第3話 人間はプリミティブになっていく | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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タイトル画像、第11回Webプロデューサー列伝 中村博久

来年20年をむかえる、フリーペーパー「ディクショナリー」。そのディクショナリーの過去の号がデジタル化された「ディクショナリー・ライブラリー」が公開された。発行元である株式会社クラブキングの代表であり、ディクショナリー編集長の桑原茂一氏に話を伺った。。

第3話 人間はプリミティブになっていく


伝書鳩を飛ばす準備もしておいたほうがいい


——桑原さんは、Webをどのような使われ方をしていますか?

桑原●暇があれば、webでDJやりたいですよね、延々と。それがDJでも選曲家でもどう呼ばれてもいいんですが、そういう表現方法を持っている人が同時にWeb上で選曲やったら『著作権どこから捕まえるんだよ』みたいな(笑)。そういうことも煽っていきたいですよね。みんなでバカやってればやりやすくなるんじゃないかと。

——メディアとしてインターネットというのはどういう存在になってきましたか?

桑原●極論すれば、どんなにテクノロジーが進歩しても人間そのものは、どんどんプリミティブになっていくと思いますね。人間は200キロで走れないけど、車にのると200キロで走れるようなことをインターネットは可能にしてくれていますけど、やはり風呂に入る時には車には乗っていられないわけだから。素っ裸な人間というところは、どこまでいっても突きつけられるし、それを忘れずに進化に向かっていければいいと思います。

僕らがクラブイベントを実際にやるのも、紙の上とかWeb上で、やった気になってしまっているところにとても怖い感じがして、やはりしんどいかもしれないけど人が集まるところに出ていって、今自分たちがどういう人たちとこのメディアを作っているのかという場を持ちたいと思っています。僕らの世代になっても音楽好きでDJやりたいって気持ちがあるってことを伝えることって、少し恥ずかしいかもしれないけど、でも大事なことだと思うんです。その辺がグチャグチャにできる場がまさに必要な気がしています。正論ばかりがまかり通りすぎないようにしたいなとは思っていますね。

Webは正論ばかりになってきているような気がしますね。もっと混とんとして『暴動だ!』とか(笑)そんなことを言ってもいいと思う。それを言える場所にしておかないといけないという感じがしますね。『おまえら線抜くけどいい?』ってコンセント抜こうとしている人がいっぱいいるわけだから、本当ヤバイですよ(笑)。コンセント抜かれたらまた闇に戻るわけだし。だから、インターネットっていいところを見つけて広げていく必要もあるけど、でも同時に伝書鳩飛ばす準備もしておかないと駄目だっていう感じはします(笑)。

突破してくのが人間という生命体


——インターネットの世界に触れたからそういう感じなんですか?

桑原●100人が100人、インターネットを使うのじゃなくて、一人か二人偏屈な人、例えば第六感を鍛えている人がいて、その人のおかげで闇になった時に繋がるみたいな(笑)。そういうのはいつも呼びかけておかないといけない気がする。抽象的な言い方で悪いんだけど(笑)。本来は自由なところのはずが、いつのまにかがんじがらめに脇を固められて(笑)目に見えない国境がありますよね。国境というのは国と国の間というよりも、多分ある利益を共有する者たちの国境というのかな。

——パンクみたいな動きとか出てくるんですかね?

桑原●(笑)だから『暴動だ!』って言ってるんです。

——がんじがらめになっているインターネットのなかで、桑原さんは「暴動」みたいなことをやっていくのですか?

桑原●やはり、危機感を煽ることはたやすいだろうと思うんですね。人間は弱いから。不安が一番人間を駄目にするから、社会的にはストレスという言い方もあるかもしれないですけど。今の時代に、若い人たちがつまらないのは、その大きな不安ですよね。ものすごく重くのしかかってる。だけど、そこを突破していくというのが生命体のいいところでもあるわけで、そういうのが僕らの役割だと思うんですよね。僕らが言うDJや選曲家やクラブカルチャーというのは、たまたま当時そういう言い方しかできなかったからそう言っているだけであって、いつの時代も変わらないものじゃないですかね。クラブカルチャーにずっといるということでなくてね。

最近、なぜ自分が新しい音楽が好きなのかなと思ったら、ポップスとかロックとかは、すぐに形式化してしまうんですよ。だから、それに気付いたらその先を行かないと駄目なんだと思うんですよね。みんながみんな、そうなるわけにはいかないけど、僕らはそういう種族に生まれてきたのならそれを全うにやり続けるしかない。特別なことでも何でもなくそういう種族なんですよ。

——革命家ということですよね(笑)

桑原●形式化してしまうんですよ、ほっとくと(笑)。安心しちゃうんですよ。

——インターネットの世界でパンクはまだ登場していないですよね。

桑原●結構、やられちゃってますよね。だから、たまたま僕らはデザインの上手な人たちと出会えて、キレイなサイトに仕上がっていますけど。ライブラリーの中から、最初キレイなはずだったのに、気付くと『ものすごいことになってるな!』というのを早く見たいですよね。どこが中心だか全く誰にもわからないような状態に、wikiという特性でどんどん変わっていく面白さを見たいですね。



(取材・文:服部全宏(GO PUBLIC) 編集:蜂賀亨  撮影:谷本夏)



桑原茂一氏





プロフィール

桑原茂一
Moichi KUWAHARA
選曲家/プロデューサー/株式会社クラブキング代表

1973年より米国『ローリングストーン』日本版を創刊号から運営、
'77年『スネークマンショー』をプロデュースしYMOと共演、
同年『コムデギャルソン』のファッションショー選曲を開始する。
'82年原宿に日本で初のクラブ『ピテカントロプス』をオープン、
'88年フリーペーパー『dictionary』を創刊、
'96年東京SHIBUYA FMにて「club radio dictionary」を開始する。
'01年の911を機に発行された坂本龍一氏とsuspeaceが監修する『非戦』に参加したのをきっかけに、独自の世界観をコメディという切り口で表現する「コメディクラブキング(CCKing)」を展開。
現在、フリーペーパー/コミュニティラジオ/TV/携帯サイト/映像表現/コメディライブ、またそれらを統括するWEB「メディアクラブキング」をプロデュースし、LOVE&PEACEに生きるオルタナティブなメディアを目指し活動を続けている。

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