第4話 デザインというコミュニケーション | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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様々なジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ、第7回は「デザインとメディア供給の融合」編。エディトリアルからWeb、パッケージなど幅広いデザインを手がけながら、自主制作マガジンの発行や海外誌のディストリビューションも兼ねた“アソシエイツ”を主宰する高橋伸幸さんを取材し、その経歴から現在に至るまでの足跡をうかがいます。

第4話 デザインというコミュニケーション


3min.オフィス

高橋伸幸さん

感動しなくなるのが一番良くない


??そろそろ独立して10年ですが、振り返ってみるとどうでしたか?

高橋●あっという間だった……というしかないですね。

――辞めたくなったことは?

高橋●正直あります。でも、いつも続けるほうのモチベーションが強かったから。まだ、やりたいこともたくさんありますし……。

――現在まで仕事を振り返ってみると、エディトリアルに始まり、Web、アパレル系、エキシビション企画など、多岐に渡っていますね。

高橋●興味があったからこそ自然にそうなっていったのでしょうが、基本は人とのつながり。そこから、いろいろな分野に広がっていったのだと思います。

――近年は、洋書のディストリビューション(UOVOなど)も手がけていますが。

高橋●それも知り合いからの紹介でした。すごく硬派で、いい本なんです。出版がイギリスで、作っているのはイタリア。いまはamazonなどで買えるようになりましたが、こういう本はネットで見て、突然買うようなものではない。やっぱり書店で手に取って、内容を見てから買うしかないものだと思うんです。

――今後、心がけていることは?

高橋●これまで通り、自然体でやっていく……です。それから、あまり器用になりすぎずインディーズっぽい感じも残していきたいですね。「つるんとしたものではなく、「ザラザラ」「ごわごわ」した感じというか……。そういったものが「スリーミンらしさ」として感じてもらえればいいかなと思っています。また『3minutes at tokyo』のシリーズも続けて出したいと思っていますが、なかなか現状できていません。

――それは時間的に? それともバジェット的に?

高橋●時間です。どうしても日常的な仕事に時間を取られてしまって、そこまで手が回らない。でも、今年は立ち上げ10年という区切りでもあるし、何かカタチにしたいと思っています。

――その10年間で変わったこと、変わっていないことは?

高橋●基本的なスタンスは何も変わっていないと思います。まったくこの世界のことを知らずに入って、表と裏は一通り見てきたと思います。でも、やっぱり裏のことはあまり知らないほうがいいです(笑)。何をやっても感動しなくなるのが一番良くないことだと感じています。

――デザイン的にも、一本芯を通してこられたというイメージが感じられますが。

高橋●素っ気なさ……ですか?

――いや、クールな感じ。あと、日本語の読ませ方がうまいと思います。

高橋●そう言われたこと、あまりないけれど……基本的に本を読むのが好きなんです。デザイン雑誌などを眺めるより。その影響はあるかもしれません。

――どのような本を?

高橋●海外の小説……ポール・オースターとか、あの乾いた感じが好きで。もちろん翻訳の力もあるのでしょうが、文章を読むことはデザインと無関係ではない。

「DesignTide in Tokyo 2006」オフィシャル・ブックレット

昨年、スリーミン・グラフィック・アソシエイツがアートディレクション/デザインを手がけた「DesignTide in Tokyo 2006」オフィシャル・ブックレット

コミュニケーションをどうとるか?


――今後10年続けていくのに必要なものとは?

高橋●忍耐と努力。あとはモチベーションです。どんな仕事も一緒だと思いますが、やりたいことがあるのならば、多少の犠牲をはらってでも、それに打ち込める自分がいればいいかなって。それは我慢というものとは別なもので。

――では最後に、デザイナーを目指す人にアドバイスを。

高橋●僕の場合、専門教育を受けていませんから、見よう見まねでやってきました。レイアウト作業ひとつとっても、本来基本的なルールみたいなものがあるけれど、僕は知らなかった。だから「なんでこんな風に見えるのか、読めるのか」という部分を自分なりに解釈して、自分でルールを作ってきました。それが本来の意味とは違う解釈を含んでいたとしても、こうした作業のひとつひとつの積み重ねが、いまの自分スタイルを作ってきたのだと思います。だから、専門教育を受けていないがゆえに、何か変わった考え方ができるのであれば、むしろそっちのほうが面白いのかもしれない。必ずしも学校に行ってなくても、他の仕事・体験をしてからデザインを始めるのもいいことだと思います。

――高橋さんの場合、ホテル勤めは大事だった?

高橋●その経験は、直接的ではないけれどいま残っていると思います。いかにお客様に気持ちよく、楽しく過ごしてもらうか。そのためにコミュニケーションをどうとるか、どうサービスするか……というところで。たとえコミュニケーションが難しい相手がいたとしても、どう対応するかという部分があるし。

――こじつけるようですが、デザインにも通じる?

高橋●こじつけですね(笑)。でも、少なからずあると思いますよ。編集者やクライアントも、担当者によって考え方がそれぞれ異なります。デザインの受け手に対するコミュニケーションのとり方、サービスの方法をどうするかといったことは、常々考えていますから。

――作り手は忘れがちなことですね。

高橋●そうかもしれません。専門教育を受けていなくても、別の仕事をしていて考えていること、経験したことがあるならば、それはそれでその人にしかないオリジナルなもの。デザインという行為の中で、そうしたオリジナリティを落とし込んでモノ作りができれば、きっとその人しかできない仕事ができるはずだと思います。


BLANK+MARIOS/HAIR

スリーミンがサポートするアパレル・ブランド「BLANK」と、イタリアの「MARIOS」のコラボレーション・カタログ『HAIR』(DUOMO/2006年)

「これがデザイナーへの道」第7回・3MIN. GRAPHIC ASSOCIATES 高橋伸幸さんのインタビューは今回で終了です。
次回からは、Coa Graphics 藤枝憲さんのお話を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)


高橋伸幸さん

[プロフィール]

たかはし・のぶゆき●1968年静岡県生まれ。建築・アート雑誌の編集プロダクション退社後、97年7月に「スリーミン・グラフィック・アソシエイツ」を設立。雑誌や書籍、アパレルメーカーのカタログなどのエディトリアル、Web、商品パッケージなどのデザイン/ディレクションを手がけている。同時に『3minutes at tokyo』などの自主制作・発行、海外誌のディストリビューションも行っている。http://www.3min.jp/


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