第3話 動画とYouTubeについて | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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SUBARUやコカ・コーラのキャンペーンサイトなど、インタラクティブなWebサイトを数多く手掛けているGT INC.のクリエイティブ・ディレクター、内山光司氏。今回はプロデューサーではなく、Webにおけるクリエイティブについて、クリエイティブ・ディレクターである内山氏に、クリエイティブ・ディレクターの仕事について、Webにおける映像やYouTubeなどの話を聞かせていただいた。


第3話 動画とYouTubeについて



——内山さんならではのクリエイティブに関する方法論はありますか?

内山●既存のメディアであれば、ゲームの中にたくさんクリエイティブのヒントがあります。僕はゲームから学んだことが多いですね。ゲームも自分がやりたいからやっているわけで、どんどん前のめりにつっこむものだし、宮本茂さんの作ったスーパーマリオなんて、本当に学ぶべきところがたくさんあります。プレーヤーはなにも情報を知らないところから始まって、どんどん自分で情報を見つけていくわけじゃないですか。プレーヤーはマニュアルなんか読まずにゲームを始めて、ジャンプして天井からコインが出るとか、そういうことをさぐりながら勝手に学んでいく。それで興味がさらにわいて、次のステップに進んでいく。そういった興味の仕掛けが、実は巧妙に計算されている。すぐれたゲーム、面白いゲームというのはとても巧みにデザインされているんですよね。気付かないだけで。

Web広告におけるデザインも、ユーザーの関心をどうデザインするかということだと思うんです。もうTVや雑誌広告などの既存の広告、あるいはWebでも企業や個人が「おれが言いたいことを言う」というコミュニケーションだけではダメだと思うんです。Webになると文字数制限も尺の制限もないから、企業などはとにかく言いたいことを全部言いたくなるというケースが多いのですが、でも言いたいことを全部言っても、Webの場合はそれを知りたい人がいなければそのページは誰も見ないんです。TVだと視聴率の高いところにCMを入れれば見てくれますが、誰も興味を持ってくれなければどんなことを言っても、どんな表現をしても誰も見てくれないのがWeb広告なんです。もしくは誰も信じてくれないと言ってもいい。

だからユーザーが持っている興味をどのように引き出して、どうメッセージを伝えるのか、どうデザインに落としこんでいくのかが重要になってきますよね。それは多かれ少なかれ仕事で僕が常に考えていることです。そして、そういった要素をどれだけ入れるかということはマーケティングによっても変わってきます。クルマのサイトとかではなおさらそういったことを考えますね。ユーザーはなにを知りたがっているのか? なにを求めているのか? でも往々にして企業側が言いたいこととユーザーが知りたいことがずれているということが多くて、そこを調整するのがクリエイティブ・ディレクターとし一番悩ましいところですね。

あと、最近YouTubeをみんなが見ているじゃないですか。YouTubeでヒットしている映像って、どう? これって面白いでしょう? と作り手側の意志だけが勝っているものってそんなに広がらないですよね。かえって作りは甘くても馬鹿馬鹿しくて、単純にユーザーが面白がる、ユーザーが見たい映像がバズを生んで広がっていますよね。「オレの表現はどうだ!」ではなくて、「これってなんだか面白いよねー」ってのが、どんどん広がっていく。CMとして面白いものとYouTubeでの面白いものってのは違うんですよね。


——YouTubeはどう思われますか?


内山●YouTubeはちょっとショックでしたね。YouTubeが出てくると、とにかく動画はあそこにあげちゃえば全部一緒かなって。ひとつ思ったのは、Webで流す適切な長さの尺ってのは意外と短いなって思いましたね。普段15秒、30秒でやっているCMを作っている人って、Webだと時間制限がないから、10分、15分とか長尺のものを作ってみたくなるじゃないですか、逆にそのくらい尺がないとストーリーが伝えにくいし、2分や3分では表現できることって限られていますよね。でも、自分がユーザーのひとりだとしたら、そんなに長い映像は、まず見ないんじゃないかなと思うんです。ここ数年Webでいろいろなショートムービーが発表されたけど、正直最後まで見たものってほとんどないし。エンターテインメントとしては10分以上だと長過ぎますね。やはり2?3分くらいなのかなって。そうしてみるとYouTubeにあがっているものっていい長さのサイズなんですよね。Webだから時間に制限がないというのは作り手側である僕らの傲慢で、ユーザーとして見たいもの、ユーザー側にしてみたら、意外と短いほうがいいのかなって思いますね。


——動画そのものも増えていますし、いろいろなところで見ることができるようになってきていますが、動画の今後はどうなっていくと思いますか?

内山●面白いものだけが残るんじゃないですかね。やはりTVには面白いものが多いですよね。携帯やWebで映像を見ることができると騒がれてはいるけど、正直いってまだあまり面白いものはない。動画を見るシチュエーションが違うと思うんですよ。YouTubeもどちらかといったら暇つぶしですよね。

そもそも動画とひとくくりにするのが間違いで、たとえば、活字を扱うクリエイティブをやるときに、ショートエッセイなのか、大河小説なのかによってスキルも違えば労力も違ってくるわけだし。同じように動画も映画、TVドラマ、TVCM、Webムービーなどはたまたま動画を扱っているというだけで、作り方も、見るシチュエーションも違うんです。見る人も馬鹿じゃなくて、その動画が対価に見合うかどうかをしっかりと選択して見ていると思うし。動画だからといって一緒くたにするのがナンセンスなんですよ。映画とTVだって全然違う。映画ってお金払うじゃないですか。お金を払って2時間近くの映画を見ることって相当カロリーも使いますよね。おしゃれして、渋谷とかの映画館まで出かけていって、それだけ時間とお金を使っても良かったと思わせるものを提供しないといけないわけだし。でも、TVやWebムービーとかは、どちらかというともっと気軽なわけですよ。

でも逆に、お金を払っていないということはすぐにスキップされてしまう可能性がありますよね。映画館を面白くないからすぐに出てしまうことは少ないでしょうが、TVやWebはただであるからこそ、お客さんはすぐにスキップして他に行くことがよくありますよね。チャンネル変えたり、他のリンクを辿ってみたり。そうすると当然、YouTubeやWebにおける動画ってのは作り方も表現手法も違ってきますよね。CMはもちろんそうですが、Webムービーには掴みが必要ですね。ユーザーをしっかりと掴んでいないとすぐに他に行ってしまうから。Webでは一回掴んで最後まで引きずりまわすくらいじゃないと。

——YouTubeは今後どうなっていくと思いますか?

内山●YouTubeは今後google次第ですよね。僕は面白いと思っています。いまYouTubeベースでのバイラルムービーを作る仕事を何本かやっていますし、提案中の物もあります。YouTubeはバイラルを広めるメディアとして可能性があるメディアだと思っているんです。結局映像コンテンツのYahoo!みたいなものじゃないですか、そこに行けばなにか面白い暇つぶし的なものがある。それは決して生活には必要じゃないかもしれないけれど、暇つぶしにはちょうどいい。しかも僕らからしてみるとインフラを組む必要がないメディアですよね。アメリカの企業も積極的にYouTubeを使い始めましたね。でも、5年後には変わっているかもしれないですけどね。





(取材/文:蜂賀 亨 写真:谷本 夏)






内山光司
GT.INC
クリエイティブディレクター


1984年電通入社。2001年(株)ワンスカイ設立5年間活動後、2006年GT INC.設立。主に広告キャンペーンの分野でウェブサイトのディレクションを行う。受賞歴として、東京インタラクティブ・アド・アワード グランプリ、文化庁メディア芸術祭優秀賞、One show Interactive Gold Pencil、New York ADC、D&ADAwards、グッドデザイン賞他、多数。

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