熾烈を極めるFacebook vs Google+(前編)
熾烈を極めるFacebook vs Google+(前編)
2011年7月11日TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)
GoogleがFacebook対抗の切り札として、新しいソーシャルネットワークサービスをリリースした。それがGoogle+だ。
2011年6月11日時点でGoogle+は、Gmailのリリース時に似て限られた人数にしか利用を許可しない、限定公開の状態にある。IT業界の人間を中心に試用が進んでいるが、これまでのところ、評判は総じて良いようだ。
多くのネットユーザーにとって、Facebookが7億5000万人ものアクティブユーザー(1カ月に一度以上ログインしているユーザー)を集めていることは、もはや驚くには当たらない。世界のインターネット人口は約20億だから、Facebookは35%ほどの普及率、ということになる。
しかしGoogleにとっては、この数字はまさしく“すぐそこにある危機”に他ならない。
詳しくは僕の共著『ソーシャルメディア維新』(毎日コミュニケーションズ)を参照いただければと思うが、GoogleにとってFacebookはWeb上の癌細胞のように感じることだろう。Googleは検索エンジンによるWeb上のトラフィックを広告によって換金する会社だ。つまり、オープンなWebがあってこそ、あれだけの巨大な存在感を維持している。
しかし、いまやそのWebは、スマートフォン上のアプリケーション群によってネット利用の最大シェアの座を奪われ、さらにFacebookという閉鎖的な空間がWeb上に広がることによってGoogleが検索できない領域が加速度的に広がりつつある。体内に巣食う癌細胞のように、Googleが理想とするWebの健全なオープン性を徐々に蝕みつつあるのである。
そうした状況を見逃せるわけもなく、OrkutやGoogle Wave、Google Buzzなど、さまざまな手法でFacebook対抗のソーシャルネットワークサービスをリリースしてきたGoogleだが、ことごとく失敗に終わってきた。その彼らが満を持してβリリースしたのがGoogle+である。
Google+の外観は、かなりFacebookに似ている。というより、ソーシャルの分野でこれ以上の失態が許されないGoogleが、なりふり構わずFacebookのインターフェイスを研究した結果が現れているといえるだろう。サービス内容も当然似通っているが、Google+は友人の階層化(たとえば家族、友人、知人、恋人、仕事関連、などのグルーピング)を行える。これを彼らはサークル、と呼んでいる。Facebookの人間関係は基本的に非常にフラットであり、単なる顔見知りや会社の同僚との関係性と、恋人や家族との関係性を区別することができない。これがFacebookの最大の弱点であるとGoogleは考えたわけだ。これは、小規模グループに特化したSNSであるPathが、友人として承認できる人数を最大50人としたアプローチに近い。人間関係を整理したいと考えるか、Facebookのようにすべてフラットでよいと考えるか、その違いによってGoogle+のサークル機能への評価が変わるはずだ。
ただ、現時点でGoogle+がすぐれているのは、モバイルへの対応と多言語対応を、ほぼ完璧に行っていることだ。日本においてAndroidスマートフォンのユーザーが急増していくこともあり、これが功を奏する可能性は十分にある。
それにしても、果たしてGoogle+はFacebookを追い上げることができるだろうか。この点については、次回詳しく解説してみよう。
(後編に続く)
Google+
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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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