O2Oの勝者は誰だ?

O2Oの勝者は誰だ?
2012年07月30日
TEXT:小川 浩(株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター)

前回のコラムでは、LINEの伸張と、その対抗馬としてのPath、そしてソーシャルネットワーク業界における勢力図の変質について書いた。

簡単におさらいをすると、Facebookとそれに続くGoogle+などの実名型ソーシャルネットワークは従前の巨大ソーシャルネットワーク(mixiやMySpaceなど)を破壊し、世界全体を覆いつつあるが、反面彼らの勢力が大きくなればなるほど、彼らはサービス上の特殊性や排他性を失い、結果として小規模で小回りの効く新しいソーシャルネットワークの台頭を許すことになる、という矛盾が存在しているということである。

たとえばLINEやPathは、Facebookよりはるかに小規模で親密な相手とのコミュニケーション機会を、モバイルデバイスにフォーカスして提供するというサービスだ。月や星が太陽の不在を喜ぶように、多くの新興サービスがFacebookの勢威が届かない領域に入り込み、根を張りつつある。

その中でも、やや見過ごされがちな領域がローカルビジネスのソーシャル化だ。つまり、オンライン・トゥー・オフライン(O2O)である。Facebook自身も上場後初の記者会見で言及しているが、多くの中小企業や商店街などは未だにオンライン化に着手していない。米国においてはYelp、日本国内ではぐるなび などがオンライン電話帳的なサービスを提供しているが、その情報はインタラクティブとは言いがたいし、更新頻度もそれほどアクティブではない。仕組み上、ステルスマーケティング(ステマ)が入り込むことを防ぐことも困難だ。

さらに、それらのページへのトラフィックの多くは検索エンジン基点のままだし、ローカルビジネスの事業者たち自身のWebサイトはないか、あっても恐ろしく貧弱なままだ。モバイル対応にいたっては、ほとんどないといっていい。

こうした状況をビジネスチャンスと捉えて成功したのがGrouponだった。彼らは消費者に非常にお得なクーポンを与える引き換えに前払いをさせるという“画期的”なアイデアをもって、多くの顧客を実際の店舗に足を運ぶきっかけをつくったのだ。しかし残念なことに、Grouponのアイデアの有効性は店舗側からみれば一回限りだった。消費者は一度は店舗に足を運ぶものの、二度目はない。次に行くのは新たに入手したクーポンを発行した店舗であり、リピーターになることは少なかったのである。

多くの起業家はGrouponが示したO2Oの可能性に震撼し、そのビジネスモデルを摸倣し、そこからさらに一歩進んだ“リピート性を持つO2Oモデル”の研究を始めたものの、いまのところ誰もGrouponのその先のドアを開けられたものはいないのが現状だ。

FacebookやFoursquareらは、広告主が位置情報にひもづけたプロモーション情報やクーポンを、それらに関心がありそうなユーザーに“ある程度確実に”届けるサービスを用意しているが、今のところその有用性はまだ証明されていない。そしてLINEのようなモバイル特化のサービスにも、O2Oプラットフォーマーになれる可能性が少なからずあって、誰が勝者になるかはまったくわからない。

いずれにしても、ほんとうにさまざまな分野においてFacebookの巨大な手指では触れられない個所が存在していることがわかりはじめ、新興企業が新しいブルーオーシャンに向けての挑戦をスタートしている。その中でももっとも大きな領域のひとつがO2Oであり、ローカルビジネスのソーシャル化が必要だけに、その発祥は米国、日本など、国や地域別に顕在化する。言い換えれば、LINE同様日本発の新興企業にも大きなチャンスがあるということである。


Groupon




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[筆者プロフィール]
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ(毎日コミュニケーションズ)、『Web2.0BOOK』(インプレス)、『仕事で使える!「Twitter」超入門』(青春出版社)、『ソーシャルメディアマーケティング』(ソフトバンククリエイティブ/共著)などがある。
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