第1話 インタラクティブなメディアの可能性 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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SUBARUやコカ・コーラのキャンペーンサイトなど、インタラクティブなWebサイトを数多く手掛けているGT INC.のクリエイティブディレクター、内山光司氏。今回はプロデューサーではなく、Webにおけるクリエイティブについて、クリエイティブ・ディレクターである内山氏に、クリエイティブ・ディレクターの仕事について、Webにおける映像やYouTubeなどの話を聞かせていただいた。


第1回 インタラクティブなメディアの可能性



——簡単に内山さんの経歴、GT INCという組織について教えてください。

内山●電通に約18年間勤務した後、2001年(株)ワンスカイという会社を設立し、2006年4月GT INC.を田中徹と一緒に設立しました。GT.INCはクリエイティブブティックという業態で、少人数で広告全般の企画とディレクションをする会社です。Webに特化しているわけではなく、広告という領域において、すべてのクリエイティブをワンストップでランニングし、ディレクションすることを目標にしています。


GT.INC.のトップページ
「心。技。体」という文字が会社のスピリットを表現している

広告業界においては、TVCMやWebを専門にしているところはありますが、すべてを1カ所でやっているところは少ないので、そこが僕達の強みだと思っています。僕自身はプロデューサーとしてではなく、クリエイティブ・ディレクターとして、クリエイティブにおけるすべてのことをディレクションしています。時にはTVCMの企画もするし、コピーも書くし、マーケティング戦略にも口を出します。特にWebだけのことをやっているわけではないのですが、昔からインタラクティブには興味があって、そういった仕事を手掛ける割合は多いですね。


——インタラクティブに興味を持ちはじめたのはいつ頃ですか?

内山●90年くらいだと思います。僕が最初に手掛けたインタラクティブの仕事はCD-ROMですね。当時CD-ROMを見たときに「これは新しい、これはきっとくる!!」と直感に近いものを感じましたね。CD-ROMあるいはネットというメディアそのものではなくて、インタラクティブであるコンテンツの特性にものすごく可能性を感じました。それまでの広告やTVや、映画、本などは基本的に受動的なメディアで一方的に伝えるものだったのだけど、ゲームのように自分が選択をすることによってなにかが変わるとか、自分が関わっていくことによってストーリーが進んでいくといった、そういったインタラクティブ性をもった構造のコンテンツが、アップルのハイパーカードというシンプルなアプリケーションを使って生まれてきたのを見た時、そこに新しい情報ビジネスの可能性があるに違いないということを感じましたね。

その後もCD-ROMをつくったり、3DOのタイトルをつくったりしていたのですが、インターネットで最初に手掛けた本格的な仕事になったのが95年のトヨタ自動車のtoyota.co.jpの立ち上げでした。toyota.co.jpの最初のサイトとして、95年の東京モーターショーのページを作りましたね。




——その時、それまでのCD-ROMとインターネットとの違いは感じましたか?

内山●CD-ROMとは違って、インターネットでは単純に「繋がっている」という可能性を感じましたね。それまでもパソコン通信とかはありましたけど、インターネットでは映像の中継ができたり、リアルタイムにユーザーとやりとりするとか、ユーザーと一緒になって表現できる可能性というのがとても興味深かったです。でも、当時はモデムでひとつの静止画像をダウンロードするのにすごく時間がかかった時代で、表現といってもいまとは大きく違っていましたね。その後はインターネットの仕事と並行して、当時流行ったCD-EXTRAなどの制作もしていました。

——これまでのインターネットの仕事において印象深い経験はありましたか?

内山●自分にとってエポックメイキングだったのは2000年のNTT東日本の仕事ですね。これはGT INC.の田中徹がCDで、Webのプランナーを僕、そしてCMプランナーはタグボートの多田琢君の3人で作ったものです。30秒TVCMではスマップのメンバーがガッチャマンに扮して暴れ回るというものだったのですが、Webではアニメで見せようということで、ガッチャマンの本家本元のタツノコプロにアニメを作ってもらいました。

この広告のそのものが、NTTのフレッツを売るためのものだったし、「インターネットが面白い」というメッセージを伝えるものだったので、コンテンツとしてお客さんの興味や関心をWebに向けさせるような魅力的なコンテンツにする必要がありました。それで当時としては画期的だったのですが、広告の第一線のプロと一緒に企画を考えたわけです。監督は「下妻物語」などの中島哲也監督で、アニメはタツノコプロが真剣に作ってくれて、とても面白いものになったと思います。それまでTVとWebが連動しているものは少なくて、また面白いコンテンツもWebにはあまりないという状況において、このプロジェクトは十分に手ごたえがあったし、ページビューもかなりありました。

当時のWebはテレビやグラフィック広告にかけられる、コスト、時間、スキルと比較して、まだまだクリエイティブのパワーや力が弱かったのです。テレビや他の広告と同じレベルでWebのクリエイティブも面白いと思わせることが必要でした。当時は今以上に広告業界の人たちはWebのことがわからなかったし、Web業界の人たちは広告についての経験や知識がなかった。そういった状況下においては双方の橋渡し役、Webと広告クリエイティブの両方の知識がいずれ必要になるだろうなと確信したプロジェクトです。

同時にWebは広告メディアとして今後ものすごく重要視されていくだろうとも思いました。今後はこういったスタイルの広告が主体になるに違いない、TVとWebを連動させて、かつ一定のクリエイティブパワーをWebでも発揮するというニーズが重要視されてくるに違いない、と思ったのがこのNTT東日本の仕事でした。ユーザー側はWebでも面白いものが見たいわけだし、クライアント側はWebでもクリエイティブの質の高いモノを出していきたい。そういったニーズがあるなと確信して、それでワンスカイという会社を設立して、現在に至っています。

——最近の仕事ではどういったことを?

内山●最近ではSUBARUのLEGACYのページ、あとはコカ・コーラ ジョージアのスペシャルサイトといった、いわゆる企業情報サイトではなく、ブランディングを目的としたスペシャルサイトを多くやっていますね。それ以外にも松下電器、富士ゼロックスなど、クライアントや製品によってコンセプトや狙いが違っているので、クリエイティブ表現も目的によって変わっています。

たとえば、パナソニックのVIERAのグローバルブランディング用に作ったサイトは、Webでいかに美しい映像をみせるかというところに手間と知恵を使っているサイトですし。コカ・コーラのサイトはエンターテインメイトコンテンツとして純粋にお客さんに面白がってもらうためのものです。

SUBARUのサイトの目的はWebを見た人がクルマを買いたくなるかどうかということです。クルマ業界のWebの役割とは、購入の最終段階で影響力を与えることなんです。これまでだと新車情報を雑誌や広告で見て、それからお店に行ってカタログをもらって見て、営業の人と相談して購入を決定するというプロセスが多かったのですが、最近ではショールームに行く前にWebでチェックをするということが増えているようです。Webはクルマを購入するという最終意思決定の直前に機能することが多いんですね。目的がそうだとしたら、Web上でギミックばかり使って驚かせても仕方がない。むしろ気持ちよくカタログを見る時の気分やシチュエーションをコンピュータのなかでいかに再現できるか。このクルマが欲しいなあと思わせられるかどうかということを強く意識しています。

コカ・コーラの場合には120円のコカ・コーラを買うのに、Webで商品を事前に調べるという人はいないので、単純にコカ・コーラやジョージアを好きになってもらうためにはどうしたらいいかという目的を重視します。製品ごと、それぞれマーケティングの狙いによってクリエイティブも違ってきますね。



(取材/文:蜂賀 亨 写真:谷本 夏)






内山光司
GT.INC
クリエイティブディレクター


1984年電通入社。2001年(株)ワンスカイ設立5年間活動後、2006年GT INC.設立。主に広告キャンペーンの分野でウェブサイトのディレクションを行う。受賞歴として、東京インタラクティブ・アド・アワード グランプリ、文化庁メディア芸術祭優秀賞、One show Interactive Gold Pencil、New York ADC、D&ADAwards、グッドデザイン賞他、多数。

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