第4話 今後のWebについて | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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SUBARUやコカ・コーラのキャンペーンサイトなど、インタラクティブなWebサイトを数多く手掛けているGT INC.のクリエイティブ・ディレクター、内山光司氏。今回はプロデューサーではなく、Webにおけるクリエイティブについて、クリエイティブ・ディレクターである内山氏に、クリエイティブ・ディレクターの仕事について、Webにおける映像やYouTubeなどの話を聞かせていただいた。


第4話 今後のWebについて



——Webにおけるビジネスは今後どうなっていくと思いますか?

内山●難しい質問ですね。基本的には僕は広告屋だと思っていて、コミュニケーションビジネスとしてWebをどう使うかということには興味があるけど、Webでビジネスをやろうということには興味がないから。僕らは「広告」というジャンルのスキルがある。電通で十何年働いてきたという経験と実績もありますし。広告屋としての仕事はこれからも増えていくに違いないと思っています。広告という分野においては、広告メディアとしてのWebの役割が増えることはあれ、減ることは絶対にありえない。Webが出てきた以上、ユーザー側からはもはやWebは必要かつ欠かせないものになっているんです。いままではTVや雑誌や新聞しか見なかった人も、Webを見る時間が一日15分から30分、そして1時間になり、2時間と増えてきているということで、あまり逆戻りする予感はしない。

ということはWebというメディアに接触する時間が増えるわけで、それを広告的に使う、そこでクリエイティブを提供することがビジネスになる、ということについては確信がある。しかし昔よく語られていたみたいに、WebがTVに変わってしまうということは極論で、ありえないでしょう。新しいものが出てくると、それを容認しながらそれをまた飲み込んでいくような、そういう融通性がメディアにはあるんです。TVがWebの面白いところを取り込んでさらに面白くなっていくこともあるだろうし、新しいマーケティングコミュニケーションも今後出てくるでしょうし。


——Webにおける技術的な問題はどうでしょうか?

内山●Flashとかの技術の問題は別の議論だと思うんですよね。コンテンツのコアに力があればいいわけで。動画にしてもいろいろなところで見られるようになってきたということが、なにかを変えるということではいだろうし。要は面白いかどうかということが重要なわけであって、面白ければTVでもWebでも見るでしょうし、メディアがどうとかではなく、誰が面白いものを作ってくれるかということですよね。仮に携帯上でものすごく面白いものを誰かが作ったとしたら、そこで動画が広がるかもしれないし。日本のゲームだって、もし宮本茂さんみたいな人がいなかったら、メディアとしてのゲームは現在のようになっていなかったかもしれないですよね。

——いま気になるサイトや人はいますか?

内山●動画においていま可能性を感じるのは人じゃないですね。可能性を感じるのはYouTubeのようなシステムです。かつては人だったのかもしれないけど、いま、この瞬間になにがすごいかと思うとやはりYouTubeですね。誰がつくるかじゃなくて、素人があげてくるものであってもこんなに面白いのかと。いま注目すべきは「キラーコンテンツ」ではなくて、「キラーシステム」ですね。mixiにしてもそうだし、YouTubeもキラーコンテンツではなくて、キラーシステムですよね、システム自体がいいから、ああやって広がっているんでしょうね。

マーケティングについては、「2ちゃんねる」に書かれている「本音」を僕たち広告屋がどのように解釈していくかということに興味があります。mixiは本音と建て前だと建て前が勝っていますよね。2ちゃんには本音しかないから。ブログに関しては増え過ぎてしまって、なにが面白いかよくわからないですね。でもYouTubeと一緒ですが、素人の書くものでこんなに面白いものがあるのかという発見もあります。やはり文章力が大切だなって思いますよね。文章力があるかどうかでブログから小説を出版したりすることが実現する時代になったわけですから。毎日お弁当を作っている人で僕の好きなブロガーの主婦の方がいて、僕はナンシー関のお弁当版だと思っているんですが、あんまり面白いので、一度仕事をお願いしたこともあります。


——内山さんのようなクリエイティブ・ディレクターになるにはどうしたらいいでしょうか?

内山●答えはひとつではないと思うけど、いろいろなタイプの人がいますし。Webのことを知って、詳しくなるってのも大切だと思うけど、僕の場合はWebだけではなくて、すべてのメディアをまたいでディレクションができるようになりたい。もし、そういうポジションを目指すのであれば、Web馬鹿にはならないほうがいいと思いますね。いろいろな分野に自分の肥やしになるものがありますから。

すごく抜本的な話をすると、吸収力なんですよね。僕が思うに若い人で伸びる人はどれだけ吸収できるかどうかですよね。たとえば、ひとつの映画をみても、どれだけ盗めたっかっていう。極端な例をいえば、会社から駅まで歩く間にだって、なにかを吸収できる人と漠然と歩く人がいると思うんです。常になにかを吸収する、肥やしにするという心構えがWebディレクターには大切じゃないかなと思います。Webディレクターは、テキストも扱わないといけないし、レイアウトデザインもわからないといけない、もちろん映像もあるし、Webをやるということはこれからはあらゆるメディアに精通しなければいけないということになってくるんだと思うんです。

インタラクティブということについて先ほども話しましたが、インタラクティブとはどういうことかというと、仕組み的に難しいことではなくて、人の心のやりとりをどうデザインするかみたいなところなんです。だから、学問としては心理学とかの分野になるのかもしれないけど、人の心の機微とか、こうするとこっちを向いてくれるとか、強く声をかけるとそっぽを逆にむくとか、そういうことがわかったほうがいいですよね。うまくいえないですけど。

そういうことを指して、本当はコミュニケーションデザインというのだと思うんです。もうちょっと具体的にいうと、舞台とか映画とか、伝統的に才能ある人が集まっている分野はすごく勉強になりますね。もしかしたら、女性を口説くのにも似ているかもしれないですけど。女性と別れるときに、「もう一度やりなおさないか?」って、さよならを言った後、すぐに声をかけるのか、10秒たってから声をかけるかにによってその後のストーリーが変わってきたりするじゃないですか、そういうことがちゃんとわかる人がWebディレクターには僕は向いていると思うんですよ。そういうことを常に考えない人はだめですよね。常に戦略を考えているかどうかってことですかね。

あとやはり映画はすごくためになりますね。カット割りやストーリーにしても、ものすごくいろいろなテクニックや知恵を使っているからです。ボーッと見ていると気付かないですが、でもある映画がすごく面白かったとしたら、それはそういったテクニックや知恵がうまく使われているはずなんです。自分でそれがなぜ面白かったかと考えながら見ると、きっとよくわかると思います。映画とゲームから学ぶことは多いですね。黒沢明監督の映画や、スーパーマリオからは本当にいろいろと学ぶことが多かったです。






(取材/文:蜂賀 亨 写真:谷本 夏)






内山光司
GT.INC
クリエイティブディレクター


1984年電通入社。2001年(株)ワンスカイ設立5年間活動後、2006年GT INC.設立。主に広告キャンペーンの分野でウェブサイトのディレクションを行う。受賞歴として、東京インタラクティブ・アド・アワード グランプリ、文化庁メディア芸術祭優秀賞、One show Interactive Gold Pencil、New York ADC、D&ADAwards、グッドデザイン賞他、多数。

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