スマートフォンを通じて日本IT市場の未来を考える
スマートフォンを通じて日本IT市場の未来を考える
2012年08月06日
TEXT：小川 浩（株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター）
今回からしばらく不定期で、スマートフォンについて再考するコラムを書く。iPhone5の登場までに、スマートフォンとは一体なにかを、もう一度まとめていこうと思うのだ。
EC企業の決算発表が続き、スマートフォンの存在感がますますアップしている傾向が目立つ。国内EC最大手の楽天は全流通総額の25％がモバイルで、そのうちの半分、すなわち全体の12～13％がスマートフォン経由であると公表している。楽天に続く最大手ショッピングモールであるYahoo!ショッピングではスマートフォン経由の流通総額がほぼ10％になっており、どちらも増加傾向にある。2015年には、アクティブな携帯電話の利用台数の50％をスマートフォンが占めると予想されているので、およそ3年以内にEC全体の流通総額の50％以上がスマートフォン経由になることはまちがいなかろう。インターネットの主役はスマートフォンとタブレットという、ポータブルで指先や音声などのNUI（ナチュラルユーザーインターフェイス）を採用した新しいデバイスに完全にシフトしている。
TEXT：小川 浩（株式会社モディファイ CEO 兼クリエイティブディレクター）
今回からしばらく不定期で、スマートフォンについて再考するコラムを書く。iPhone5の登場までに、スマートフォンとは一体なにかを、もう一度まとめていこうと思うのだ。
EC企業の決算発表が続き、スマートフォンの存在感がますますアップしている傾向が目立つ。国内EC最大手の楽天は全流通総額の25％がモバイルで、そのうちの半分、すなわち全体の12～13％がスマートフォン経由であると公表している。楽天に続く最大手ショッピングモールであるYahoo!ショッピングではスマートフォン経由の流通総額がほぼ10％になっており、どちらも増加傾向にある。2015年には、アクティブな携帯電話の利用台数の50％をスマートフォンが占めると予想されているので、およそ3年以内にEC全体の流通総額の50％以上がスマートフォン経由になることはまちがいなかろう。インターネットの主役はスマートフォンとタブレットという、ポータブルで指先や音声などのNUI（ナチュラルユーザーインターフェイス）を採用した新しいデバイスに完全にシフトしている。
あらためて言うが、テクノロジー的にみればiPhoneやAndroid搭載のスマートフォンは小型のPCだ。PCに通話機能を付け加えて小型化したもの、それがスマートフォンだ。
逆に言えばいわゆるガラケーは有線電話の無線化、そして小型化という技術的進化を遂げてきたわけで、“電話”にメールやWeb閲覧、ゲームなどの機能を追加してきたものである。つまり、貧弱なプラットフォームに無理矢理機能を追加して高付加価値化してきたわけだ。日本の自動車メーカーがもともと安価な小型車が得意で、小さなボディに小排気量のエンジンを載せ、徐々に技術を煮詰めながら高機能化してきた流れに似ている。技術力はすごいが、もともとのベースが貧弱だから余裕はない。つねにギリギリだ。
対して現在のスマートフォンは、大型ボディに大排気量エンジンを載せた高級車の軽量化・小型化に成功したようなもので、これからどう進化をさせようかと考えたときに、まだまだ全力を出し切っていない感がある。カスタマイズしていくうえでベースがリッチだから、時間とお金をかければいくらでも改良できる余裕があるのだ。
自動車の世界ではトヨタが初の生産台数1000万台を達して絶好調だが、それは彼らが世界をつねに視野にして、ハイブリッドやレクサスブランドなどの新しいプラットフォームに投資をしたからこそだが、残念ながらIT業界では国内の特殊な環境への依存度を脱却できずにきた。ジャパニーズ“ケータイ”の失速はその最たるものだろう。
要するに、日本の携帯電話メーカーはPCメーカーに負けた。これまでの携帯電話というプラットフォームが、PCベースのプラットフォームに負けたということだ。サムスンがAppleに匹敵するスマートフォン販売数を誇っているからには、日本の企業にもまだまだ逆襲の可能性があるのだが、いまのところそのきざしがない。
では、我々はどうしたらサムスンに勝ち、世界市場へのIT輸出大国になれるのだろうか。これからスマートフォンをひとつのカギとしてゆっくり考えていきたい。
逆に言えばいわゆるガラケーは有線電話の無線化、そして小型化という技術的進化を遂げてきたわけで、“電話”にメールやWeb閲覧、ゲームなどの機能を追加してきたものである。つまり、貧弱なプラットフォームに無理矢理機能を追加して高付加価値化してきたわけだ。日本の自動車メーカーがもともと安価な小型車が得意で、小さなボディに小排気量のエンジンを載せ、徐々に技術を煮詰めながら高機能化してきた流れに似ている。技術力はすごいが、もともとのベースが貧弱だから余裕はない。つねにギリギリだ。
対して現在のスマートフォンは、大型ボディに大排気量エンジンを載せた高級車の軽量化・小型化に成功したようなもので、これからどう進化をさせようかと考えたときに、まだまだ全力を出し切っていない感がある。カスタマイズしていくうえでベースがリッチだから、時間とお金をかければいくらでも改良できる余裕があるのだ。
自動車の世界ではトヨタが初の生産台数1000万台を達して絶好調だが、それは彼らが世界をつねに視野にして、ハイブリッドやレクサスブランドなどの新しいプラットフォームに投資をしたからこそだが、残念ながらIT業界では国内の特殊な環境への依存度を脱却できずにきた。ジャパニーズ“ケータイ”の失速はその最たるものだろう。
要するに、日本の携帯電話メーカーはPCメーカーに負けた。これまでの携帯電話というプラットフォームが、PCベースのプラットフォームに負けたということだ。サムスンがAppleに匹敵するスマートフォン販売数を誇っているからには、日本の企業にもまだまだ逆襲の可能性があるのだが、いまのところそのきざしがない。
では、我々はどうしたらサムスンに勝ち、世界市場へのIT輸出大国になれるのだろうか。これからスマートフォンをひとつのカギとしてゆっくり考えていきたい。
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［筆者プロフィール］
おがわ・ひろし●株式会社モディファイ CEO兼クリエイティブディレクター。著書に『ビジネスブログブック』シリーズ（毎日コミュニケーションズ）、『Web2.0BOOK』（インプレス）、『仕事で使える!「Twitter」超入門』（青春出版社）、『ソーシャルメディアマーケティング』（ソフトバンククリエイティブ／共著）などがある。
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