第1話 ミュージックシェルフとは | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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タイトル画像、第11回Webプロデューサー列伝 中村博久

2006年5月にスタートし、まもなく1周年を迎える音楽発見サイトMUSICSHELF(ミュージックシェルフ)は、CD、DVDなどエンターテインメント・パッケージの印刷・加工でトップシェアを持つ株式会社金羊社が始めた、音楽と人をつなぐサービスである。そのミュージックシェルフの企画・運営に携わる中村博久氏に話を伺った。

第1話 「ミュージックシェルフとは?」


――最初にミュージックシェルフとはなんですか?

中村●ミュージックシェルフというのは、「ブックシェルフ=本棚」と同じで、「音楽の棚」という意味の造語です。アーティストをはじめとする選曲者の方々に、オススメの楽曲10曲からなる「プレイリスト」を作っていただき、その様々な分野の選曲者たちの「ミュージックシェルフ(音楽の棚)」が集まっているのが、このサイトの特徴です。

サイト自体のテーマとしては“音楽発見”というのを掲げていて、プレイリストに触れた方が、1曲でもいいので、この曲良さそうだから聴いてみよう!とか、こういう聴き方もあったんだ!とか、何か新しい発見をして音楽生活の広がりに役立ててもらえればいいな、と思っています。プレイリストという共通のモティーフを媒介に人と人とが繋がっていく。いわゆるソーシャルネットワークサービス(SNS)とは違いますが、音楽ファンがプレイリストを通じてコミュニケーションを展開するWebマガジンであり、コミュニティ・サービスでもあるわけです。

また、ミュージックシェルフでは音楽の試聴や販売はしていませんが、現在はamazon、HMV、iTMS、Mora、リッスンジャパンと提携をしていて、プレイリストに挙げられた全曲にリンクが貼られています。ですから、パートナーサイトを通じて試聴することもできますし、その曲が気に入れば1曲だけでも買えるし、パッケージでも買うことができるようになっています。

――はじめようと思ったきっかけは?

中村●2004年に、ある方と昼食をしていて「最近ラジオって面白くないよねぇ、聴いてる?」って話になったんです。それで、NHK-FMの「サウンドストリート」(1980-86年放送)とか良かったよねえ、とか、今でも山下さん(山下達郎)の「サンデーソングブック」は聴き逃せないよねえ、とか。ああいう音楽番組をもっと聴きたいし、そこから知らない音楽をもっと知りたいよね、ってところが最初のきっかけですかね。

それと同時に、音楽を通してのいろいろなコミュニケーションの面白さというのもあると思うんですよね。例えば、音楽的に信頼できる友だちにミックステープを作ってもらったり、好きな女の子に自分で選曲したMDをあげたりとか、そういうやり取りってとても面白かったりもしますし。で、Web2.0という段階に入ったインターネットで、人と音楽が有機的にリンクして、知らなかった音楽に出会えるサービスができれば、楽しいことになるんじゃないかなって思ったんです。

また、ぼくの周りの30代の人たちから、最近音楽を聴いてないって声も増えてきたんです。理由を聞くと、時間がないからって言うんですけど、自分も含めてそれは言い訳っぽくて意心地のよい感じがしなかった。でもその時単純に、能動的なリスナーの楽しめる音楽系サービスが少ないだけなんだと思ったんです。ひとりひとりのグッド・ミュージックをいつまでも探し続けられる場所。インターネット上であれば、そういう様々な音楽嗜好性を包み込むような懐の大きいサービスがきっと可能だろうし、ミュージックシェルフで目指していきたい方向はそういうところなんです。

――実際にスタートしたのはいつからですか?

MUSICSHELF(ミュージックシェルフ)のトップページ。来週5月15日には1周年を迎えてリニューアルする予定

中村●2006年の3月から関係者内覧を始めて、約2ヶ月後の5月15日に正式オープンしました。2007年5月15日には、ちょうど1周年という区切りもあって、デザイン的にも機能的にもバージョンアップをする予定です。

――なぜ「プレイリスト」というモティーフにしたのですか?

中村●オープン当時は、フラットなユーザー同士のコミュニケーションで何かを作る、楽しむというサービスがトレンドでした。でもミュージックシェルフは、先ほどお話ししたようにFM音楽番組的な遺伝子が根底にあるので、第一線のアーティストたちと音楽ファンが繋がることで音楽を楽しみたい、っていう思いがあったんです。とは言っても、アーティストと音楽の話題でコミュニケーションをとるというのは現実的には難しい。そこで「自分の好きな曲、気に入ってる曲」をプレイリストとして表現し合えれば、アーティストでも、リスナーでも、同じ音楽ファンとしてお互いの想いを感じ取ったり、気持ちが通じ合ったりできるかな、と。

友だちの部屋に遊びにいって、棚に並んでるレコードやCDを見て、「あ、これ聴いてるんだ!同じの持ってるよ」とか、「このアルバム知らないや、聴かせて!」みたいに盛り上がったりするじゃないですか。音楽ファン同士の親近感や信頼が深まる瞬間ってそういう時ですよね。そういうのがネット上でできたら面白いなって思っていて、「プレイリスト」というモティーフを選びました。

――「ミュージックシェルフ(音楽の棚)」を通したコミュニケーションって面白いですね。

「人」と「人」とのダイレクトなコミュニケーションだとあまりにも近すぎて、結構つらいことが多かったりもしますよね。個人的には、リアルな世界でもたくさんしがらみがあるというのに、ネット上でもまたか!ってことにもなったりして(笑)。程よく、ちょっと距離をとって、お互いの「棚」と「棚」とでコミュニケーションを展開した方がよりスムースに会話できたり、客観的に「棚」が見れるから改めて自分の音楽の好みを再発見したりできるかなって思ったんです。

次回に続く

(取材:服部全宏(GO PUBLIC) 編集:蜂賀亨  撮影:谷本夏)




中村博久●なかむらひろひさ
MUSICSHELF編集部
株式会社 金羊社 企画営業部 副課長

(プロフィール)
1968年生まれ、神奈川県横浜市出身。
主にエンターテインメント商品やプロモーションの分野で、DVDやWebサイトのディレクションを行っている。

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