
2006年5月にスタートし、まもなく1周年を迎える音楽発見サイトMUSICSHELF(ミュージックシェルフ)は、CD、DVDなどエンターテインメント・パッケージの印刷・加工でトップシェアを持つ株式会社金羊社が始めた、音楽と人をつなぐサービスである。そのミュージックシェルフの企画・運営に携わる中村博久氏に話を伺った。
第3話 音楽にポジティブな人達
??ビジネスとしてはどう考えていますか?
中村●良い音楽を聴きたいという欲求と、良いモノを知りたいという欲求は同じだと思うんですね。音楽やモノにしろ、あるいはコトや情報にしても、このサイトを見ている人たちは、基本的にポジティブで自発的にアクションをしている人たちだと思います。そういった意味で、ミュージックシェルフに集まってくる方たちは、積極的に一歩入り込んだリスナー/消費者であって、そこがひとつのフックになるのではないかとも思っています。
例えば、あるアーティストと一緒にお題を作ってプレイリストの募集を行ったり、アーティスト名を伏せて試聴版を配って連想されるアーティストを答えてもらったり。そういったことはレコード会社さんにとっても有効だと思いますし、我々もチャレンジさせてもらいたいなと思っています。もちろん、ネット上だけでなく、リアルな場所でも考えていきたいです。
もう一方で、音楽のあるライフスタイルと非常に関連の深いメーカーやサービス企業の方々に、宣伝やブランディングの場としてご利用いただきたいと思っています。昨年の夏になりますが、あるデベロッパーさんとご一緒に『部屋で聴く、リビング・ミュージック』と題して、3組の女性アーティストにご登場いただく特集を掲載しました。この時は、実際に販売中のモデルルームを使って取材を行い、音楽のある暮らしについてのお話しとプレイリストを掲載しました。
それ以外では、まだ収益としては大きくないのですが、プレイリスト楽曲販売などのアフィリエイトや、他の媒体様にプレイリストや記事を提供させていただくようなコンテンツ制作などがあります。また、5月15日のリニューアルの裏では、膨大な楽曲データベースが動き始めたんですが、このデータベースも将来的には収益を生んでくれると信じています。
??音楽配信などによって音楽業界は大きく変化してきたと思うのですが、今後はどうなっていくと思いますか?
中村●それを予想するのは難しいですよね。個人的には、ある時は街のそば屋、別の時には手打ちにこだわるそば通のそば屋といったように、目的や気分によって選べるってことは良いことだという気がします。とりあえず今聴きたいという時には音楽配信がいいでしょうし、やっぱりこれは買っておきたいとか、手元に持っておきたいというものはパッケージとして購入するでしょうし、最近はアナログレコードも話題になってきていますよね。新しいリスニング・スタイルが加わっていくのは、リスナーにとって音楽を聴く可能性がいろいろと増えることになるので、あまりそこは気にしていないですね。
ミュージックシェルフでは、リスナーにどういう形で音楽を聴いてほしいというスタイルは強要していません。あくまでも、プレイリストに挙げられた楽曲を聴いたり、手に入れたりする方法をガイドすることが第一目的です。気に入った曲を見つけて、試聴でチョイ聴きでも、初回限定豪華パッケージを予約購入しても、それはリスナーの自由です。現在はCD購入と配信サイトへのリンクしかありませんが、着うたやアナログ盤など全方位で紹介していきたいと思っています。
ここ数年、音楽配信などが始まってから、音楽ファンにとっては、ますます面白くなってきていると思います。まずプレイヤーのハードルを下げましたよね。パッケージなどの製造コストをかけずに、音楽をリリースできるようになりました。有名・無名問わず、例えばmyspace.comなどにアーティスト登録すれば、世界中で何万人、何十万人の人に聴いてもらえたりすることも可能なわけですよね。自分だけで制作して、宣伝して、世界中に10万枚の手売りが現実に行われています。

リスナーにとっても、今までは単純に情報も流通もチャネルが少なかったと思うのですが、インターネットを使って本当に面白いもの、自分の好きな音楽を探せて選べる時代になってきたわけですよね。メジャー会社によるヒットチューンも、スタジオで丁寧に作られたアーティスティックな作品も、ベテラン・アーティストの若い頃の作品も、はじめて曲を作ったインディーズの作品も。いま、それらを同時に聴く事ができて、リスナーにとってすごくいい時代だと思うんですよね。
その一方で、音楽を聴く環境のヴァリエーションは減ってきちゃってるのかもしれないですね。若い子で携帯の着うたメインの人は、「音が良い」という意味がわからないかもしれないですよね。リビングルームで音質の良いスピーカーを使って音楽を聴くといっても、いったい何が楽しいのかわからない。そういう点では、オーディオ機器の視聴会なども、もっとおもしろいものにして聴きに来てもらうことが必要だと思うし、実際そういう動きも出てきていますよね。いつも聴いてる音楽でもスピーカーが違うとこんなに音が違うんだよ、とか、音楽をもっと楽しめるような、いろいろな音楽に関するイベントやコミュニケーションが増えていくといいと思います。
いま音楽に関しては、送り手にとっても受け手にとっても過渡期、と言っていいのかもしれないですね。誰もが変化を敏感に察知していて、いろいろと試行錯誤しているんだと思います。こんなに試行錯誤している状況というのは、日本の音楽産業の歴史上初めてではないでしょうか。LPがCDに変わる、というレベルじゃないですよね。音楽ソフトを送り出す、制作・製造・宣伝・流通といった従来のスキーム自体が既に変化しているし、CD買うくらいだったらライヴに行った方がいい、など若いリスナーの音楽に対する意識も変化している。そして、音楽情報を伝達するラジオや雑誌、インターネットなども含めて、音楽を取り巻くすべての環境が変化してきている時ですよね。
第4話に続く
(取材:服部全宏(GO PUBLIC) 編集:蜂賀亨 撮影:谷本夏)
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中村博久●なかむらひろひさ MUSICSHELF編集部 株式会社 金羊社 企画営業部 副課長 (プロフィール) 1968年生まれ、神奈川県横浜市出身。 主にエンターテインメント商品やプロモーションの分野で、DVDやWebサイトのディレクションを行っている。 |




