第3話 作品集のデザイン | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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前回に引き続き、Bluemarkの菊地敦己氏が手がけた作品を紹介し、その制作過程における思考プロセスに迫る。第3話では『空の穴 a Hole in my Head』をピックアップ。作品集のデザインについて話を伺う。



作品を掲載する順番まで
作家に任せるのがベストとは限らない



──今回ご紹介いただける『空の穴 a Hole in my Head』は、Bluemarkの出版部門から発行された小金沢健人さんの新しいドローイング作品集ですね。

菊地●Bluemarkから発行されている彼の作品集としては『Takehito Koganezawa Drawing』に続く2冊目です。ちなみに、その間に制作した、銀座の資生堂ギャラリーでの展覧会のカタログ『Dancing In Your Head』も僕がデザインしました。


──掲載する作品を選んでもらって、それを受け取ってからデザインしているのですか?


菊地●いいえ、僕が実際に小金沢さんが住んでいるベルリンを訪れて、作品を見せてもらい、作品の選択作業も2人で行うなど、編集段階から携わっています。今回の作品集では、「数を忘れる」「言葉を忘れる」「我を忘れる」「夢」という4つの章を設けて作品のカテゴリー分けも行っています。基本的には作家自身が作品を分類しているのですが、そこに僕も意見させてもらっています。


──章内での作品の掲載順は、どのように決めたのでしょうか。


菊地●掲載する順番は、僕が決めています。まずは見開き単位で考えて、左右のページで成立するようなカップルを作っていくのです。その次に、1冊のうちの各箇所で必要なイメージに合わせながら、並び順を決めていきました。この作業は、「1曲目で心を掴む」、「2曲目は少し優しい曲にする」といったように音楽のアルバムを作るプロセスに似ています。だから、作品集のデザインを手がける際には、実際に何かCDを聞きながら作業することも多いのです。


──作品集や写真集のデザインは「介在する余地がない」として、デザイナーにとっては退屈な仕事と受け取られてしまうことも多いように感じるのですが。


菊地●そんなことはありません。作品を掲載する順番などを考える作業は、すごく難しい。特に今回の作品集は自社から発行するものなので、企画の段階から関わっていることも大きく影響しているのかもしれませんが、作品集をデザインする場合には、実際に作家と話をしながら、作品がどのようなものであるかを把握したり、ボリュームや掲載する順番を決めたりと重要な作業が多い。特に掲載順については、作家が決めることが必ずしも良い結果につながるとは限りません。少なくとも、本というメディアについては、デザイナーである自分のほうが詳しいわけですし。






──なるほど。表紙に関しては黒1色ですが、これはなぜでしょうか。

菊地●「1作目の作品集の表紙が白かったから、今度は黒で」という単純な理由が1つです。また、中に掲載されている作品が、全体的に不思議な世界観を持ったものなので、映画を見るときの導入のように、読者の目をニュートラルにさせながら、現実世界との区切りを置きたかったためでもあります。


──表紙に穴を開けているのも特徴的ですね。


菊地●小金沢さんは自分の作品を解説するときに「自分にとって作品を作る行為は、ドーナツの穴を作るためにドーナツを作っているようなものだ」と語ることが多いのです。つまり、何もない空白のスペースを作るために、外郭を表現することが必要ということ。タイトルからも感じられるでしょうが、この作家にとって「穴」は1つのキーワードとなっているんです。だから、それに合わせた表現を表紙でも行っているわけです。それに、穴があることで、中に何か入っているような雰囲気になり、ちょっと気になるでしょう? この穴がなかったら、ただの黒い本になってしまいますから。


──表紙の紙は厚みがあってガッチリとしていますが、これもこだわった部分ですか?


菊地●作品集は長期間に渡って残していくことも大切なので、特に耐久性を考慮しているのです。ハードカバーにしたり、しっかりと強度のある素材を使ったりするなど気を配っています。そのような物理的な面だけでなく、内容についても同様です。だから今回は、作家へのインタビューや対談など「今のネタ」のような余分な要素を、できるだけ省きました。


──なるほど。そのほかに作品集ならではのデザインのポイントはありますか?


菊地●最近、背表紙での検索性が大切であることにも改めて気づかされたのです。ジャンルにもよりますが、美術書などは、基本的に作家の名前で本を探されることが多いのです。だから背表紙では書名よりも作家名を大きくしています。(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)

次週、第4話は「制作のスタンスと結果の関係性」について伺います。こうご期待。




[プロフィール]
菊地敦己(きくち・あつき)●1974年東京生まれ。武蔵野美術大学彫刻科在学中の1995年に「ネオ・スタンダード・グラフィックス」を設立。1997 年「スタジオ食堂」のプロデュースを経て、2000年に「ブルーマーク」を設立。ロゴマークやポスター、書籍、音楽CDなどのデザインのほか、長期に渡る ブランディングも得意とする。展覧会企画や出版など非営利な活動、カフェのプロデュースなども手がける。2006年日本グラフィックデザイナー協会新人賞 のほか東京ADC賞、NY ADC賞などを受賞。

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