次のトレンドとして注目される画像共有型ECサイト(2)

次のトレンドとして注目される画像共有型ECサイト(2)
2012年07月17日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

本記事は「次のトレンドとして注目される画像共有型ECサイト」の続編になります。まだお読みいただいていない方は前回のコラムからお読みください。

前回のコラムでは、ブロック状に画像中心のコンテンツボックスを並べ、クリックを誘発するタイプのトーン&マナーを採用する企業が増えてきたと述べたが、今回はその理由と目的を解説しよう。

映画「ソーシャルネットワーク」で、ジャスティン・ティンバレイク扮するショーン・パーカーがパーティー中に逮捕されるシーンを覚えておられるだろうか。Facebookユーザー100万人突破を祝って、社員やインターンとどんちゃん騒ぎをしていたところ、警官に踏み込まれるのだ(ちなみに彼が覚醒剤を使用していたと勘違いする人が多いが、あのシーンでも彼はいっさい使用していないし、極度のアレルギー体質のため覚醒剤使用は生死に関わる危険がある)。

そのパーティー中に、彼は写真共有サービスこそがソーシャルネットワークサービスの中心になる、画像をリアルタイムでアップして、タグ付けして、場所や時間を超えて楽しい気分を共有していくことこそ、次世代のデジタルライフなんだと熱を込めて演説している。

事実、Facebookが爆発的にユーザーを伸ばしはじめたのは、この写真共有アプリが導入されてからだ。当時写真共有サービスとして人気だったFlickrはYahoo!に買収されて以来精彩を欠いていたものの、Facebookは瞬く間に世界最大の写真共有サービスになった。

この写真共有アプリがさらに存在感を増したのは、Facebookがタイムライン化したときだった。ニュースフィードにサムネイルが流れるとクリック率が急に上がることに誰もが気づいた。これがヒントだった。

Facebookと同じようにタイムライン(時系列)に情報を流し、クリック具合や共有される数などによってエッジランクのように掲載順を変える。つまりストリーム型のUIをまねるが、掲載する情報を画像だけ、もしくは画像必須にすることを考えた起業家がいた。これがPinterestだ。

Pinterestは、Facebookから画像共有機能だけを取り出したシンプルなサービスだ。従来のFlickrは、画像アルバムである。コンテンツである写真はファイルとしてアーカイブされる。しかしPinterestはアルバムではなく、タイムラインでありピンボードだ。コンテンツである写真はファイルではなくストリームとして流れていく。リアルタイムが命であり、閲覧者はその瞬間に興味のある画像をクリックする。

このPinterestはピンボードとして美しい画像を眺める楽しみをつくり、それが女性ユーザーの心をつかんだ。さらにそのクリック誘発力の高さに多くの起業家の関心も呼んだ。結果として購買力の高い女性にできるだけ多くのクリックをしてもらえるUIとして、Pinterest風のUIを採用しようとするEC起業家が増えた。これがFabやwaneloであり、楽天がPinterestに投資した理由でもある。

いまやインターネットビジネスの新しい潮流は、クリックしたくなる美しいデザインとシンプルさをもつUIの設計能力の有無になったといえる。クリエイターの時代が来ている、ともいえよう。特に、PCとモバイルの両方において才能を発揮できる人材が必要だ。

PinterestにしてもFabにしてもシステム的に新しいものではなく、Facebookが証明したストリーム型の写真共有アプリをベースにした“焼き直し”である。しかし、このUIがいまやインターネットビジネスの台風の目になりつつあり、多くのユーザーと投資家の目を奪っているのだ。



Pinterest





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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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