第3話 “Webの二極化”が、広告を変える | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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第3話 “Webの二極化”が、広告を変える


インターネット上の世界の2つの方向性


──これまでカンヌ広告祭をはじめ、数々の受賞作を制作されてきたわけですが、博報堂アイ・スタジオならではのワン・ストップの制作体制があってこそ、革新的かつ、ハイクオリティな作品が生み出されてきた、ということでしょうか。

秋谷●そうかもしれませんね。ただ、我々は単なるWeb制作会社ではなく、インタラクティブに特化してはいるけ れども、あくまで広告会社だということがポイントだと思います。そして、CMや交通広告など、広告全体の中で動画やグラフィックなどの素材を表現する場所 がインターネットである、というだけで、広告それ自体の考え方は、その他のCMや誌面広告などと一緒だと考えています。Webならではのインタラクティブ 性を活かして、どのような驚きを表現していくかということを広告的なアイデアを使って制作している、ということです。

──なるほど。では、インタラクティブな広告自体は、今どのような局面を迎えているのでしょうか。


秋谷●二極化してきていると思います。ブログなどが広く一般に浸透していくにあたって、テキスト情報はバイラルに広まっていき、ユーザーがますます簡単に 欲しい情報を手に入れるのが便利な状態になってきていますね。テキストデータは情報量が軽いですから、ユーザー同士の情報のやりとりには一番手軽に使 えるわけです。

一方で企業側がユーザーに対して提供していくのは、企業イメージそのものであったり、商品ブランドであったりするわけですが、そういったこ とを広告していくにはある程度のデータ容量が必要とされます。この点に関してはブロードバンド化など、大容量の情報伝達のインフラが整ってきているおかげ で、大きいサイズの画像や動画を流すことができるようになり、広告的にもより複雑な表現が可能になってきています。これまではビジュアルにしても、できる だけ容量を軽くしようという考え方だったのが、きれいな画像のまま送り出すということが可能になってきた。

つまり、インターネット上では、広告などイメー ジで伝えるビジュアルは、データ量が逆にどんどん大きくなってきている傾向にあります。たとえばポータルサイトに掲載されるバナー広告でも、ブロードバン ドが普及する前まではGIFバナーが主流で、容量がわずか数キロバイトというものが一般的でした。ところが今では、たとえばフラッシュを使ったものの中に は容量が1メガバイトを超えるものがでてくるなど、この数年で扱うデータ容量には格段の違いがあります。

 要するに、軽いテキストベースのデータを扱うことでより早く知りたい情報がバイラルに展開していくブログと、大容量のデータをよりクリエイティブに展開し ていくことで、企業CIやイメージを正確に伝えていくものというふたつの方向に、インターネット上の世界が2極化してきているということですね。これから もさらにその傾向は強まっていくでしょう。一方は旬の情報を瞬時に伝えていくもの、もう一方はブランドイメージを正確かつクリエイティブに伝えていくも の。どちらだけがなくなって、どちらだけが残る、ということはないと思います。

──Web上の広告が、その他メディアの広告とビジュアル的なクオリティにおいても遜色なく展開することができるようになってきたということでしょうか。

秋谷●そうですね、たとえば1メガという容量のバナーであれば、かなりいろいろなことを実現できます。バナーの中にCMで展開している動画とほぼ同じもの を埋め込むことも可能です。ただ、CMで流しているものをそのままバナーに埋め込むのではなく、そこにインタラクティブ性などのWebならではのエンター テインメント要素を追加していくことが求められます。

ところが逆に、映像を使う場合であれば1メガ程度の容量はすぐに埋まるものの、そうではない場合、1 メガの広告枠を取っているのにデータ容量がそこまで達しない場合も出てきています。そういう場合は逆にどんな仕掛けを展開するか頭を悩ませることになりま すね。


インタラクティブ広告のポイントは“驚き”


──インタラクティブ広告というフォーマットそれ自体が、これまでの広告とはまったく違った新しい広告に対する考え方を要求していると思うのですが、その点をどう考えますか?


秋谷●僕自身はWeb広告の考え方がとりたてて他の広告と異なるものだとは思っていません。たとえばグラフィックの広告と似た考え方でビジュアルを考えた ときに、それがアクションとして見る人に対して驚きをもたらすような仕掛けを加えていけば、おのずとおもしろいものになっていくと思います。この、“驚 き”ということがひとつのポイントですね。

また、それがWeb上に掲載されたとき、見る人がおもしろいと思うかどうかは常に考えなくてはいけません。チー ムのメンバーと制作していくにあたって最初の判断基準は、それを自分自身が見ておもしろいと思うかどうかということになります。プレゼンするにあたっては クライアントが驚いたり、おもしろがってくれれば、そのアイデアが採用されることになるわけです。もちろん、伝えるべき企業のイメージや商品特性を見る人 にダイレクトに伝えられているか、というポイントも重要です。


次週、第4話は「変化するメディア連動のあり方」についてうかがいます。


[プロフィール]
秋谷寿彦(あきや・としひこ)
●株式会社博報堂アイ・スタジオ
グラウンドワークデザイン部部長
青森県青森市出身
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