第1話 Webプロデューサーの役割 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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タイトル画像、第11回Webプロデューサー列伝 中村博久

ECサイト構築ソフト「Zen Cart」などオープンソースソフトウェアによるソリューションの提供、また、今年の春には「Twitter」のマッシュアップサービスである「ecoったー」「necoったー」サービスを開始するなど、新しい技術をWebサイトに積極的に取り入れてデベロップするWeb制作会社アークウェブ。今回はアークウェブのCMO(最高営業責任者)/Webプロデューサーである、中野 宗氏に、最新のWeb情報、Web2.0などについて話を伺った。

第1話 Webプロデューサーの役割

オープンソースに強く、Web2.0系に強いという会社



——最初にアークウェブという会社について教えてください。

中野●弊社はWebに特化した受託制作会社で、現在社員は12名です。案件の規模にもよりますが、基本的に社内で制作すべてをやることはありません。たとえばデザインではアート・ディレクションやグラフィック制作まではやり、残りの部分に関しては外部パートナーに任せたり、システムについては社内のSEがヒアリングや設計までをやり、実際にコーディングを行うのは外部パートナーにお願いしたりしています。どちらかというと積極的に大きい組織になろうとは考えていない会社ですね。

——それは、なぜでしょうか?

中野●以前、別の会社に関わったことがありまして、そこは現在とはまったく逆のスタイルでした。スタッフ数も多く、HTMLコーディングからプログラムまで全て社内でこなしていましたが、人が多ければ無理にでも仕事を取らなければならない。また変化が早い時代ですから、新しい動きにすばやくフィットしてくためには、組織が大きいのはデメリットでしかなく、結果として顧客への付加価値も提供しづらい。それよりは、そのときどきの要件に合わせて外部パートナーと組む方がいいと考えたからです。

——アークウェブならではの特徴とはなんでしょうか?

中野●弊社の特徴はオープンソース系のソリューションに明るく、またWeb2.0的なサービスの提案・構築能力があるということでしょうか。オープンソースに関してはZen Cartというアプリケーションをローカライズし高い評価をいただいています。

——Zen Cartというのはどんなアプリケーションなのですか?

中野●英語圏で早くから開発されていた、ECサイトを構築するためのオープンソースソフトウェアにosCommerceというものがあります、そこからブランチしたのがZen Cartです。オープンソースのプロジェクトでは、開発方針が分かれたりすると、ブランチといってよく分かれることがあるんですね。Zen CartはosCommerceとは違ったビジョンを持ったイギリスとアメリカのプログラマーたちによって作られたソフトウェアです。



——ローカライズしたきっかけは?

中野●僕をはじめとして、うちのスタッフは新しいアプリケーションが好きで、いろいろなものを早くから使ってみたりしています。たまたまこのZen Cartを見つけて、ヴィジョンや開発ロードマップがとても優れているし、これを日本語化したら多くの人の役にたつのではないかと思って、費用の多くは持ち出しというかたちでローカライズを行いました。日本語版を公開したところ、かなりの反響があって、現在では日本で200?300くらいのサイトがこれを使ってオンラインショップを構築しています。ですので、EC絡みのお仕事をいただくということもうちの会社では多いですね。しかし、正直なところ、そういったお仕事ばかりだとスキルがECサイト構築にだけ片寄ってしまうので、時にはお断りをさせていただいたりもしています。

——ECサイト以外にやりたいことはなにですか?

中野●もうひとつは、自社ブログで新しい情報を紹介したり、ARK-Web SandBox(お砂場)というWiki上でエンジニアが入手した情報を公開したりもしているので、AJAXなどの新しい技術を使ったUIや、Web2.0的なソーシャルネットワーキングサイトをつくりたいといった相談を受けることも多いですね。もちろんそれ以外に普通のWeb制作などもやらせていただいていますが、どちらかというと、Web2.0系のサイトの企画立案から構築までというのを特色としていますし、これからさらに進めていきたいですね。

お客さんと対等な関係が持てるWeb制作会社



——通常のWeb制作会社とは違うということですか?

中野●はい。お客さんといい関係性をつくりたいと考えると、誇れる分野をしっかり持つことが重要だと思っています。Web制作会社というのはたくさんありますし、その中でプライドを持って仕事をやっていきたいですから。受託制作会社がお客さんと対等な関係を築くためには、こちらの得意な分野、強みを明確にして、それを理解していただけるお客さんとだけ仕事をするというスタンスが必要だと思います。僕をはじめうちのスタッフというのは、Webで起きている新しいことが好きなスタッフが多くて、自分達で見つけた、あるいは使ってみて便利な新しいもので、なにかできないかなと常に考えています。できるだけそういった価値観を理解してくれるお客さんと仕事をしていきたいなと思っているんです。

——アークウェブのサイトでは現在の仕事状況が「お仕事対応状況」が公開されていて、とても興味深いのですが。

アークウェブのトップページ
左下には「お仕事対応状況」が





中野●あれには理由があって、うちをリスペクトしていただけるお客様の仕事を受けるために社内リソースの管理はきちんと行いたいんです、うちは基本的に残業や徹夜などを社員にさせたくないし、勉強の時間も取らせたい。ですので、キャパシティを超えたら素直にお断りするようにしています。うちのサイトを見た人からはほぼ間違いなく「ユニークだ」っていわれますね。(笑)

——Webプロデューサーの役割とはなにでしょう?

中野●MdNのWebプロデューサー講座に僕も講師として参加させていただいているのですが、そこではそれぞれのプロデューサーの方が自分の得意とする分野を担当しています。僕の担当は「技術」です。技術といっても、プロデューサーもプログラムをかけなければいけませんよという話でありません。例えば、北米で起きている面白いことや新しいことのベースには技術があり、それを咀嚼するためには技術への理解が欠かせないという意味です。この部分が新しくて、企業サイトに適用したらこうなるよとか、うまく翻訳をしてあげないといけないですよね。例えばお客さんから、こういうことをやりたんだけどなにか知っている?と言われたときに、ああ、それだったらこういう例がありますよとか、これとこれを繋げればこういった新しいことができますよとか。積極的に翻訳してあげられるような人がますます必要になってくると思うんですね。そういったことがこれからのWebプロデューサーの大きな役割だと思います。


(取材:蜂賀亨  撮影:谷本夏)




中野宗(なかのはじめ)

株式会社アークウェブの取締役副社長/CMO(最高営業責任者)。Webプロデューサー。

オープンソースのECサイト構築ソフトウェアの日本語化プロジェクトである「Zen-Cart.JP」の立ち上げ、Web制作者コミュニティ「WebSig24/7(WebSig 24/7)」のモデレーター、Web屋の“楽しい”社会貢献を志す「WebSigエコ&ピース」代表などを務める。最近ではTwitterのマッシュアップサービス「ecoったー」「necoったー」(いずれも自社サービス)の企画など、Webの新しいことにのめりこむ毎日

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