第2話 「答えを出すということ」 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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2003年に設立された(株)ベースメントファクトリープロダクションは、メインであるWeb制作業務においてデザイン、サウンド、映像、プログラム、サーバー構築まで、クリエイティブに関するすべてを自社で手掛ける「トップクリエイター集団」として注目されている会社である。
「トヨタ自動車」「アサヒビール」といった大手クライアントをはじめ、様々な業種から高く評価されているのは、彼等が表層的なデザインだけではなく、ユーザー側のことをきちんと考えた広告をつくることができる、真面目に広告に取り組むクリエイティブチームだからでもある。今回はそんな(株)ベースメントファクトリープロダクションの代表である北村 健氏に話を伺った。

第2話 「答えを出すということ」



ーーWebの面白さは何ですか?

● 北村:答えを出すことができるというのが面白いですね。デザインやクリエイティブをうまく成し遂げるということ以上に、まずはクライアントや一般ユーザーに満足して頂くということが大切だと考えています。TVや雑誌では視聴率や実売数というデータは出てきますが、ユーザーがどういう経路でTV番組を見たのか、雑誌を購入したのか、詳しくはわからないですよね。広告の価値についていえば、今まではテレビが中心的な役割を果たし、そこに広告費がたくさん使われてきたけれども、最近は徐々に状況が変わってきたのではないでしょうか。WebにはTVと明らかに違うコミュニケーションスタイルがあって、インタラクティブ性が存在しています。ユーザーが広告をクリックするということ自体が今までは存在しなかったですよね。ユーザーがWebサイトのどの場所でどのくらいの時間滞留していて、どのタイミングで次に移ったのかというような詳しい状態が分かるので、そういった点を広告としてどう捉えるかということを私たちは真剣に考えています。

クライアントがビジネスとしてWeb広告に求めていること、例えば、購買を伸ばすとか、ブランドイメージをアップするとか、商品の知名度をあげるとか、そこにはいくつかミッションがありますよね。私たちがクライアントのお手伝いさせて頂く場合、そのミッションが達成されなければ、私たちは制作費を頂く意味がないと考えています。最終的には、プロモーションやブランディングが成功することによって、商品が話題になりモノが売れるということがとても重要だと考えています。

私たちが手掛けたWebサイトが同業であるクリエイターと呼ばれる方々に認められたり、Web業界内で話題となって取り上げて頂く事に関しては、それはそれでもちろん嬉しい事なんですが、私たち自身はどちらかというとクライアントや代理店さんから「商品がよく売れた」「契約数が増えた」「お客様の評判が良かった」等の声を聞く方が嬉しかったりするんですよ。


私たちは、何千人あるいは何万人といった数で日本や世界中に存在するWebクリエイターや評論家に向けてクリエイティブを発信しているのではなくて、クライアントやその先の何十万人、何千万人、何億人という一般ユーザーに向けてクリエイティブを発信している意識でいます。ですから私たちは常にWebサイトのコンセプトを大切にしながら、ユーザーインターフェイスを真剣に設計すべきだと考え、それを実践しています。たとえ表層的な見た目の部分が時代を先取りしていなくても、使いやすい手法を取った方がいいでしょうし、技術には少々古くてもその方が的確に伝えたいことを伝えられるのであれば、無理に新しい技術を使う必要もないと考えています。


ーーベースメントファクトリープロダクションだからこそのこだわりはありますか?

●北村:一度ロンチしたとしてもクライアントさんの了承さえ得られれば、自分たちがクオリティ的に満足ができるところまで無償で更新作業をさせて頂くこともあります。クリエイティブに携わる者としての私たちのゴール地点と、クライアントさんが思うゴール地点は違っていることも実は多かったりするのです。例えばクライアントさんが考えるゴールでロンチできたとしても、私たち自身もそこで終了という認識ではありません。

ーーそれはなぜですか?

●北村:本当はロンチ時に自分たち自身が100点をつけれられるものに仕上がっていればいいのですが、いかんせん努力とは裏腹に70点、80点の場合もあります。時間的な制約の中で、物理的に実現が不可能であった箇所等はもちろん、時間をかければ良くなる事に関しては自分たちが納得できるものに近づけるように、ロンチ後も更新させて頂く場合があります。クリエイティブな分野でプロとして仕事をしている以上、自分たちの思うゴール地点に到達できるよう、常に努力を惜しまないスタンスで臨んでいます。

ーーWebプロデューサーに必要な要素はなんでしょうか?

●北村:実際にできること、できないことの区別をきちんと判断できる力を持っていないとだめだと思います。感覚的な部分はもちろん、技術的にもある程度の知識を持ち、クリエイティブというものを理解できていないといけないでしょう。さらには経営的な部分での知識や判断力も必要になってきます。要はかたよらず、あらゆる要素をバランス良く兼ね備える必要があるということでしょうか。

最近では、プロとしての経験や実績が乏しいWebプロデューサーやWebクリエイター(個人的には「自称だな」と思っているのですが)といった人たちが自分のやりたい事だけをやっている「ひとりよがり」なケースを多く見受けられます。「どうこれかっこいいでしょ」「どうこれ、面白くて凄いでしょ」と斬新さや目新しい技術、デザインの部分だけに捕らわれ、本来もっとも重要な事を軽視、見落としているような気がするんですよ。それらが本当に有効に働いているのか、効果としてクライアントが欲しい結果に繋がっているのかどうか、プロとしてお金を戴いて取り組んでいる以上、冷静にいろいろな角度から考えてみることが大切だと思います。

プロジェクトによってクリエイティブの考え方や手法は様々だと思いますが、例えば商品をしっかり見せたい場合、技術的に新しくなくても全然良いと思うんです。例えばあくまでもひとつの方法としてですが、一流のカメラマンを使って購買意欲をそそるクオリティーの高い商品写真を撮って、きれいに静止画で見せてあげるほうが技術に特化したものを作るより購買につながることがあるんじゃないかと思うのです。

このような単純な手法や表現は、Webクリエイターと呼ばれる人たちにとって新しくないし、面白くないかもしれませんが、前述しましたように私たちはクライアントの要望として、商品を売るためにWebを作っているので、結果的に効果がない選択肢は、たとえそれが新しく、非常におもしろいものであっても選びません。私たちは真面目に広告に取り組むクリエイターでありたいと常に思っています。なので、広告として必要のない「無駄な遊び心」は一切覗かせません。Web制作をスタートしてからそのスタイルは変えていません。





(取材:蜂賀 亨 写真:谷本 夏)


北村 健

(プロフィール)
'70年大阪府生まれ。2003年にWeb制作業務をメインとした「株式会社ベースメントファクトリープロダクション」を設立。CEO兼Exective Creaitive Director。
TIAAの審査員や宣伝会議Webディレクション講座の講師等も務める

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