第4話 イラストレーターの一分 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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今回の「ザ・対談」は、年末年始を股にかけて掲載のスペシャル版。当サイトで連載中の白根ゆたんぽさん、同氏とユニット「YUTOONZ」を組む今井トゥーンズさん、二人の気鋭イラストレーターを迎えてお送りします。かつて、某誌の恒例企画となっていながらオトナの事情で中断していた歳末放談が奇跡の復活! 従来の「ザ・対談」と比べるとユルユルですが……年末進行も終わって忘年会モード→新しい年を迎えておとそ気分のみなさま、イラストレーション業界における「2.0」問題をツマミにお楽しみください。


第4話 イラストレーターの一分


どじょう鍋店での真っ昼間からの酒席を一旦切り上げ、次なる河岸へと移動の二人。夕闇せまる浅草の裏道、千鳥足で歩く後ろ姿に男の悲哀を漂わせながら、話題はイラストレーターとしての来し方、そして今後のあり方について突入です。

今井トゥーンズ(左)と白根ゆたんぽ(右)

白根ゆたんぽ(右)と今井トゥーンズ(左)

怪奇! オカリナにテディベア?


──イラストレーターという職業は、基本的に受注仕事ですよね。もちろん、どんな職業も一緒ですが、そうした態勢の中で自分から働きかけることの難しさは?

白根●マジメな話をしちゃうと、受注仕事で相手の希望を聞きながらも自分のやりたいことを挿入していくようなところがあります。デビュー当時、僕は絵の具を塗りこむタイプの仕事ばかりだったのですが、線画も増やしたいと思って、チャンスがあればそれをやっていたのね。

今井●時間をかけてジワジワと。

白根●うん。で、去年の年末は塗りの仕事1?2個で、他は全部線画(笑)。時間をかければ自分のやりたい方向に持っていけるようなところの楽しさはありますね。だから「好きなことができない」っていうのは嘘だと思って、いろいろ画風を変えたり、やりたいことやって、それが実ったときの充実感が収穫なんです。

今井●僕も変えてるけど……いまだに「CCレモンのCMのように描いてください」という発注がある(苦笑)。あの絵がスタンダードになったというのは、ありがたいことだし、発注されれば一生懸命がんばらせていただきますけど。

白根●発注元は、作風が変わってることに気がつかないときがあるからね。でも、そういうイメージって強力なんだよ。僕もよく『アホでマヌケなアメリカ白人』の人って言われるんだけど、略されて「アホマヌケなゆたんぽさんです」って(笑)。

──しかし、今井さんがキャラクターを手がけたCCレモンのCMって10年前ですよね?

今井●そう。しかも「あ! あの黄色い家族?」って(笑)。

白根●それ、シンプソンズだって(笑)。

今井●ちょっと前に会った若いイラストレーターさんに「小学生のとき、あのCM好きでした」とか言われて……俺もそういう年齢だよなって実感するんだけど。

白根●今井くん、デビューが早かったからね。僕のほうが年上だけど、駆け出しの頃はよく一緒に『Macが一番』(宝島社)でイラスト描いていたじゃん。……そんな誌名、いま口に出すと「だからお前の圧縮ファイルは開かないんだよ!」って言われそうだけど(笑)。

今井●でも、あの雑誌のおかげで、どんなに生計が助かったことか。

白根●いやぁ、助けてもらいましたねぇ。

今井●あれ以外の仕事がなかったから、オカリナに絵を描くバイトやってたんですよ。一個につき500円(笑)。

白根●立体物だから、手間かかりそうだなぁ。

今井●うん。あと、ダークな絵を描くから、いつも注意されて。

白根●オカリナはダークでいいんじゃないの?

今井●僕もそう勝手に解釈していたら、発注元の社長が「いまオカリナはOLさんが買う人気の楽器なんです」って(笑)。

白根●ハハハ。

今井●でも、OLさんが買うイメージがどうにも思い浮かばなくて、見本を見せてもらったんだけど。それがなんと、二階建てバスに乗ったかわいい熊が風船をいっぱい持ってる絵とかで(笑)。

白根●オカリナにテディベア! 何の曲を吹くんだろうねぇ。

今井●うん。でも描いてたよ、自分の色を出しつつ(笑)。振り返れば、そんな下積み時代に始まって、真っ昼間からこうやって酒飲みながらどじょう鍋を食べられるまでに成長したな、と。ホント皆さんに感謝です。


せんべい屋前にて

焼きたてアツアツのせんべいをボリボリ食らうYUTOONZ

お手本はダチョウ倶楽部?


白根●さっきの話に戻るけど、まったく受注だけだと仕事が来なくなっちゃいそうだよねぇ。

今井●消費されるだけだもの。

白根●だから、ダチョウ倶楽部がいいんですよ(笑)。僕のお手本、ダチョウ倶楽部かもしれないと思うときがよくあるんだけど、彼らが偉い人と若手に挟まれても消えずに出続けているのは、いまのバラエティ番組のニーズに合わせて内容を更新しているからじゃないですか。

今井●リアクションもいろんなバリエーションが増えてね(笑)。

白根●そう。初期の「聞いてないよ?」「訴えてやる!」のイメージが強いけど、いまやネイチャー寺門とか「どうぞどうぞどうぞ」まであるでしょ。バラエティ番組の枠の中でジワジワ芸風をアップデートしていく姿勢がすごいなぁと。

今井●イラストも見てる側と一緒の時代を生きてるんだから、変わっていかないと少なからず嘘になるよ。世間も飽きるし、他から影響受けるし、自分も成長するし。世間も自分も知らないうちに自然とマイナーチェンジしてた……というのは少なからずあると思う。

──あとは、アーティスティックに突き進むしかないですよね。

白根●コマーシャルアートをやると現代美術ができなくなるという話を、ギャラリー側から聞いたことがあって。そのへん、ヒロ杉山さんのエンライトメントは逆転現象を起こした初めてのパターンかも。VOWでアフロ黒人の面白イラストを描いてた人が、いま現代美術で評価されたり。

──で、コマーシャルでも成功して。

白根●ああいう感じの逆転現象は、今後どんどん起きるかもしれないですね。コマーシャルアートには制約があって、自分の好きなことができないから現代美術に行くっていう理由は弱いんじゃないかと。

今井●アートも、細かいことをいえば自分の好きなことしかできない場合もある。

白根●そうだね。現代美術のほうが自由かというと、そうとも見えない部分もあるわけで。でもどっちの世界でも個人の気持ちとしたら嫌いな絵は書けないでしょ?

今井●描けない。もし「嫌い」というコンセプトを立てて絵として成立したとしても、嫌々描いたことには違いない。方法論ではなく、作家がアートを選ぶというより、作品が自然とアートを選んでいくはずですよ。アートだから自分の作品は成立する、という考え方は違うと思う。

──でも、嫌いなこともしないとならないという面は、どんな仕事でもありますね。

白根●もちろんイラストもそうですよ。さっきの話じゃないけど、雑誌のイラストがお笑い芸人みたいだなと思うときがあって……テレビだと作家さんがいて、番組の内容を考えて役割を与えて、芸人さんがテレビで演じるわけですよね。でも「こいつ、つまんねぇ」とか言われたり。イラストも編集者やライターさんが絵の内容を決めてくるときがあって、「え??」ってときでも描くのは僕なので、そこで自分の納得いく形に仕上げなくちゃならない。

今井●最終的に印刷されて自分の名前がクレジットされてからじゃ、言い訳きかないもんね。

白根●つまらないアイデアでも面白い絵にするのが大事なところなんですね。でも、さらにネクストレベルに「言われたまま描いても面白い」ってのもあるなぁって思ったりね。


ライター屋前にて

浅草名物(?)ガジェット・ライターを品定め
次週、第5話は「Web時代の絵心」を掲載します。


(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)



白根ゆたんぽ

[プロフィール]

しらね・ゆたんぽ●1968年埼玉県生まれ。桑沢デザイン研究所グラフィック研究科卒業後、フリーのイラストレーターとなる。現在、当サイトで4コマ漫画「ユタンポ300GT-B」を連載中。他にもいっぱい仕事してますが、以下サイトを参照していただいたほうが楽チンです。

Webサイト□http://yuroom.jp/yuroom/top.html

ブログサイト□http://blog.so-net.ne.jp/YUROOM/



今井トゥーンズ

いまい・とぅーんず●1971年愛知県生まれ。多摩美術大学美術学部卒、同大学院研究科終了。90年代中盤よりイラストレーターとして仕事を始め、CFやアニメ、ゲームのキャラクターデザイン、スニーカー制作などにも携わる。2004年、劇場版アニメ『DEAD LEAVES』を企画・制作。2002年、白根ゆたんぽとユニット「YUTOONZ」を結成。


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