第4話 ブリヂストン「fortitude」- このアートディレクターに聞く 第38話 東泉一郎 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第4話 ブリヂストン「fortitude」- このアートディレクターに聞く 第38話 東泉一郎

2026.4.23 THU

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このアートディレクターに聞く
常に新しい表現を追い求める
第38回 東泉一郎




旬のアートディレクターをお迎えして、デザインする際の思考のプロセスと創作のスタンスに迫るコーナー。第38回目は、数々のプロジェクトで常に新しい表現を追い求めてきたアートディレクター、東泉一郎さん。最終話では、ブリヂストンの海外戦略のひとつとして展開されブランディングプロジェクトに注目する。



第4話 ブリヂストン「fortitude」
高品質に仕上げることに重きが置かれた仕事

 

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カタログ的、PR的な手法でなく「事実こそがイメージを形作る」という趣旨のもと、テスト走行後の爛れたタイヤや路面に残されたタイヤの痕跡なども被写体となっている。タイヤの超高精細撮影は菅原一剛氏。サーキット路面の撮影はダレン・ヒース氏

 

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進化し続けるF1とファッションの類似性についてジョルジオ・アルマーニ氏が寄せたメッセージ。世界中のセレブリティが招かれるモナコグランプリを舞台とした号で掲載された。レース終了とともに、港に並ぶクルーザーが一斉に鳴らす祝福の汽笛の音がSEに使われ、現場での臨場感を感じさせる



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世界でも指折りのモータースポーツフォトグラファー、ダレン・ヒースによる写真は、一般的なレース報道写真とは視点が異なる。彼の目を通したドキュメンタリーが勝ち負けを超えた空気を伝えていく

 

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シーズン中にサーキット外に持ち出すことができないF1マシンは、BMWザウバーのファクトリー内で撮影され、背景はモナコの有名スポット「カジノ」で撮影された。実際にレースを走ったタイヤはイギリスにあるブリヂストンの前線基地から輸送された。使用済みタイヤにも、マシン本体にも、さまざまな秘密が隠されているため撮影は非常に気を遣うものだった。



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近年FIグランプリが開催されるようになった中東での、市街地用ビルボード。オーソドックスなデザインながら、左右14メートルにも及ぶサイズとアラビア語のロゴタイプが目新しい



4-1 F1にタイヤを供給してきたブリヂストンが、その事実をきちんと伝えてブランドイメージの向上に結びつける目的で手がけたWebサイトが「fortitude」。これは主として、ヨーロッパやアメリカを除く海外、なかでも成長著しいアジア圏をターゲットにしたもの。F1を舞台としたブリヂストンの世界感を表現したWeb上の映像です。いわゆるクリックさせることが目的のウェブサイトと異なり、ネット上に貼られたポスターのような存在です。また、イベントやショールームのような場所でプロジェクタ映写すれば、それだけでfortitudeイメージの空間演出が出来上がる、というような用途も意識しています。

ここで表現しようとしたことは、実際にすごいことをやっているのだから、その事実を高品質に伝えることこそがイメージを形作る、ということ。F1のタイヤを手掛けていると、その周囲にはタイヤだけにとどまらないドラマや伝説が生まれていきます。それをドキュメンタリーとしてクールに見せてあげればいいのです。英女王からSirの称号を授与されたF1レーサー、サー・ジャック・ブラバムにタイヤへの想いを書いていただいたのも、すべてを本物でいこう、というポリシーからです。また、実際にグランプリに携わっているサプライヤーだという認知があるからこそ実現したことで、普通だったらなかなか実現しないことだったでしょう。写真はモータースポーツ界きってのイギリス人フォトグラファー、ダレン・ヒースによるもの。彼は非常に信頼されている写真家で、ハードルの高いヨーロッパのレース・ソサエティに、深く、かつカジュアルに入りこみ、レース前のナーバスになっているレーサーにもレンズを向けられる唯一の人物。タイヤの痕跡、レースを終えてボロボロになったタイヤ、クラッシュのシーン、レーサーの素顔の瞬間──彼には、彼が本当に撮りたいものを撮ってもらいました。だから普通はネガティブな要素として積極的には撮られない、ただれたタイヤなども登場します。新品ピカピカのタイヤではなく、そのほうがリアルだし、貴重だし、美しいし。ドキュメンタリー、いうなればアリバイ証明ですね(笑)。

4-2「fortitude」では、ほかにもポスターなどを作成したり、プロジェクト全体としては他に「POTENZA」ブランドのビルボード、セールスマニュアル、店頭用のディスプレイ・ツールなど、さまざまなものをデザインし直しました。うわべの表現だけでなく、足りないところをしっかり見直して、ボトムからも支えていく地道な作業です。そんな中でいかに新しさを生み出せるかがチャレンジになるのですが、これは僕にとってもいい経験になりました。

なお、「fortitude」では電通の堤一夫さんと横川謙司さんがそれぞれクリエイティブディレクションとコピワークを務めたほか、プロジェクト全体のプロデュースがイタリアに本拠を置くCailoghi S.r.l.の馬淵忠則さん、Flashの構築は佐藤幸夫さん(310design)が担当しました。
(取材・文:立古和智 人物写真:谷本夏)


profile
●東泉一郎
東京生まれ。理工学を学んだ後、現場労働者などを経てグラフィックデザイナーに。「センソリウム」のディレクターとして世界各地で実験的インスタレーションを行ってきたほか、日本科学未来館のための展示コンセプトデザイン、2002 FIFA World Cupのための演出コンセプトワークなどで、グラフィックのみならず、映像、プロダクト、Web、空間などを舞台に常に新しいものをデザインし続けている。
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