
帆足英里子氏によるデザイン術を紹介してきた本連載。最終回となる第4話では、帆足氏が在籍するライトパブリシティの自社広告をピックアップ。ユニークなキャッチコピーとタイポグラフィによる遊びが特徴的な作品だ。
第4話 ユニークな自社広告
自由な土壌で積極的なチャレンジを
求められるポジション
──まずは今回ご紹介いただける作品の概要から教えてください。
帆足●ADCの年鑑に出稿しているライトパブリシティの自社広告です。この広告は、毎年、社内で担当者を決めて制作されています。私は、弊社の代表を務めている細谷巌に依頼され、2005年度から2年続けて担当しました。
──キャッチコピーが非常にユニークですが、これは前もって決められていたのですか?
帆足●弊社に在籍しているコピーライターと一緒に考えながら作りました。最初の年のキャッチコピーは「SUSHI ! TENPURA ! RAI-PABU !」で、外国人がイメージする日本の魅力的な食べ物を集めて、その中に社名(のニックネーム「ライパブ」)を入れてあります。日本に対する間違った認識もあると思うので、少し皮肉を混じえているわけですが(笑)。
──翌年のキャッチコピーも似たような雰囲気です。今度は、怖いものの代表例4つを集めたのですね。
帆足●「地震! 雷! 火事! 親父!」を元にして、「親父」の部分を当て字の「雷波舞」に変えています。どうせだから、前年度になぞらえて、少しシリーズっぽくしようと考えたのです。
──このようなキャッチコピーを元に、それぞれのビジュアルについても考えていったのですね。
帆足●そうです。キャッチコピーのインパクトが非常に強かったので、言葉の面白さや強さを前面に出すために、余計なことはしないで、ロゴだけで遊びを加えることにしました。たとえば、最初の年の広告では、テキストは全てアルファベットで構成されていますが、実は片仮名をトレースして英語に作り直しているのです。
──なるほど。片仮名のような雰囲気を感じるとは思ったのですが、英語を片仮名に近づけて変形させたわけではないのですか。
帆足●元の文字が片仮名なのです。言葉の響きが日本的な感じだったので、それを書体で表現することができればと考えました。次の年にも、文字とグラフィックを組み合わせてアフロ頭のように見せたり、「波」に「○」を付けて「パ」と読ませたりするような遊びを加えています。
──こちらも、とても楽しげな雰囲気が伝わってきますね。
帆足●頭の形のグラフィックは、すごくたくさん描きました。最初はパスで作成していたのですが、アフロの雰囲気がうまく出なくて、最終的には手描きしたものを採用することになったのです。ちなみに電話番号のマークのところも、アフロ頭にしているんです。
──これらの広告をデザインする際には、どのようなコンセプトを設定していたのでしょうか。
帆足●会社の広告は、その時々の社内の雰囲気を感じさせる、いわば会社の看板のようなものです。当時のライトパブリシティは、周囲から保守的なイメージを持たれていることが多いように感じていたのですが、だからこそ、少し的外れなような変わった広告を作りたいと考えました。あまり真面目すぎるデザインで、そのようなイメージに限定されたくないと思ったのです。
帆足●会社の広告は、その時々の社内の雰囲気を感じさせる、いわば会社の看板のようなものです。当時のライトパブリシティは、周囲から保守的なイメージを持たれていることが多いように感じていたのですが、だからこそ、少し的外れなような変わった広告を作りたいと考えました。あまり真面目すぎるデザインで、そのようなイメージに限定されたくないと思ったのです。
──完成した広告を見て社内での反応はいかがでしたか。
帆足●「何これ?」「ライトパブリシティっぽくなくて良いね」と、とても喜ばれました。細谷にも両方とも喜んでもらうことができ、「これは僕には真似できないよ」と言ってもらって、すごく嬉しかったことを今でも覚えています。
──帆足さんにとって、ライトパブリシティとは、どのような会社なのでしょうか?
帆足●自分で担当したいと思った仕事を、それとなく周りに伝えておくと、割り振ってもらえることが多いのが特徴的です。また、女性スタッフが少ないので、女性向けの媒体を自分が担当させてもらえることも多い。自分に合っている仕事に携わることができる機会が多いので、自分の世界を表現しやすい環境だと考えています。
──なるほど。それは確かにデザイナーにとって重要な環境かもしれませんね。
帆足●さらに、自分の思う通りに仕事をさせてもらえるので、とても恵まれていると思います。それと同時に、会社全体で見ると、オーソドックスな仕事が多いのかな、と感じることも多いのです。だからこそ反対に、今回紹介した自社広告のように、ハメを外したようなものを作ることができる可能性も秘めていると思います。せっかく自由にやらせてもらえる土壌があるのだから、そのようなチャレンジを積極的にやらなければならないし、まさに私は、そのようなポジションにいるのではないかと。だから、とてもやり甲斐を感じているんです。
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
「このアートディレクターに聞く」第13回帆足英里子さんのインタビューは今回で終了です。
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