第1話 projectorとは? | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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タイトル画像、第11回Webプロデューサー列伝 中村博久

数々のインタラクティブアワードを受賞し、インタラクティブな領域のみならず様々なプロジェクトでその方法論を提示するクリエイティブユニットprojector。その(株)projectorの代表である田中耕一郎氏に話を伺った。

第1話 projectorとは?


――主にどんなお仕事をされているのですか?

田中●インタラクティブ領域の広告のディレクションというのがメインの仕事です。ただ、ここ一年ほどは広告という領域に収まらない仕事も多く、店舗上のインスタレーションや、商品の企画、Webのビジネス開発など、いろいろな企画に携わることが増えてきています。

――projectorという会社の設立までの経緯を教えてください。

田中●もともとCMのディレクターになりたくて、TYOというコマーシャル制作会社に入りました。でも、ディレクターでの採用でなく、プロデューサー候補としての採用でした。それで、一年ほどCMの制作をしていたのですが、CM以外の映像のビジネスを開発する部署に移り、2001年にそこで「MIND THE BANNER」というバナーを舞台にしたアートプロジェクトをやりました。Tomato、me company、カイル・クーパー等が参加したもので、それをきっかけにネットに魅力を感じるようになりました。

ネットを舞台にしているけれども、やっていることはアートだったり、参加している人たちは映像クリエイターであったり、メディアアーティストの方たちだったので、その時にネットはおもしろい舞台になるという実感がありました。そこからネットの仕事をメインにやるようになりました。それでTYOインタラクティブデザインという、インタラクティブの広告をしている部署に移り、何年かを経て、ちょうど2年半くらい前に独立してprojectorを立ち上げました。



――独立するきっかけは?

田中●もともと30歳になるまでに独立したいと思っていました。ちょうどその頃にonedotzeroという映像フェスティバルの視察があってロンドンに行ったんです。その時に既にインデペンデントでやっているデザイナーやクリエイティブスタジオの方々と話す機会があって、インスパイアされて意思を固めました。


porjecterのトップページ作品 






――大きくインスパイアされたものは何ですか?

田中●面白い作品を作るだけではなくて、仕事のやり方を含めて自分の状況を自分でデザインしていくことができないと、ほんとにハッピーには仕事できないということを、彼らの仕事を見ていて感じてしまったんですね。当たり前のように、よりよく仕事をするための状況を自分で考えて作ろうとしていたりする。それは、自分の看板と責任で自分のやりたい事をやっていかなければできないことだと思います。僕はもともと会社にいる頃からフリーに近い状態でやっていて、自分でデザインをできるわけではないので、プロジェクトごとにスタッフを集めて具現化するということはやっていました。だから、自然と肩を押されたというところでしょうか。

――projectorを立ち上げてからは?

田中●会社を辞めると言うと応援してくれる人が結構いたんですね。ありがたいことに辞めてから立て続けに評価された仕事ができました。NIKEの蹴メというケータイメールでフットボールできるツール、それから、JFNのFM Festival04という音楽イベントコミュニティ。これは中村勇吾さんとやってカンヌで金賞をとったものです。両方とも、表現というより、むしろ新しいコミュニケーションの仕組みを作る仕事でした。もともと自分の志向もそこにあったのですが、独立して最初にやった2つの仕事がそういった形で評価されたことで、それ以降の仕事もWebサイトの企画制作ということではなくて、インタラクティブメディアを使って新しい広告の仕掛けやコミュニケーションの仕組みをいっしょに考えるという仕事が多くなりました。今もそういうスタンスで仕事させていただいていることが多いです。

――インタラクティブなメディアのおもしろさは何ですか?

田中●まだコミュニケーションの回路が開かれていない場所を見つけるというのは、それだけで楽しいです。ネットの面白いところは、例えばコマーシャルだと30秒、15秒と枠組みが決まっている中で表現の強度を競っている、でも、Webとかインターネットの場合は、枠組みから考えられるところがある。実はそこに凄く可能性があるのに、なんとなくWebのトレンドやフォーマットが出来上がっていて、その中で表現を競いあっている状況は出来てきているけれど、僕はそこにあんまり興味がないんですね。『なんか新しい回路が開いたな』ということにチャレンジしていきたい。

これは自分の価値観だと思うのですが、自分はデザイナーでもなくフラッシュのディベロッパーでもなく、最後の定着まで自己完結できる人間ではないので、どちらかというと根本のやり口とかチームのあり方とか、作り方のプロセスとか、そういうところでアイデアを出すことで自分の職能や自分の仕事が機能することを、経験の中で段々理解してきた。それが自分の個性だと思うようになってきたことで、やはり企画の方向性がそちらに向かうようになってきました。



次回に続く

(取材:服部全宏(GO PUBLIC) 編集:蜂賀亨  撮影:谷本夏)


[プロフィール]
たなか・こういちろう●(株)projector代表/クリエイティブディレクター

projectorは、田中耕一郎、河村大馬によるクリエイティブユニット。
広告、Web 、映像、インスタレーション、プロダクト、イベント、事業など様々なプロジェクトを手掛けている。
カンヌ金、ONESHOW金/銀/メリット/ファイナリスト、TIAAグランプリ/金4など受賞多数。
www.projector.jp

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