
今回の「ザ・対談」は、年末年始を股にかけて掲載のスペシャル版。当サイトで連載中の白根ゆたんぽさん、同氏とユニット「YUTOONZ」を組む今井トゥーンズさん、二人の気鋭イラストレーターを迎えてお送りします。かつて、某誌の恒例企画となっていながらオトナの事情で中断していた歳末放談が奇跡の復活! 従来の「ザ・対談」と比べるとユルユルですが……年末進行も終わって忘年会モード→新しい年を迎えておとそ気分のみなさま、イラストレーション業界における「2.0」問題をツマミにお楽しみください。
第5話 Web時代の絵心
浅草を訪れたオトコたちが行き着く場所、それは神谷バー。生ビールをチェイサーに電気ブランをあおる、長くディープな夜の始まりです……。
浅草、夜の名所「神谷バー」入口看板。すごい住所!
自分の作品ライブラリを作るのはしんどい
──昨年末から5話に渡ってお送りしてきた対談も今回が最終回です。タイトルが「イラストレーター2.0」なので、Web時代を生きるイラストレーター像について話をしておきたいのですが……今井さん、HP持ってないですよね?
今井●持ってないんです。始めようと思って「imaitoonz.com」と「imaitoonz.biz」は取得してるんですけど、そのまま放置してて……。実は年賀状もデビュー以来作ってなくて、そんなに頑張れないんですよ。いただいた年賀状はなんとか返事を出そうと思っているのですが。
白根●今井くんは“頑張らない派”だよね。今井くんの世代は“頑張る派”が多い気がするんだけど……それはやっぱりデビューが早いから?
今井●うーん……自分のことがいつも後回しになっちゃって。頑張るんだったら、まず目の前にある仕事を頑張ろうという気持ちのほうが大きい。HPにしても、プレゼン用だけのものを作るのは抵抗あって。いろんなことしてきましたけれど、それを改めて自分で出して整理するのも大変だから。
白根●確かに、HPで自分のライブラリを作るのはしんどいね。
今井●いま、通信環境もよくなっていろいろ挑戦できるから、ネット用に映像とかもやろうと思っているんだけど……暫定的に何かをのせるのは面白くないな、と。やるんだったらプレゼン用のものではなく、Webという表現の場としてそれにあった作品を作りたいですね。といって、先延ばしにしているのもいけないのですが。ただ、海外の人たちがいままでの活動や作品を見たいとなると「なんでネットがないんだ?」という話になりますよ。
白根●「そんなに日本はネット後進国なのか?」って(笑)
今井●「imaitoonzでググれば、なんか観れますよ」じゃ、もう失礼ですよね(笑)。だから今年は、HP頑張って作ります。
──YUTOONZもHPないですよね?
白根●ええ。でもYoutubeとかで「YUTOONZTV」のようなことはやりたいね。ライブペイントツアーの映像を詳細に撮りためているので、それを使ってロードムービー的なものを作ってアップさせたいんですよ。
今井●じゃあ、早くアカウントとらないと。
白根●一応、Youtubeで「yuroomtv」ってIDは取得してるんだけど。
今井●すでにとってる人がいたらびっくりするね。
白根●でも「Yutanpo」とかのIDは普通に取られちゃってる。ちょっと前、携帯メールのアドレスで「Yutanpo3000GT」を申請したら、他の人が取得済みだったんですよ。で、ファンとのステキな出会いか?……と思ってメール送ったら、普通にファンでもない広島在住の男性で「語呂がよかったから」って。向こうも何か察したらしく「雑誌でお名前は見たことはありますが、ときめきのない出会いですみません」って(笑)。
今井●あ、でも気のきいた返信(笑)。
白根●何回かやりとりしたけど、盛り上がるわけがないっつーの。
今井●しかしその人、3000GTってよくつけたよね。Yutanpo部分とそこがダブルブッキングなんて……。
白根●うん。だから、僕のアドレスは1800GTに排気量を落としたんだけど(笑)。
消費速度に揺らぐことなく……
──当サイトで連載中の「ゆたんぽ3000GT-B」は、ポテンシャルもアップして好評のようですが。
白根●かつて連載していた雑誌(デザインプレックス)時代は月刊で、それでも時事ネタなど織り込みつつやってたんですけど、最近は時事ネタの鮮度が落ちるのが速いというか、隔週連載のスピードでちょうど良かったかな、と。そのぶん反射神経でアイデア出す感じになるんですけど。
今井●Webに限らず、いまはなんでも早いよね。この情報化社会は。
白根●うん。ナンバーポータビリティなんて、話題にするのも恥ずかしい感じが出てきてるでしょ。
今井●石原真理子も(笑)。復帰した、名前変えた、暴露本出した……と、次から次へと自分のトピック出さないと、情報としての“石原真理子”というものが死語になってしまう。そんなに情報を出さないと“人の存在”って表現できないもんですかね。SNSとかブログとか、たまにそう思うときがある。逆に情報しか見えなくて、その本人のことが見えなくなるっていうか。
白根●ブログとかで、何かひとつの物事が燃え上がっても、消えるのも早いじゃないですか。例えば仲條正義さんの「ちば」ロゴの件でも、みんないろいろ書き込んだりするんだけど、書き込んだあげく、結局「もう寝ます」って一言で(笑)、翌日になるともう別の話題になってて。
今井●そういう時間軸の流れにイラストは弱いね。音楽や映像に比べると、フィードバックの反応も確実に遅いから。だから、いまだに「CCレモンの?」って肩書きがつけられちゃうのかな……(苦笑)。Web上の情報って、新旧取り混ざっちゃって情報が置いてあるから、勘違いも多いですよ。
白根●ヘタしたら、自分のやったことが5年後ぐらいに戻ってくるよね。以前、ある企業のサイト・インタビューに「今年のテーマは働き者と意気込むゆたんぽさん」と書かれたのね。確かに言ったんだけど、他の仕事で担当のライターさんが掲載日も確認しないで、横着してそのプロフィールをコピペして流用しちゃったりすると、見た人に「今年は働き者なんですよね?」って言われちゃったり。
──でも、働き者というイメージの定着は株を上げるのでは?
白根●まぁ、記憶に残るだけありがたい話なんだけど……昔の自分がいまの自分の首をしめに来ているような(笑)。
今井●プロフィール問題は今後の課題だね。Web上の情報に対して意外とみんな信頼しているところもあるし、裏も取らずにコピペして流布される。たくさんヒットした記事からわかりやすいところを抽出して「CCレモンの?」になるわけですよ。で、また「あの黄色い家族の?」って勘違いも起こることになる(笑)。
白根●デザイナーやアートディレクターなら「これを手がけた」と言いやすいんだけど、イラストレーターはパーツ屋だからね。プロフィールに書くまでもないか……と思うことも多い。
──あとは「最近?やりました」とか。
白根●それもアップデートが激しいですからね。月刊誌の表紙を描いても、書店に並んでいる間しか話にできない感じがあるし……。
今井●そういうアップデートが激しい時代に翻弄されない、筋の通った“絵の心”を模索していくことで、逆に表現の幅を広げられたり、新しい挑戦やアイデアができるのだと思うけれど。
──クリエイティブも消費速度が加速する時代における“絵の心”とは?
今井●時代に合わせた柔軟な考えも必要だけど、僕の場合、根底にある部分はデビュー当時からあまり変わってない。消費=加速と感じていないと、ただ流されていつの間にか作品も存在すらも情報になっちゃう。消費社会に合わせるのではなく、どうすれば情報の波にもまれることなく自分の絵を伝えられるか……手段や方法論を変えても揺らぎない“絵の力”が必要だと思うんです。
白根●ここまで苦労っぽく話しちゃったけど、時代の変化とともにいろいろ変えていくのもイラストレーターの仕事のうちだと思ってるので、対応していきますよ。ただ、流行とかに食いつくスピードではなく、そういった世の中の動きとの距離感やスタンスの取り方が大事だと思うので、そのへん崩さずに進化していきたいなぁ、と。
今井●うん。情報化社会のために描いているのではなくて、その加速した流れの向こう岸にいる読者や自分のために描いているのですから。
──波に揺らぐことなく、いかに斬新で色あせないものが作れるか……ですね。
今井●自分の表現に信念を持ち、日々のスキルアップもしつつ、どんな加速的な社会にでも適材適所に的確で、それでいて臨機応変なシフトチェンジとブレーキングができる……いわば一緒に乗っている家族も安心なドライビングテク的絵心という感じでしょうか(笑)。
白根●さすが、結婚した男は言うことがひと味違うね?(笑)。

完全にデキあがってYUTOONZポーズを決める両名……夢心地?
今回で「イラストレーター2.0」は終了です。
次回は、FANWORKSの高山晃さん、クリエイターのみやかけおさんによる対談「ネットアニメの現在と未来」をお送りいたします。どうぞご期待ください。
次回は、FANWORKSの高山晃さん、クリエイターのみやかけおさんによる対談「ネットアニメの現在と未来」をお送りいたします。どうぞご期待ください。
(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏)
![]() |
[プロフィール] しらね・ゆたんぽ●1968年埼玉県生まれ。桑沢デザイン研究所グラフィック研究科卒業後、フリーのイラストレーターとなる。現在、当サイトで4コマ漫画「ユタンポ300GT-B」を連載中。他にもいっぱい仕事してますが、以下サイトを参照していただいたほうが楽チンです。 Webサイト□http://yuroom.jp/yuroom/top.html ブログサイト□http://blog.so-net.ne.jp/YUROOM/ |
![]() |
いまい・とぅーんず●1971年愛知県生まれ。多摩美術大学美術学部卒、同大学院研究科終了。90年代中盤よりイラストレーターとして仕事を始め、CFやアニメ、ゲームのキャラクターデザイン、スニーカー制作などにも携わる。2004年、劇場版アニメ『DEAD LEAVES』を企画・制作。2002年、白根ゆたんぽとユニット「YUTOONZ」を結成。 |





