
第1話に引き続き、帆足英里子氏が手掛けたデザインを紹介し、その制作過程における思考プロセスに迫る。今回は、ユニクロが販売しているスキニーパンツを紹介する店内タペストリーに注目する。
第2話 カッコ良さを追究したファッション広告
すべてを自分が背負わなくても
周りのスタッフがどんどん良くしてくれた
──今回ご紹介いただけるのは店内タペストリーとのことですが、これは布に刷っているのですか?
帆足●布のような特殊な紙に刷っています。表面が網目のようになっていたので、インキのノリが非常に悪くて、グラデーションなどのディテールの表現が難しかったです。
──このタペストリーの仕事は、どのように依頼されたのでしょうか。
帆足●ちょうどユニクロの方向性が変わり始めていた時期の依頼でした。それまでのイメージは、「等身大で誰にでも手が届く、肩の力の脱けた感じ」がひとつの特徴だったと思うのですが、それをガラリと変えて、ファッション性を際だたせたいと考えていたようです。若者が、もっと「オシャレだ」「カッコ良い」といった感覚で買いに来てくれることを望んでいたわけですね。
──なるほど。たしかに、そのような転換期がありましたね。
帆足●だから、このタペストリーについても「とにかくカッコいいもの」を依頼されました。「店に入った瞬間に、ユニクロがカッコ良くなった印象を与えられるようにしたい」とのオーダーだったのです。
──「カッコいい」がキーワードのようですが、このプロジェクトでは、どのように「カッコ良さ」を表現したのでしょうか?
帆足●たとえば、ユニクロの洋服だけで構成するのではなく、アクセサリーなど違うものも混ぜながらスタイリングしていきました。着ることの楽しさを表現し、全体の雰囲気でカッコ良さを演出したのです。また、モデルについても、それまでは日本人を採用することが多かったのですが、多国籍にしてグローバルな印象を生み出しています。
──モデルを変えて撮影しているようですが、何パターンあるのでしょうか。
帆足●動きを全て変えて、11人のモデルを撮影しました。だから全部で11パターンです。背景が真っ白だと面白くなかったのでグラデーションを入れたのですが、この色味もモデルの性別ごとに変えて、変化を付けています。モデルのポージングについても、フィティングの際に決めて、みんなが並んだときのバランスに配慮しました。だから全体の並び順も非常に重要なポイントだったので、店頭に飾る際に変わらないように、指示書を作って徹底しました
。
──各モデルの動きも、とてもダイナミックですね。
帆足●撮影時には、躍動感を出すためにトランポリンを用いたり、風を吹かせてヘアをなびかせたりもしました。また、トリミングを行う際にも、足ギリギリで大胆に切ったりして、被写体を大きく見せるようにしています。
──モデルが動きながらの撮影だと、洋服のディテールが思い通りにならないことも多いのではないでしょうか?
帆足●シワや影などについては、伸ばしたり整えたりと、シビアにコントロールしています。そのような部分は、やはり整理してあげると、パッとキレイに目に入るものなのです。ただ、整理しすぎると、反対に安物っぽく見えてしまうこともあるので、その辺りの加減は難しかったですね。また、モデルのポーズに工夫することで、スキニーパンツの特徴である脚のラインの美しさを、何よりも強調して見せるように配慮しました。
──そのほかに「カッコ良さ」を表現するための工夫は、何かありましたか?
帆足●お立ち台にモデルが立っているように、ライティングを非現実的なイメージにしています。存在感を際立たせつつ脚を細く見せるために、まず逆光で撮影し、アウトラインを不思議な感じで光っているようにしているのです。グラデーションの背景は合成しています。合成でないと、このような表現は実現できないんですよ。
──なるほど。今回の仕事では「カッコ良さ」を追究する工夫が満載だったようですが、そこから得られたことや学んだことなどは何かありましたか。
帆足●実はファッション関係の仕事に携わったのは、このときが初めてでした。ただスタイリストやフォトグラファーなどが、ファッション慣れしている錚々たる人たちだったのです。だから、何もかも自分で背負わなくても、核となる部分だけを決めておけば、周りの人たちがどんどん良くしてくれたのです。そのような方たちと出会えて一緒に仕事ができ、「ファッション」を作り上げていく過程を体験できたことは、自分にとっては新鮮で楽しかったです。
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第3話は「エッジの効いた目立つ装丁」について伺います。こうご期待。
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