スーパーコンピュータ「京」の世界一奪回で考える、ビッグデータの可能性(前編)

スーパーコンピュータ「京」の世界一奪回で考える、ビッグデータの可能性(前編) 2011年6月27日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

独立行政法人理化学研究所と富士通株式会社が開発しているスーパーコンピュータ「京」が、TOP500リストで世界一の座を7年ぶりに奪還した。

スーパーコンピュータとは、高速演算が一般的なコンピュータをはるかに超える高性能コンピュータのことだ。ちなみに、TOP500とはスーパーコンピュータの演算処理速度順に、上位500位を定期的にランク付けするプロジェクトであり、1993年に発足した。

なぜ高速演算できることがすごいのか、と考える人もいるかと思うが、処理能力の低いPCで重い画像や動画の編集作業中に、砂時計マークが出たまま止まってしまった経験はないだろうか。つまりスーパーコンピュータの用途は、一般的なコンピュータでは処理しきれない巨大で複雑なデータ(これをビッグデータという)を処理することだ。ビッグデータの処理は、砂漠に落としたかもしれない一粒の真珠を探し出す行為に似ている。正解があるかどうかわからないし、あるとしても正解を見つけ出すのに無限とも思われるほどの時間がかかる、だからその時間と根気がなければあきらめざるを得ない。正解の有無を確認し、あるならそれがどんなものかを知る、つまりシミュレーションを行う。スーパーコンピュータとはビッグデータを解析してシミュレーションするためのものであり、「京」はその速度が世界一、というわけだ。

ではPCなどで扱えないほどの巨大なデータ、すなわちビッグデータとはどのようなものか。たとえば気象情報やグローバル経済における株価情報などがあげられる。あるいは人工衛星などの打ち上げや軌道修正に関わるデータなどであれば、PCではとても処理しきれないほどの複雑さであると理解できるだろう。ビッグデータをできるだけ短時間で処理して、正確な解析結果を得ることができれば、利便性が高まり、データの利用方法も多様化する。

僕が経営する株式会社モディファイは、ソーシャルメディアマーケティング事業を行うベンチャー企業だが、実は我々の事業にとっても、このビッグデータは大きなテーマだ。FacebookやTwitterに代表されるソーシャルメディアとスマートフォンの普及によって、インターネット上に無数の個人データが流入し始めており、しかもそれらは複雑に共有され、あらたなデータを生んでいる。GPSによる位置情報(ジオデータ)とソーシャルデータの組合わせをジオソーシャルと呼ぶが、これらの新たなビッグデータの処理を正しく行い、有用データを抽出することができれば、巨大なビジネスを創出することが可能になることはまちがいない。

(後編に続く)



スーパーコンピュータ「京」の最新の整備状況



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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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