第2話 Web制作における新しい概念 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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第2話 Web制作における新しい概念


より土台の部分としてのグラウンドデザインワーク


──秋谷さんが部長を務めている「グラウンドワークデザイン部」の名前にもなっている、「グラウンドワークデザイン」という言葉は、Web制作における更新作業をより円滑に行うことのできるような、システムの土台のデザインだ、というお話をうかがいましたが、この言葉はもともと建築用語だったということで、たとえば建築家に対する構造設計家でも、サンティアゴ・カラトラバのような、限りなく建築家やアーティストに近いクリエイティブを発揮する構造設計家、というイメージを抱きました。いわばそのWeb版、という認識でよろしいのでしょうか。



秋谷●そうですね。Webのコーディングをする人間がデザイナーと話し合いをしながら、デザインを一番活かした形でのコーディングを行うわけですが、そのときにデザイン的なセンスを持ち合わせたコーダーの方が、より良い形でクリエイティブな発想を実現していけると思うんです。極めて広告発想のWebサイト構築の手法であるのも確かかと思います。

今まではひとりのデザイナーがサイトの設計からデザイン、更新まですべてを手がけるケースが多かったと思いますが、ブロードバンドの普及によって扱うデータ量が増え、サイトの構成もここまで複雑なものが増えてくると、ひとりの人間ではカバーしきれなくなってきますから、必然的に分業化をしていかなければならない。そこで、これまではデザイナーに一任されていたこうした作業を、クリエイティブと、より土台の部分としてのグラウンドワークデザインとに分割して考えてみた、ということになります。

──つまり、Webの制作における、新しい概念を提案した、ということですね。

秋谷●一般的には、デザイナーとコーダーが既に分業しているケースも多いと思いますが、それぞれがバラバラではなく、連携することで広告発想のサイト制作における最適なコーディングを目指したいと考えています。それを言葉で定義してみたということです。部署の立ち上げの際、デザインを含むクリエイティブと、更新作業とを明確に分けたことで、双方が互いに連携しながらもそれぞれの役割に徹することができると思うんです。

その結果、クリエイティブはより高いクオリティの作品を追求することができるでしょうし、グラウンドワークデザイン部としては、よりたくさんの更新を効率よく進めていくことができる、という方向付けができあがれば素晴らしいのではないか、という考え方です。ただ、この4月に部として発足したばかりなので、まだまだこれからこの考え方を発展させていく必要があると思っています。


カンヌなどで数々の賞を受賞


──なるほど。これまではクリエイティブ部、そしてこの4月からはグラウンドワークデザイン部の部長として、インタラクティブ広告の制作を手がけているということですね。そこで、これまで手がけてきたインタラクティブ広告のうち、いくつものお仕事が数々の賞を受賞しておられますが、印象深かったものを教えていただくことはできますか。

秋谷●入社当初からクリエイティブ部の部長として携わってきたわけですが、現在クリエイティブ部には7つのチームがあり、そのチーム全体で年間100近くのサイトやバナーを制作してきています。そうした中で当社が2004年に制作した「ボーダフォン・デザインファイル」はいくつかの社外賞を受賞し、昨年のカンヌ国際広告祭では、ブロンズ賞を受賞したこともあって、僕の中でも印象深い作品でした。

──具体的にはどのような作品なのでしょうか。


秋谷●携帯電話の機種は通常メーカー側が作っているわけですが、そうではなく、ボーダフォン自体がコンセプトをはじめ、スタイリッシュな携帯電話をデザインしていこうというプロジェクトが、「ボーダフォン・デザインファイル」です。

そして、このプロジェクトについてWebのみでプロモーションをしていきたいということで、当社のデザイナーがオファーを受けたわけですが、プロモーションしたいものの焦点がインダストリアル・デザインにあるわけですから、プロモーションサイト自体もスタイリッシュかつ、デザイン性が高いものでなければならない。そこで、できるだけサイズが大きく、解像度も高いままで写真を使用することで機種のデザイン性を強調したり、インタラクティブ性という側面からもモーションデザインを考えアピールしていたようです。

──受賞にあたっては、どのようなポイントが評価されたのでしょうか。

秋谷●おそらく、従来のプロモーションサイトではこれまでなかったような、表現の仕方や写真の見せ方が評価されたのでしょう。また、ちょっとした驚きを呼び起こすような仕掛けも評価されたのだと思います。

──ほかに受賞作品で、秋谷さんが印象深かったものはありますか。

秋谷●これも2004年の作品で、各種ポータルサイトに展開された「愛・地球博(愛知万博)」のバナー広告ですね。愛知万博の前売り券販売サイトにリンクを張ったバナー広告なのですが、万博が日本で開催されるということと、自然の叡智をテーマにしているということに焦点を当てて制作しました。

バナーのサイズは468×60ピクセルとごく一般的なサイズです。全部で5本展開したのですが、たとえばそのうちのひとつは、池の水面を覗き込んだような風景が映し出されていて、メダカやコイがその中を泳いでいる。あたかも人が自然の中を覗き込んだ状態を表現しつつ、そこをマウスオーバーすることによって、手前の草がゆれ、水面に波紋が広がったり、雫が落ちてことでメダカやコイが逃げていくんです。メダカやコイの動きに、アニメーションとアクションスクリプトを組み合わせて使用することで、じつにリアルな動作を再現することができ非常に好評でしたね。また、日本ならではの情緒感を醸し出すことに成功できたと思います。これはOne Showのほか、日本の東京インタラクティブ・アド・アワードで銀賞を獲得するなど、国内外でさまざまな賞を受賞しました。


次週、第3話は「“Webの二極化”が、広告を変える」についてうかがいます。

(取材・文:深沢慶太 写真:谷本 夏)

[プロフィール]
秋谷寿彦(あきや・としひこ)
●株式会社博報堂アイ・スタジオ
グラウンドワークデザイン部部長
青森県青森市出身
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