第4話 今後に必要なもの | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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様々なジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ、第6回は「共同経営のデザインオフィス」編。1994年の立ち上げから10年以上、ともに活動を続けている大内顕さんと副島満さんによるサイレントグラフィックスを取材し、出会いから事務所立ち上げの経緯、これまでの業務のあり方について話をうかがいます。

第4話 今後に必要なもの


大内顕さん(左)と副島満さん(右)

大内顕さん(左)と副島満さん(右)

ひとつずつ山を越える


――デザイン作業はケース・バイ・ケースのようですが、事務関係はやはり大内さんが?

大内●そうですね。僕はもともと、そういうのが苦にならないからいいのですが……まったく嫌いなんですよ、副島が。

副島●僕は、電車の切符も買えないのでは……と心配されるほど(笑)。

――銀行マンから転身して、大内さんがデザイナーとして自信を持ったのは?

大内●いまだにないと言えばないですが……副島に「全部やってみな」と言われて、やってみてメチャクチャになるとしますよね。で、手直ししてもらいながらも、一通りやり遂げるたびに「ひとつ山を越えた」と感じられる。

――独立したときからDTPだったんですよね?

大内●ええ。それは大きいです。まだ版下は作っていましたが、DTPがなかったらスムーズに転身を図ることはできなかった。

副島●写植の指定とか、憶えなくてもよかったからね。

大内●一応、副島に教わってやってましたけど。

――副島さんは、スントー事務所時代にアナログも全部経験してますよね?

副島●そうそう。だから逆にDTPに変わったときが辛かった。「いままでの経験、全部ムダ?」と感じたぐらい(笑)。

――CDジャケットなど音楽プロダクツを中心に、様々な分野のデザインを手がけていますが、これまでの代表作と言えるものは?

大内●僕は……SUPER TRAPPのCDだな。

副島●あ、俺もそう。

大内●我々のこと信用してくれて、好き勝手にやらせてくれて。

副島●レコード会社もメンバーも、みんな「アイデアありません」と。だから、突飛なアイデアを出せば出すほど喜んでくれたんです。


SUPER TRAPP ポスター

お互いが「代表的な仕事」というバンド・SUPER TRAPPのポスター

――最近、全体的に音楽業界の仕事が下降気味ですが……

大内●それは確かにあります。

副島●でも、ほんと運がいいのは、仕事が途切れずに入ってくるってこと。CDジャケットは減ったかもしれないけど、替わりにツアーパンフや装幀などのエディトリアルが増えたり。

大内●たまたまですが、なぜ長くやっていられるかというと、それが大きい。

副島●だから、予算がないという仕事でも、面白ければ全然OKっていう態勢で。

お互いの差異を楽しむ


――今後のこと、どのように考えていますか?

副島●僕は最初に言ったような、新聞のカットをいまからやろうというわけではないですが……誰の目にも触れてなくとも、あのいなたい感じを大切にしていきたいとは思っています。たとえば、百科事典の校正みたいに世に名前は出ないんだけど、絶対なくてはならない仕事ってあるじゃないですか。そういうふうに、自分が信じるものをチマチマやり続けていきたいなって。

大内●僕は……あまり考えていない(笑)。でも初志貫徹で、やっぱり音楽関係の仕事を続けていければいいですね。とはいえ、最近手がけている装幀などエディトリアルの仕事も面白くて。

副島●うん。本でもなんでも、いかに面白くできるかが勝負。「普通はこうだけど、すごいものにして差し上げましょう」と。

――立ち上げから10年を経て、これからも継続するのに大事なものは?

副島●仕事の内容はもちろん大切ですが、普段の雑談が大事だったりする。だから、仕事が動いてないときでも、お互い「こういうことがあった」という情報交換が必要。適度な距離感を保ちつつ、お互いを思いやる気持ちが大事なのかもしれない(笑)。

大内●デザインがどうのこうのって、実はあまり関係ないんですね。ニュースでもなんでも「これについてどう思う?」というディスカッションが、結果として仕事に反映されるものだと思う。

副島●うん。事務所内ブームってあるんですよ。それがうまく回ってる間は、いい関係ができているのではないかと思います。それがないときはお互い迷ったりしてるときで……一方が「これ面白い!」と興味がはっきりしているときはいい。

――最後に、これまで「もう続けてられない!」というとき、ありました?

大内●売り言葉に買い言葉で言ったときはありましたが……そんなに深刻なことにはならなかったよね?

副島●殺人事件の犯人の気持ちがわかるかわからないかって、くだらない喧嘩のときには「もういいよ!」って(笑)。

――ほんと、くだらないですね(苦笑)。

副島●そういうもんなんですよ。仕事の面で「こうしたらいい」「いや、違う」というときも、お互い言いたいことはわかるんです。でも「こうしたほうがもっと効果的じゃない?」ということを伝えたいだけであって。

大内●逆に、作品面で袂を分かつ決定的なことって、なんであるんだろう……と疑問に思うこともあります。女と金みたいなことだったら、あるかもしれないけど(笑)。

副島●かわいい女の子のアシスタントが入って取り合う図式とか(笑)。

大内●それ以外では考えられない。お互いの差異を楽しむこと、いくらでもできるのにと思います。だからこそ、一緒に仕事を続けていられるのでしょう。


TOKIOコンサート・ツアーパンフレット

最近手がけたばかりのTOKIOコンサート・ツアーパンフレット
「これがデザイナーへの道」第6回・サイレントグラフィックスのインタビューは今回で終了です。次回からは、3MIN. GRAPHIC ASSOCIATESの高橋伸幸さんのお話を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)


サイレントグラフィックス

[プロフィール]

さいれんと・ぐらふぃっくす●大内顕(1963年生まれ。早稲田大学法学部卒)と副島満(1965年生まれ。東京デザイナー学院卒)の二人により、1994年結成。以降、CDジャケットやコンサートパンフレットなどの音楽プロダクツ、フリーペーパー、服飾ブランドのキャンペーン、書籍装幀などを手がけている。

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