第4話 一人で仕事する態勢 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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様々なジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ、第8回はエディトリアルからCD、パッケージなど、細やかでクールなデザインワークに定評ある岩淵まどかさんを取材し、その経歴から現在に至るまでの足跡をたどります。


第4話 一人で仕事する態勢



岩淵まどかさん

岩淵まどかさん

知らないうちに、仕事に育てられた



──最初に立体感覚がないと話していましたが、CDは立体感覚が求められますよね?

岩淵●そう。立体感覚がないと思ってデザインを始めたわりには、独立してから作ったものは立体的なものが多いんですよね。で、いつもヘンなものを作りたいという気持ちがあって。

──仕様的にもこだわりがあって、細やかな作りが印象的です。

岩淵●立体感覚はCDで培われましたね。大きいものはいまでも自信がないけれど、小さいモノ、手に持てる範囲のモノは、目新しいものが作れたという充実感がある。あと、あまりにそういうものを作るから、リクエストも多くて(笑)。

──CD以外にも、たとえば『BLINK』や『BEDROOM TRAVELLER'S GUIDEBOOK』など物体感のある書籍が目を惹きます。

岩淵●しかも、ふたつともイラスト素材が多いんですよね。以前はイラストを扱うのが好きではなかったんです。でも、次第にイラストを扱う仕事が多くなって、気がついたらイラストレーターの事務所でマネジメントしてもらってて(笑)。

──素材、いっぱいあるじゃないですか。

岩淵●なんか不思議な縁ですよね。知らないうちに、そういうふうにして育てられたのかもしれない……という気もします。立体感覚にしても、イラストの扱いにしても。

──立体でも、最近はレコード店「CISCO」の箱まで手がけている。

岩淵●梱包用や袋ですが……パッケージは面白いですよ。まあ、CDもある意味パッケージと考えられますからね。自分が買うにしても、変わったパッケージのCDがあると、つい買ってしまうクセがあって。

──日本語の組み方がきれいですが、世間的には「どうか?」というデザインもありますよね。古い人が見ると「読みにくい」とか言われたり、わりと突っ張っていた時期がありませんでした?

岩淵●特に『FADER』ですね。でも、そもそも読者層が違う。そういう媒体が多かったから、読みづらくても最低限、読めるものを……という考えで。それも基本がないわけではなくて、いかに崩したデザインにもっていくかと考えていること。その気になれば、読みやすいものを作れますよ(笑)。

──確かに、お年寄りは『FADER』読みませんよね。

岩淵●自分もそうだけれど、読みたければ読むんです。読みづらくても。だんだん自分も歳を重ねて、読みやすくする媒体もあるな……と、最近は使い分けてますが。

──欧文の組み方も、独特の“間”があります。

岩淵●欧文は最初、全然わからなかったんです。Macならではですね。それは『PAPER SKY』で勉強させてもらいました。


BLINK BEDROOM TRAVELLER'S GUIDEBOOK

ピクチャーブックにも触感、物体感が大事。
左/イラスト集『BLINK』(光琳社出版/1998年)では、
ノート帳のようなゴムバンドを使用
下/ポストカードブック『BEDROOM TRAVELLER'S GUIDEBOOK』(Franc franc/2000年)は、ホテルのダイレクションのような仕様



今後は書籍の仕事を増やしたい



──2005年、1年ばかり休業してましたよね。

岩淵●その前から、この先どうしよう……と思っていたんですね。デザイナーってある程度のキャリアになると、事務所を構えてスタッフを抱えるという形か、もしくはアーティストっぽくなっていくか、どちらかの道があるじゃないですか。でも、このまま続けていくと「私はどうなるんだ?」という迷いがあった。

──そこで旅に出た?

岩淵●段々仕事にも飽きてきたし、1年ぐらい旅行して過ごしたいなって。昔から違う場所に住んだり、もともと旅行が好きでしたから、いろんなものを身体が丈夫なうちに見ておこうと思ったんです。幸い、私はそれができる環境にあったので。あと、その時期に海外に住むのと、老後に行くのでは違うだろうし。

──リセットはできました?

岩淵●そうですね。その結果、私は一人で仕事する形が合っていると思った。でも、まるっきり一人だと辛い場合もあるだろうから、だったらマネジメントを頼んで、一番自分の不得意な面をサポートしてもらおう、と。だから最近は、昔みたいにしゃかりきに仕事しているわけではなくて、のんびり仕事してますよ。

──いいですね。

岩淵●雑誌も続けたいと思っていますが、一人の態勢で毎月やるのは難しいから、単発なら受けるようにしてます。あと、最近は書籍が多くなってきていますね。装幀は一人でできる仕事だし、雑誌みたいにスケジュールがタイトではないので。

──自分の世界を表現できるし。

岩淵●ええ。面白い。だから、もっとやりたいとアピールしてて(笑)。

──では、最後にこれからデザイナーを目指す人にメッセージを。

岩淵●そういうの苦手なんですけれど(笑)……まあ、好きなことをやるべきですよ。


グラフィックデザイナーのブックデザイン

ZOKEI MAGAZINE 2007

最近の書籍装幀から
左/『グラフィックデザイナーのブックデザイン』
(小柳帝著/PIE BOOKS/2006年)
右/『ZOKEI MAGAZINE 2007』(東京造形大学/2006年)




かつて立体は「苦手だった」と言いながら、
最近手がけたレコードショップ「CISCO」の梱包ボックスなどでは、
これまで培われたテイストを炸裂中




「これがデザイナーへの道」第8回・岩淵まどかさんのインタビューは今回で終了です。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)


岩淵まどかさん

[プロフィール]

いわぶち・まどか●1967年青森県生まれ。東京造形大学卒業後、デザイン事務所「キャップ」にて、雑誌『STUDIO VOICE』のチーフ・デザイナー等を担当。7年間の勤務を経て、1996年に独立。以降、グラフィック・デザイナーとして雑誌、単行本などのエディトリアル・デザインの他、広告、CDスリーブ、ファッション・ブランドの販促物、映画の宣材物、パッケージなど、様々なジャンルの仕事を手掛けている。

http://www.bldg-jp.com/


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