第2話 magabonをはじめたきっかけ | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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2006年、タグボートと電通が組んでスタートした雑誌総合情報サイト「magabon(マガボン)」は、さまざまな雑誌の一部を「立ち読み」ではなく 「ちょい読み」できるいま話題のサイトである。そのmagabonの編集長でもあり、タグボートのアート・ディレクターである川口清勝氏に話をうかがった。

第2話 magabonをはじめたきっかけ





??magabonをはじめたきっかけを教えてください?

川口●それには大きくふたつの理由があって、ひとつは僕が単純に雑誌が好きだからということ、もうひとつは雑誌広告を少しシフトしたいなという考えがあったからです。

magabonずらりと並んだ雑誌の中身が「ちょい読み」できるようになっている







雑誌の編集って、とてもパワーがいりますよね。毎回かなりの情熱と能力と時間をかけて、もの凄いエネルギーを使いながら一冊を作るわけじゃないですか。しかも雑誌のように継続的にやり続けているコンテンツメディアが他にあるかというと、なかなかない。ある程度セグメントされているお客さんに対してピンポイントで訴求できる有効なメディアは雑誌しかないと思うんですよね。

もともと僕は雑誌が大好きで、いまでも年間相当な数の雑誌を読んでいます。雑誌って世の中の映し鏡だし、ほんの少し先の情報メディアだからとても面白いですよね。学生時代もたくさんの雑誌を読んでいたんですけど、これまで読んできたたくさんの雑誌が自分にとってのアイデアのソースになっていたりもするし。やっぱり学生の時に雑誌をたくさん見てる人はアイデアの幅が広いですよね。ひと月に1冊しか見てない人と20冊見てる人というのは全然違うわけですよ。その知識をすばらしいアイデアに転換できるのかどうかというのはその人の能力によるでしょうけど、でも1冊しか見てない人と20冊見てる人とでは明らかに違う。


僕は雑誌を通してこれまでいろいろなことを知ってきたし、見てきたわけで。最近ふと気づくと、小さな本屋さんがパタパタとなくなっているんですよ。それは雑誌のせいではないけど、本屋さんが潰れるということは雑誌にとって大きな痛手だと思うんですよね、つい最近まで2万件あった本屋さんが、いまは日本全国に1万件しかない。雑誌や本と読者が接触する場所が日本では半分になってきているんです。コンビニエンスストアで雑誌や本が売られるようにはなってきているとはいえ、コンビニエンスストアと書店ではやはり違うんです。

僕は本屋という空間が大切だと思っているんです。本屋だと月刊誌は次号が出るまでの1カ月間は置いてくれるけど、コンビニエンスストアだと5日~1週間くらいで売れなかったらそのまま返本されてしまう。その5日間にコンビニエンスストアに行かなかった人たちは、その雑誌を見る機会がないということになってしまう。それは知らないということと同じなわけで。基本的にほとんどの人は本屋さんに行っていろんな雑誌や本と出会うわけです。

本屋が雑誌にとって一番のプロモーションの場所のはずなんです。雑誌がパラパラと読めて「これいいね。買おう買おう。」という場所が必要なんじゃないかなと思ったんです。雑誌を買っているお客さんの8割以上が「中身を知ってから買う」って言ってるんですね。なかには毎号かかさず買っている人たち、定期購読者もいるでしょうが、ほとんどの人は中身を少し見て、それから雑誌を買うんです。でも、現実的に雑誌を見ることができる本屋が少なくなってきている。そういった状況において、なにか解決できる方法ってないかなと思ったら、ネット上で雑誌が立ち読みできれば、それは読者のためにもなるし、雑誌にとってはプロモーションにもなるはずだと思ったんです。そして、最終的にはそれが本屋さんのバックアップになって、雑誌自身の可能性を広げることになればいいなと思ったのがきっかけですね。

??雑誌広告をシフトしたいということについては?

川口●雑誌広告については、クライアントのところに雑誌広告の話をしにいくと「雑誌広告って本当に読まれているの?」って言われたりすることがよくあるんですね。それは業種に限らずどのクライアントも同じことを言うのですが。雑誌広告は飽きられやすくて、常に何か新しいことをやって読者を刺激していかないと、広告自体の面白さがどんどんなくなってしまうんじゃないかなと思うんです。それがいいとか悪いではなく、止まっているものって、なんだかとても古くさく見えてしまう。飽きられてしまう。雑誌広告にはそんな特性もあるわけで、そこをなんとか変えたいなと思っていて。


??それは具体的にどのようにして?

川口●たとえば、クルマの広告だとしたら、雑誌上ではもちろん動かないけど、magabonのちょい読みに入ると、クルマ広告が動画で見れますよとか。雑誌そのものをクライアントのオフィシャルサイト入れておいて、その雑誌コンテンツからリンクで動画の広告に飛べるとか。逆もあるかもしれないですね。動画のコンテンツがあって、そこから雑誌に飛ばすというのもあるかもしれないし。そういうことができるようになると雑誌そのものも、TV局とまではいかないけれど、動画コンテンツを格納できる可能性を持ったメディアになったりすると思うんです。

雑誌それぞれがクライアントのニーズによって変わってくるでしょうが、「きれいな写真載せて今までどおりアナログでいきたいんですよ」というクライアントには、今まで通りの美しいものを見せればいいでしょうし、なかには動いたりとか、もしくはプレゼントキャンペーンだから直リンクで飛ばしたいといった場合には、デジタルのいいところを利用して、アナログの雑誌をデジタルに変換したりするといったことが広告として可能になってくると思うんです。そういったことが、magabonを通して可能になってくると考えたのです。





(取材/文:服部全宏(GO PUBLIC) 写真:谷本 夏  編集:蜂賀 亨)






川口 清勝(かわぐち・せいじょ)

1962年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。電通クリエーティブ局アートディレクターを経て、1999年クリエイティブ・エージェンシー「TUGBOAT」を設立。
主な仕事に、富士ゼロックス、マグライト、英会話のGABA、サントリーDAKARAなど。
東京ADCグランプリ、The One Show Design金賞、New York ADC他受賞多数。

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