第1話 タグボートとcamomeとの関係性 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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2006年、タグボートと電通が組んでスタートした雑誌総合情報サイト「magabon(マガボン)」は、さまざまな雑誌の一部を「立ち読み」ではなく 「ちょい読み」できるいま話題のサイトである。そのmagabonの編集長でもあり、タグボートのアートディレクターである川口清勝氏に話をうかがった。

第1話 タグボートとcamomeとの関係性





??アートディレクターである川口さんがWebを意識するようになったのはなぜですか?

川口●アートディレクターとしていろいろなキャンペーンを手掛けてきたのですが、一番の理由はキャンペーンそのものが大きく変化してきたということです。これまではTVCMにあわせて新聞や雑誌といったメディアを使えばそれでよかったし、ノベルティキャンペーンだったらコンビニエンスストアを中心に展開すれば、ある程度キャンペーンとしては成功することができた。でも、ある時まったく別の作法を持った人たちが生まれてきて、インターネットの中で増殖しはじめたんです。人々の生活や環境がシフトしてきたので、僕らクリエイティブ側も環境に合わせてシフトしないといけなくなってきたし、クラインアントもそういった状況を無視できなくなってきたということですよね。


??それはいつ頃ですか?

川口●僕らが電通を辞める少し前くらいですね。当時は電通をはじめ広告代理店でインタラクティブな部署がいくつかつくられてるようになってきていましたけど、インターネットというメディアを積極的にキャンペーンに取り込んでいたブランドはほとんどなかったんです。でも、当時おつきあいさせていただいたクライアントの中には、インターネットと他のメディアを敵対関係にするということではなくて、「インターネットをいいツールとして使ったほうがいいんじゃないの」と言っている人たちもいて、それでインターネットを既存のメディアとうまく組み合わせて展開するということを始めたんです。たとえば、新聞広告をWebサイトの入り口として使って、その他のすべてのことはネットで展開するとか、そういったことをやったりしていました。



??その後、camomeというWebクリエイティブに特化した会社を設立されたのですか?

川口●そうです。たとえば、Webをあるクリエイティブチームがディレクションして、他のポスターやTVなどのキャンペーンを別のクリエイティブチームがディレクションをするとなると、同じクライアントでも統一感がとれないじゃないじゃないですか。Webにおけるランディングページ、もしくは企業のオフィシャルキャンペーンサイトが他のメディアのトーンと違っていると、当然そのサイトを見る人は「おかしい?」と思うだろうし、当初はそういったことも許されていたのですが、それはクライアントのためにもよくないし、ユーザーにとってもけっしていいとは思わない。

それでいくつかのキャンペーンでそのトーンを揃えるために、タグボート内でWeb制作をさせてもらうようになったのです。とはいってもたった4人の会社で、すべてをやるわけにもいかなくて、だからといってディレクションだけをして、あとは外部でやるとなると、やはり同じ血が通ってないとすべてのメディアが繋がってる、統一感あるものにはなかなかならない。ということで自分たちの考えに非常に近い人たちに来てもらってタグボートを中心とするcamomeというWebに特化したクリエイティブ組織をつくったのです。

内部にcamomeという組織があることによって、予算や時間も効率的に使うことができるし、それはなによりクライアントに負担がかからないシステムなんです。ひとつのプロジェクトにふたつのチームのディレクターが関わると、結局クライアントには2回オリエンテーションしなければいけなくなってしまうんです。本キャンペーンはタグボートがやってるけどWebは○○ということになってしまうと統一感がとりづらいし、そこで無駄な時間やコストを省くことができる。それがcamomeという組織をつくりましょうという発端です。

??TUGBOATとcamomeとの関係性は?

川口●一緒にキャンペーンをやる時にはとてもうまく機能しています。たとえば「こういう検索ができるからこういう風に繋げるともっといいですね」とか、インターネットからRSSで飛ばすとか、そういったwebサイドからのフィードバックがあったりして、camomeのスタッフと一緒に動くと、とてもいいキャンペーンやディレクションをすることができます。


キャンペーン全体をディレクションすることは、特殊なデジタルシステムのことだけをわかってる人たちにはできない時代になってきているんです。僕はクリエイティブの人たちはもっとインターネットに触れるべきだとずっと言っているんです。デジタルシステム側から来る人たちではマスにはなかなか触れることができないんです。彼らは専門的すぎて俯瞰からものごとを見ることができない。でも、俯瞰からものを見ることができる人、マスなコミュニケーションが理解できる人はインターネットメディアのことを理解するのがとても速いんです。

その一方で、現在マスメディアをやっている人たちは、インターネットメディアにいまだに距離を持っている人たちが多いようで、自分たちがまだ参入するべき分野ではないと思っているんですね。でもそれがいつかはひっくり変える時がやってくると思うんです。その融合がうまくできた時、どちらが強いかというと、きっとマスの人のほうが弱くなってしまうと思うんですよね。そういったことに対する備えとしてcamomeのような組織が必要だと思っています。







(取材/文:服部全宏(GO PUBLIC) 写真:谷本 夏  編集:蜂賀 亨)






川口 清勝(かわぐち・せいじょ)

1962年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。電通クリエーティブ局アートディレクターを経て、1999年クリエイティブ・エージェンシー「TUGBOAT」を設立。
主な仕事に、富士ゼロックス、マグライト、英会話のGABA、サントリーDAKARAなど。
東京ADCグランプリ、The One Show Design金賞、New York ADC他受賞多数。

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