに絶対重要なのは「いかに時間をかけずに早く量産するか?」を考えていました。それが仕事にしていく分岐点……だと思っていたんです。だからとにかく早く、効率的よく作るかをやり続けてきた。けど、最近はどんどん効率化が進んできてて。

──ちなみに『ペレストロイカ』の制作時間はどれくらい?

青池●奥さんと友人が9ヶ月ぐらい、ウチでずっと模型を作っているのを見ながら、他人事みたいに「大変だなー」と。で、全部準備が整ってからは1本2週間。それは一人でFlashシコシコ作ってました。

FROGMAN●セット作るのに9ヶ月でFlash2週間って、なんか間違ってるよね(笑)。

青池●脚本に「なんでこんなにロケーションがあるの!」って怒られて。

FROGMANさん FROGMAN●触発されて、ウチでもやろうと思ったんですよ。『地獄の暴走機関車スティーブ』っていうんだけど(笑)。地獄の風景とかジオラマ作って、機関車トーマスの顔をパテで埋めて真っ赤な鬼の顔にしたの。作ったはいいんだけど、作って一杯一杯になっちゃった。

青池●えーー、もったいない。

FROGMAN●会社の隅っこに置いてありますよ。

青池●それこそ、顔の部分だけ描けばいいじゃないですか。

FROGMAN●そう、後で気がついて。勢いで「スティーブ!」というのがよくて、ストーリーはあんまり広がりないんだよね。
悪い奴がいると、そこにスティーブがやってきて機関車の薪(まき)にくべちゃう。で、走り去っていくだけの話なんだけど(笑)。

青池●ギャハハ。めちゃくちゃ広がりますよ。『ハングマン』と同じ作りじゃないですか!

FROGMAN●毎回オチが一緒っていうのがキツイんだけど(笑)。

──クレイアニメとFlashを融合したみたいに、今後何かと組み合わせるのはアリですよね?

青池●それこそ準備だけして完成してない『ヘンチマン』とか。Flashと全身タイツの融合なんですけど(笑)。

FROGMAN●早く完成させてよ。

青池●もう素材は全部、揃っているんです。あとは組むだけ。全身タイツを着て撮ったものをベクターイラスト化して、それにFlashで手を加えて戦隊ヒーローものをやろうと思ってるんですけど……カナダに全身タイツが売ってなくて。

FROGMAN●あ、そうなんだ。

青池●で、セックスショップみたいなところに奥さんと行って「顔まで隠れる全身タイツを探してる」と。店員が「あるかなぁ……」って持って来たら、すごいメッシュの全身網タイツで(笑)。

FROGMAN●「旦那さんが着るの?」って(笑)。

──よっぽどの変態と思われたでしょうね。

FROGMAN●「この変態!」って。

青池●ハハハ。

FROGMAN●でも、そう考えるとFlash、いろいろな表現が出来るしね。インプットもいろいろなものを入れられるようになってきたけど、同時にアウトプットも様々な形ができてきて。そういう意味では、まだまだ可能性はあるな。

青池●ですね。最近やらせていただいた広告関係の仕事でも、WebとポッドキャストムービーとPSPと携帯、同時に「おまかせです」って渡せちゃう。

 DVD『CATMAN III』より DVD『CATMAN III』より


 DVD『CATMAN III』より DVD『CATMAN III』パッケージ

DVD『CATMAN』青池良輔
発売中 ¥2,940(税込)
発売元:フジテレビ/ポニーキャニオン/クリエイティブアーティスツ
販売元:ポニーキャニオン
収録内容:「CATMAN」(7話)「CATMAN series」(8話)「CATMAN series (Fuji Version)」(予告編+6話)
特典映像:1/これまで一般には公開されていない番外編「CATMAN and Muse」「Secret of the red tie」
2/スポンサータイアップ制作「Hook up! 」(内容一部修正版)
3/THE PLANET SMASHERSのPVにCATMAN が登場した「Blind」
4/作者自身のインタビュー映像を収録
5/「CATMAN series III」オリジナルソースファイルの一部

8年をかけて作り上げていたシリーズ集大成。
「CATMAN series III」に町田康氏の声優参加というトピックもあるが、Flashアニメーションの先駆者たる本格さ+実験性の高さに改めて感嘆してしまう

ザ・プラネット・スマッシャーズ『CATMAN』ジャケット関連CD情報 ザ・プラネット・スマッシャーズ『CATMAN』
発売中 ¥2,625(税込)
発売元:ポニーキャニオン
収録数:20曲(55分) 初回特典:青池良輔デザイン「CATMAN」ステッカー

(C)Ryosuke Aoike / Fuji TV・Pony Canyon・Creative Artists

お台場ランドCATMAN公式ページ:http://www.fujitv.co.jp/game/catman/index2.html


修羅場を体験しよう



──では、最後にアドバイスを。

FROGMAN●自分のことを話すと、いつも「俺ってどんな人間なんだろう」と思うんです。何やっているんだろうって。やっている意味をいろいろ考えているんですけど……気づいて、それを受け入れることって大事なことだなって。僕は青池くんみたいに絵も上手じゃないし、センスも才能もない。シナリオを書くことはやるけど、本職のシナリオライターに比べたら幼稚なものしか書けない。絵も普通の人より上手かもしれないけど、いわゆるプロの方に比べたら全然下手ですし。でも、そんな中でも、ガラクタばかりだと思うものを組み合わせると「こんなものができるよね」って。逆に、自分が「こんなことできないな」「こんなところダメだな」ってところ、自分で割り切って気づくようにしてて。

──気づくことの大切さ、ありますね。

FROGMAN●ええ。無知の知じゃないんですけど。

青池●僕も蛙さんと喋りがカブリますが「できないことを知ることが一番だ」と。自分が何が苦手か……早く気づいて、絵が描けないなら早い段階で3Dの勉強をすればいいし、空間がつかめないなら写真を使って作品を作ればいい。チョイスはいろいろある。最終的に自分が何を発表したいか、何ができないか、わかっていれば、夢に到達する道っていろいろあるんですよ。そう言った後に、自己嫌悪に陥るんだけど(笑)。

──それは、経験を踏んだから思うように?

FROGMAN●そうですね。

青池●昔は天才だと思ってましたからね(笑)。

FROGMAN●そうなんだよね。僕も高校時代、バンドブームだったから音楽もやりたかったんですよ。音楽か映画、どっちかと。で、冷静に考えると音楽、無理なんです。プロを目指そうと思ったけど、そんなことしたら大変なことになっていた。音楽を捨てて実写やって、監督やりたいと言いながら自分で企画立てることなく、その世界に10数年いたけど……「あ、ダメだ」って気づいたことが自分の中で転機だったな。

青池良輔さん 青池●ネガティブな感じに聞こえるかもしれませんが、そのほうが早い。僕も昔、映画会社で働いているときに「企画出せ」って言われて。たまたま、そのとき脚本書いたらGOになったんです。じゃあ、監督誰にしようか。プロデューサーが「自分で書いたんだからお前が監督やる?」って。ちょっとビビッちゃって。そのとき「……できない」と。

──そこで「やります!」って言う人もいますよね。

FROGMAN●うんうん。

青池●いまこうやってDVD作ってみると、当時のプロデューサーが「あんとき『やります!』って言葉。待ってたのに」って(笑)。

FROGMAN●あとは修羅場を知ることだな。自分を追い込んだほうがいいです。下積みって必要で、Flashやっていると若い子がすぐディレクターになるつもりで来るんです。でも、ダメなんですよ。らしいものを作って、作品としても完成しているんだけど……下積みの良さって人間の厚みをつけるのは当然、作品の厚みにも重要で。

青池●いいこと言いますね(笑)。

FROGMAN●下積みの良さって、やりたくない仕事もやらなくちゃならないところ。本当はこんなことやりたくないのに……と思いながらも、一所懸命やらなくちゃならないというのがあって。それが段々、幅になっていくんですよ。好きなことばかりずっとやっていると、後々先細りするのは目に見えている。僕も20代の頃はずっと製作現場で、2時間のサスペンスもやれば、CMもVシネマもやって。食うためにやっていたんですけど、結局いま振り返ってみると、今いろんなオーダーがあるときに「ああ、あんな感じにやればいいんだな」と。それはよかったなと思いますね。

青池●あと、お金をもらうスピードってありますよね。作品を作るスピードで結構キツイところもあるんですけど、そういうことを経験で憶えていく。他のFlashアニメーターとの話で、やっぱりある程度の量を生産しないと生業としてやっていけないんです。ものすごい美味しいケーキを作れるんだけど、1日1個は趣味じゃないですか。1日100個作れるようになって商売になる。そういうスピード感は経験しているとよいのではないでしょうか。

──それはどんな職業でも言えることですね。本日はどうもありがとうございました。

(取材・文/増渕俊之 写真/谷本夏)



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