iOSデバイスの利便性を支える技術と特許

iOSデバイスの利便性を支える技術と特許
2011年12月28日
TEXT:大谷和利(テクノロジーライター、原宿AssistOnアドバイザー)

2007年にスティーブ・ジョブズが初代iPhoneを発表した時、彼はマルチタッチ技術を重要視していること、そしてその特許を押さえていることを強調した。

現アップルCEOのティム・クックも、COO時代の2009年に「わが社の知的財産が侵されない限り、競争は歓迎する。しかし、知的財産を侵すつもりならば、それがどこであれ戦うつもりだ」と語り、特許侵害に対して徹底的に争う姿勢を明確にしている。

マルチタッチは見ばえがする技術だけに、その後の他メーカーの製品もマーケティング的に採用せざるを得ずに現在に至り、Apple自身も係争の中心に据えているが、特許裁判は長引くケースが多く、決着が着くまでには、まだ少し時間がかかりそうだ。

その間にも、同社はサムスンをデザインの類似性で訴えるなど、別の角度からライバルを牽制する動きに出て、ドイツやオーストラリアで一時はGalaxy Tab 10.1の販売差し止めの仮処分命令を引き出すことに成功した。その後、オーストラリアではサムスンの主張によって命令が取り消される一方、Appleが新たに10件以上の特許侵害を主張して再度提訴。サムスン自身も新型のGalaxy Tab 10.1Nでは、iPad 2との類似性を減らすデザイン改変を行うなど、様々な思惑が交錯する状況が続いている。

しかし、Appleはマルチタッチ以外にもiOSデバイスの使い勝手を特徴づける特許を着々と申請しており、その中でも重要と思われるふたつのアイデアが、先頃米国特許庁によって認められた。

そのひとつは、メールなどで送られてきたテキスト中に電話番号やアドレス、スケジュールに関係する文字列がある場合、それを処理可能なアプリ(電話発信、連絡先、カレンダー)にフォワードして電話をかけたり、データとして登録するというもの。もうひとつは、通話中にアプリケーションスイッチングを行った場合に、グラフィカルに通話が続いていることを示し、通話に戻るためのインターフェイスを提供するというものである。

どちらもマルチタッチ技術ほどの派手さはないが、iOSデバイス(後者は現製品ではiPhoneに固有)の利便性の一端を担う特徴であり、こうした部分で類似の操作ができなくなることはライバル製品にとって大きな痛手となるだろう。

筆者は年に1、2回韓国を訪れているが、行くたびにサムスンやLG電子のお膝元でありながら特に若者の間でApple製品の人気が高まっており、街中や電車内などで見かける機会が増えている。

同国では少し以前から、シューズメーカーのCONVERSEが「本物を履こう」キャンペーンを行うなど、購買力をつけてきた若年層向けに「コピー=悪」というネガティブキャンペーンではなく「オリジナル=格好良い」というポジティブな価値観を打ち出すマーケティングが見られるようになっている。2012年以降、Apple以外のメーカーはその点についての対抗策も練る必要に迫られてくるだろう。



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[筆者プロフィール]
おおたに・かずとし●テクノロジーライター、原宿AssistOn(http://www.assiston.co.jp/) アドバイザー。アップル製品を中心とするデジタル製品、デザイン、自転車などの分野で執筆活動を続ける。近著に『iPodをつくった男 スティーブ・ ジョブズの現場介入型ビジネス』『iPhoneをつくった会社 ケータイ業界を揺るがすアップル社の企業文化』(以上、アスキー新書)、 『Macintosh名機図鑑』(エイ出版社)。

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