第4話 ヴィジュアルに国境なし | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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春。新入学&就職など、新たな出会いが生まれる季節……にコジつけるわけではありませんが、今回の対談は“異文化コミュニケーション”編。登場するのは、タイの作家/アーティストのプラープダー・ユン氏と、日本のグラフィック・デザイナー=遠藤一成氏。二人の邂逅を通して、一冊の本が作られていく過程を追っていきます。文化、言語の違いを超えて「デザイン」はいかに出会い、距離を埋めていくか? お楽しみください。


第4話 ヴィジュアルに国境なし



プラープダー・ユンさん(左)と、遠藤一成さん(右)



小さなマーケットだからこそ……



──グラフィック・デザイン、アート、文筆以外にも、プラープダーさんは音楽活動をしています。一昨年、プロジェクト「Buahima」のCDが日本発売されましたが、現在も活動は継続中なのですか?

PY●今年、もしかしたら新しいアルバムを出すかもしれません。あるいは、Buahimaと異なる新しい音楽プロジェクトをやりたいと思っているところです。

遠藤●Buahima、すごくいいですね。CDをいただいて、ずっと事務所でかけています。タイの音楽というと、ちょっとエキゾチックなイメージがあるけれど、すごくコンテンポラリーで実験的。

──日本では、そうした動向がわかりにくい状況もありますね。

遠藤●日本では映画公開をきっかけに取り上げられることが多いですよね。彼の才能が際立って見えるのは、タイのようなマーケットの小さい国ですごく浮いているのか、そこまで感度が高い人が少数なのか、それとも世代が入れ替わっているのか……僕はわからないけれど、何事もクオリティが突出しているのは事実でしょう。

PY●タイのカルチャーシーンにおいて、小さいマーケットで新しいものが出てきづらいというのは、逆に長所になる場合があるんですね。シンプルでオーソドックスな社会ですが、新しいものが出たら反応、あるいは交流が早い。それは、日本やアメリカなどマーケットの大きな社会よりも手応えがあるんです。

遠藤●やったことへのレスポンスが早い、と?

PY●そう。なおかつ、目立つ(笑)。確かに若い世代に受け皿もできたし、新しいカルチャーを求めている人も多くなってきたので、日本などに比べて活動がやりやすくなってきた部分もあります。どこの国でも、自分の国のクリエイターであれば、すごく興味を持ちますよね。いままでのタイでは他の国からの影響が大きかったのですが、同じレベルでできるタイ人が出てきたらタイ人は応援する。プチ・ナショナリズムかもしれないですが、そうした親近感の雰囲気が感じられます。

──出版社「Typhoon Books」も自主運営していますね。

PY●Typhoonは大手ではなく、本当に小さな出版社です。それだけで食べていけるわけではないので、その他の収入のほうがもちろん多い。でも、フットワークの軽い出版社がタイにもあってほしいという気持ちが大きくて、もっとたくさん出てくればいいじゃないかという思いがあります。だから、このままのスケールを保っていきたい。


Buahima『Chit-tak!』ジャケット
2002年に刊行された長編小説『Chit-tak!』の“サウンドトラック”として、
プラープダーさん自身が結成した音楽ユニットBuahima(ブアヒマ)によってリリースの
同名アルバム。タイのインディーポップ・レーベル「smallroom」のスタッフと制作、
タイ・ユニバーサルからリリースされ、日本盤はfelicityより発売中




言語を超えたセッション



──インディーズで出版社を立ち上げるのは、タイでは大変ですか?

PY●いや、そんなに苦労はないです。ぼくらも二人だけでやってますから。

遠藤●敷居が低いのはうらやましい。

PY●でも、ひとつ欠点……特に文学においては、言語の面でグローバルに通用しないという難しさがある。明らかにビジュアルのほうが伝わりやすいし、英語に翻訳されているもののほうがわかりやすい。もし今後、国際的に受け入れられる作品を自分が生み出すならば、ビジュアルを重視するか、音楽だったら英語の歌詞でないと難しいでしょう。

──英語も流暢ですが、小説を書くような場合、最初に英語で書いてからタイ語にシフトするようなことは?

PY●いや、していません。タイ語で考え、書いています。タイ語の表現の特徴を、英語にするのが難しいんですね。独特の言語文化なので。

遠藤●見た目、タイ語ってキュートなタイポグラフィですよね。逆に日本語はどう思います?

PY●読めませんが、タイポは好きです。それは遠藤さんがタイ語をキュートに感じるのと同様でしょう。あと、ぼくは書道が好きだから、中国語とかを見るのが楽しい。

──日本人が日本語を見ると、やぼったく感じるときがある。デザインが難しいですよね。

遠藤●ええ。漢字、ひらがな、カタカナの三つがあるから。慣れていますが、英語ならアルファベット26文字で構成できるのがいいなと思ったりします。でも、日本語が組めると、他の言語もある程度組めるような気がする。複雑で手間が多いし、漢字とカナの空きやバランスって全然違うから。

PY●あと日本語は、英語も混ぜてタイポを組んだりしますよね。あの感覚、間合いみたいなものは、かなり独特なように思います。

遠藤●フォントだけでなく、微妙にサイズ違えたり。

──今回の装幀は日本語オンリーですが、そうしたところにもこだわりが?

遠藤●そうですね。これから、プラープダーさんが帰国するまでの間、どんどんデザインが転がっていくと思う。言葉は違えど、著者とディスカッションしながらの作業は本当に刺激的で楽しい。

PY●ぼくも同感です。次回は遠藤さんにタイに来てもらって、一緒にデザインしましょう(笑)。

遠藤●いいですね。タイ行きたいですよ。


『鏡の中を数える』表1
……と、対談を終えた後も装幀の打ち合わせが続いた両者。
写真案やタイポグラフィのみの案など、複数のラフから最終的に決定したのが左の表1だ。
内省的な小説世界、そしてタイトルから、シンプルだが「何かを語りかけてくる」ような
図案を使用。イラストレーターは湯沢薫さん。
プラープダーさんが設立した出版社の日本レーベル「TYPHOON BOOKS JAPAN」より、
4月下旬刊行(1890円)













今回で「いかに『デザイン』は出会うか?」は終了です。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)



プラープダー・ユンさん

[プロフィール]

ぷらーぷだー・ゆん●1973年バンコク生まれ。中学卒業後、渡米してニューヨークの「Cooper Union for the Advancement of Science and Arts」で美術を学ぶ。終了後はグラフィック・デザイナーとして働き、98年にタイへ帰国。2000年に2冊の短編小説集を発表し、ベストセラーを記録。以降、作家、評論家、編集者、イラストレーター、写真家、脚本家、そして作詞家など、幅広く活躍中。http://www.wildwitness.com/


遠藤一成さん

えんどう・かずなり●1973年生まれ。水谷事務所勤務を経て、2005年4月より独立。アートディレクター/グラフィックデザイナーとして、広告、ファッション、パッケージなどのジャンルで活動の一方、エキシビション・シリーズ「MERRY」に関与。自身も「96」「BLUE」などの展覧会を開催。

http://endokazunari.com/


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