第4話 magabonの未来 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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2006年、タグボートと電通が組んでスタートした雑誌総合情報サイト「magabon(マガボン)」は、さまざまな雑誌の一部を「立ち読み」ではなく 「ちょい読み」できるいま話題のサイトである。そのmagabonの編集長でもあり、タグボートのアート・ディレクターである川口清勝氏に話をうかがった。

第4話 magabonの未来





??現在magabonを見ている人はどんな方が多いんですか?

川口●インターネットの特性上、週末はページビューが落ちたりするので、やはりオフィスで見てる人が多いようですね。会社員、OLの人っていうのが多いんじゃないかと思いますけど。スタート時に新聞広告、中吊り広告を出したことがやはり効いてるみたいですね。あとは、雑誌というメディアのよさや面白さを、雑誌を通して発信できるといいかなと思うんですけど。

??ビジュアル的な部分でmagabonならではのこだわりはありますか?

川口●他のいろいろなwebサイトをみていると、テキストデザインがアナログの美しい文字とは対極になっているものが多いようで、それには少し嫌悪感を感じたりもするのでmagabonはその中庸ぐらいにしようかなと思っています。半分はビジュアル性を持たせつつも、半分は機能性を持たせるつもりなんですけど、実際には少し中途半端な感じになってしまっているかもしれないですね。インターネットという場所にあるのだから、もう少しWebらしさを意識したほうがいいなとは思っています。実際にスタートしてみたら、どちらかというと美しさやデザインよりは機能優先のほうがいいということはわかりましたね。

??magabonとしてはページビューが増えるのがビジネスとしてはゴールなのでしょうか?

川口●ページビューが増えることはもちろんうれしいことですが、最終的にページビューが増えなくても雑誌に向かう人々の気持ちが上がって、雑誌の売上に繋がることが一番いいことだと思っています。ページビューが増えて、それがバナーを売るビジネスに結びつくというのはmagabonでは二番目の目的だと考えていて。バナーがどんなに高い金額で売れたとしても、それがそのまま雑誌とは直結しないのであればmagabonとしてはあまり意味がないことだと思っています。

一番いいのはリアル店舗でも、Eコマースでもいいのですが、雑誌の売り上げが上がること、願わくば、街の書店さんがこれ以上店をたたまなくていいという構造なんです。そういうことができたりすると、なおさらいいかなと思うんです。そして、雑誌社の編集者の人たちと新しいコンテンツ制作を一緒につくったりするといいですね。さらにはそれが新しいTVCMと直結するようなこともできたらなおさらいいですし。もしかしたら将来TVCMってなくなるかもしれないじゃないですか。TVCMがサムネール化されて、自分の興味のあるものが出ればそれを叩くと流れるみたいな。今後絶対そうなりますよ。そうなった時には、もしかするとネットのコンテンツとTVのコンテンツをうまく結びつけられるかもしれない。そういうようなことも将来的にはあり得ると思います。雑誌が雑誌らしく雑誌のいいところを持ち続けているために、magabonをどんどん利用していただきたいですね。


??今後のmagabonの予定は?

川口●雑誌に広告を入れながら、そこに違う機能をつけてオフィシャルサイトに飛ばすということをいくつかのクライアントがやりはじめているのですが、雑誌社の人たちにはmagabonを雑誌のために利用してもらえるということを理解していただけるといいなと思っています。

あと、クライアントからのニーズも従来のアナログだけやっていればいいということではなくなってきているので、それがmagabonでもできるといいなと思います。たとえば、これからはTV番組のなかでインターネットにアクセスする場所ができたりするわけじゃないですか。人気TVドラマの中でリンクを叩けば、主人公が着ている洋服をそのまま直で買えますよということになったりもすると思うんです。だったら、アナログのよさを今のうち整理しておくべきだし、アナログ+デジタルな刺激を察することができて、そのコンテンツ周辺をコントロールできるのは、雑誌メディアでしょうし、それは雑誌社、編集者の人たちだと思うんですよね。

だから、そういった人たちにmagabonをうまく利用していただいて、使えるものは使う、いらないものはいらないという場所になってもいいんじゃないかと思うんです。そのわりには大変なんだけどね(笑)。


??アートディレクターとしてはどのような活動を考えていますか?

川口●アートディレクターというのは、フィロソフィーを具現化して、それをビジュアルコミュニケーションとして、リアリティを持って人に見せることができる人。それはもしかしたら、人事的なこともできないといけない。ある人とある人がコミュニケーションがうまくとれなくて、機能していないという場合には、人の再配置をデザインをすることもアートディレクターの仕事になるのかもしれないし。だから、ブランドのこと、商品のこと、人のことなど、すべてをディレクションすることがアートディレクターには必要で。どんなメディアを取り扱うにしてもアートディレクターとしての役割は変わらないと思っています。だから、TVCMを作ったり、ポスターを作ったり、洋服を作ったり、magabonっていうポータルサイトを作ったりなど、全部がアート・ディレクターとして自分の守備範囲だと思ってます。





(取材/文:服部全宏(GO PUBLIC) 写真:谷本 夏  編集:蜂賀 亨)







川口 清勝(かわぐち・せいじょ)

1962年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン科卒。電通クリエーティブ局アートディレクターを経て、1999年クリエイティブ・エージェンシー「TUGBOAT」を設立。
主な仕事に、富士ゼロックス、マグライト、英会話のGABA、サントリーDAKARAなど。
東京ADCグランプリ、The One Show Design金賞、New York ADC他受賞多数。

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