第4話 ブログ以前、ブログ以降における変化 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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タイトル画像、第11回Webプロデューサー列伝 中村博久

数々のインタラクティブアワードを受賞し、インタラクティブな領域のみならず様々なプロジェクトでその方法論を提示するクリエイティブユニットprojector。その(株)projectorの代表である田中耕一郎氏に話を伺った。

第4話 ブログ以前、ブログ以降における変化


——ブログの興味深い特性って何だと思いますか?

田中●例えば、僕の情報収集のあり方というのは、ブログ以降でガラッと変わったんですね。ブログラインズで300?400のブログを登録して、一ヶ月単位で50ぐらいは入れ替えていってるんですね。バーっと読んで面白いものは定期的にチェックして、面白くないものはなくしていって。おもしろいブログで発見した別のブログをまたやっていって、そうやって世の中の面白いことにアンテナをはってる人たちの視点をザーッと見て行くことによって、民意ではないですが自分の視点ではない誰かの視点というものが、すごく近くなりましたね。それが日常的になったと思う。

これは凄いことだと思う。僕は情報が好きなんです(笑)。雑誌もよく読むし、映画も見るし。でもブログというものがその中でも最も新鮮だと思います。やはりそれは、それだけ情報を発信している人達の分母が出来上がってきていると思う。あと結局、全ての情報の価値というのは不特定多数に対して面白いことでなくて、自分にとって面白いかどうかであって、ブログというのは、そういう志向性をもっている。自分にとって面白いことを、自分の温度で語っている集合体みたいなところがあるので、そういうものに触れていくこと自体が面白いんですよね。メディアの温度が、雑誌に書いたりとかテレビで発言したりとかとは全然違うと思う。

——そういうものに触れていくことが回路を開くということに繋がるんでしょうか?

田中●そう思います。結局、ゼロから何か新しいものを作るということでなくて、何かと何かの組み合わせだったり、あるいは光の当て方なのかなと思います。そういうことは、いろんなものを見ていかないとできないと思うんです。自分の中にいろんな尺度があるかどうかということだと思う。特にコミュニケーションクリエイティブというのは、まさに自分の中にいろんな近所の人がいるかどうかということで。そういった目線でものを見ていく、そういう意味でブログはたくさんの近所の人の目線に触れられるものですよね。それって凄いことで。僕の企画の仕方もブログ以降で大きく変わってきましたね。

——今後のprojectorについて教えてください。

田中●新しいやり口を志向したいというのと、それとは別に世の中に影響を与えるようなことを、あるいは社会性のあるようなことをやってみたいですね。例えばWeb広告で本当に世の中で話題になったものが一本でもあるかというと、ないような気がします。でも、普段の生活の中でネットというのは日常化している。ある意味マスメディアに近い存在になってきている。

広告という領域を外して考える時に、一番僕がびっくりしたのは『電車男』だったのですが、そういう本当に大きな現象になるようなことも出始めてきている。だから、広告コミュニケーションの中でWebという領域を使って、広く世の中に話題になるようなことを、誰かがやって欲しいし、僕もやりたいですね。そのためには、やはり多分今までの延長線上で何かを考えていくということではなくて、全然違うやり口だったり、全然違う領域のスタッフと組んでやっていかないと、そういうステージには上がっていかないのかなという感じがしています。自分も含めてなんですが、やはり狭い感じはします。

僕個人の夢というのは、昔から映画を作るのが夢なので、そのステップとして同じ映像のCM業界に入ったというところもあって、今もその気持ちは変わってないんです。自分の仕事の中で、映像の仕事が多かったりするのも、やっぱり好きだからそういうものを取り込もうとしてるところもあるようで。

好きだから映画監督と仕事をしたりとか。やはり映画を作りたいというのが変わらぬ夢だったりします。映画館って凄いメディア体験で、あれは100年以上たっても変わっていない、ひとつの完成形だと思うんです。ビデオで見るのではなくて、暗闇の中でみんなが同じヴィジョンを共有することは、普遍的なメディア体験だと思うんです。だから、その中において表現というのはやってみたいです。

以前やったTRUNKというインタラクティブムービーは映画そのものを作るのではなくて、映画体験を作るという提案をしたものです。デスクトップに映画館を落としましょうという話をしていて。映画を見た後に喫茶店で話をして「面白かったね」とか、単純に一人で見るだけじゃなくて共有していく行為を含めて映画体験ですよねという話をしました。

そういうものをネットで置き換えてやってみたかったんですね。僕自身としても映画に対する受け止め方みたいなものを、ネット上でも感覚として引き継いでいろんなところで試してる感じは今もあります。どんどん試しながらも、本質的には映画を作るところにいければいいなと思っています。基本的には夢見る乙女主義なので(笑)、夢を持ってやっていこうかなと思っています。


(取材:服部全宏(GO PUBLIC) 編集:蜂賀亨  撮影:谷本夏)


[プロフィール]
たなか・こういちろう●(株)projector代表/クリエイティブディレクター

projectorは、田中耕一郎、河村大馬によるクリエイティブユニット。
広告、Web 、映像、インスタレーション、プロダクト、イベント、事業など様々なプロジェクトを手掛けている。
カンヌ金、ONESHOW金/銀/メリット/ファイナリスト、TIAAグランプリ/金4など受賞多数。
www.projector.jp

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