第4話 新しいことを取り入れるタイミングについて | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第4話 新しいことを取り入れるタイミングについて

2024.5.16 THU

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タイトル画像、第11回Webプロデューサー列伝 中村博久

ECサイト構築ソフト「Zen Cart」などオープンソースソフトウェアによるソリューションの提供、また、今年の春には「Twitter」のマッシュアップサービスである「ecoったー」「necoったー」サービスを開始するなど、新しい技術をWebサイトに積極的に取り入れてデベロップするWeb制作会社アークウェブ。今回はアークウェブのCMO(最高営業責任者)/Webプロデューサーである、中野 宗氏に、最新のWeb情報、Web2.0などについて話を伺った。

第4話 新しいことを取り入れるタイミングについて



新しいことをひたすら追いかける時期は終わったかな


——デザインの話になりますが、Webのデザインについてはどう考えますか?

中野●日々の業務のなかで、デザインのディレクションはアートディレクターに任せるということが多いです。ただ、要件を考え、競合サイトをみたり参考事例をみたりするなかで、当然超えなければならないデザインのレベルというのがあるわけで、その部分の刺激を与えることには力を注いでいます。あとは、優れたUIやUEの事例を見かけたらまめに共有しておく、などですね。
お客さんの要望によってデザインは変わってきますよね。例えば「うおがし銘茶」の場合には、オンラインで商品を買っていただくより、まずは店鋪に足を運んでほしいという顧客の強いニーズがあったので、そのためにはWebサイトでは店舗の写真を大きくみせて、ヴァーチャルで回遊しているような感じを与えるようにしよう、といったことです。

会社としては多くの顧客にCMSを導入していますが、いわゆるCMSっぽいデザインの払拭は結構前からのテーマです。RSS経由でサイト内外のデータを取り込む際など、作りこまれた画像文字とRSSを表示するデバイスフォントとでは、どうしても見栄えが違うし、CMS臭くなってしまう。そのあたり、今後は解決されていってほしいですね。FlashのsIFRみたいな動きなど期待しているんですが。

——中野さんの今後のヴィジョンをおしえていただけないでしょうか?

中野●以前は毎日ブログを書いていましたが、いまは、新しいことをひたすら追いかける時期というのは終わったかなと思っていて。自分なりに仮説をたてて、系統的に、追っかけていくべきものだけを深く追求していくようにしたいです。Twitterはインフラとして面白いと思うので引き続き情報収集はしていきますが。ちまたではセカンドライフとかメタバース系が流行っていますけど、僕はあまり興味がないですね。

新しいことの追っかけにばかり時間はかけられない、と強く思う理由のひとつは、社会貢献に関することをいろいろとやっていきたいなと思っているからです。「WebSig24/7(ウェブシグ・トゥウェンティーフォー・セブン)」というウェブ制作者団体のモデレーターをやっているんですが、今年、その分科会として「WebSigエコ&ピース」という活動をスタートしました。これはどういう団体かというと、大きな企業ではCSRや社会貢献活動の動きが当たり前になっていますが、Web制作会社はまだ、業界を統一する団体もなく、そういう活動も盛んであるとはいえません、そこで、有志が集まってスタンダードみたいなのをつくろうという団体です。今やっていることは、mixi上で情報共有をしたり、月一回勉強会をやって、社会にどんな問題があるとか、そしてどのように解決をしている人がいるのかといったことの勉強です。NPO、NGOのWebサイトの構築をボランディアでうけるなども試験的にやっていて、3年くらいかけて運動の母体を作りたい。現状、個人ベースでは賛同してくれる人は少なくないんですが、やがてWeb業界を、会社単位の活動まで含めて巻き込んでいきたいと思ってるんです。


新しいことには新しいなりの意味がある




——新しいことを取り入れるタイミングというのはあるのでしょうか?

中野●クライアントである企業さんは、新しいことが多すぎてわからないとか、いつどのタイミングで取り込めばいいのかわからないとよく言います。でも、新しいことを盛り込むことは、企業のビジネスゴールを達成するうえでプラスになるんだという点に注目すれば、新しいことへの取り組みを積極的にマネジメントしなければいけないわけですよね。そのためにはトレンドを定量的、定性的に捉えていかないといけないでしょうし。例えば、Ajaxという技術がありますが、国内でAjaxを使ってWebを構築している企業が現在どのくらいあるのか?業界で他社がやっているのかどうか?といったところを見た時に、業界で他の会社が全部やっているというのに、自分だけがやっていなければ、それは完全なマイナス要素ですよね。

それと同様に、新しいことを導入するタイミングに関しては、企業には期待されている役割があるわけで、たとえば斬新であることを期待されているのにタイミングをずらしてしまうと、ダサイって言われたりもするわけです。それはやはり不利益でしょう。そして、新しいことをやる以上は、新しいことをやってよかったねじゃなくて、それをやることによって一定の効果があるかどうかということ指標を決めてやっていかないといけないわけで。これからはそういった部分を意識していかないといけないですね。
いまだったらGoogle Gearsが出てきたり、アドビのAIRなどの新しい技術が出てきていますが、たとえばそういったものが自社に与えるインパクトをしっかりと見る必要がありますよね。


Web制作会社とか、Webプロデューサーの立場はいろいろあり得ると思うのです。別に新しいことをやらなくても、枯れた技術だけで成果をあげましょうという提案もあっていいと思いますし。ただ、僕はそういうタイプではないし、好きではないだけで。僕やうちの会社の持ち味を最大限にお客さんに提供するということを想定させていただくと、新しい技術を取り入れることの利点をお客さんに十分に説明できて、その活用のお手伝いをしますよっていえる立場でありたいですね。



右:中野さんが執筆を手掛けた「Web屋の本」には中野さんならではのアイデアが収録されている一冊




お客さんのなかには、担当者ご自身は新しいことがやりたいけど、なかなか上司を説得することができないという例もよくあります。そういうときには、顧客の企業内に入っていって、これからはこういう考えかたが必要ですよとか、新しいことを早い段階で取り入れた企業にはこういったメリットがでていますよ。やりませんか?と説得するお手伝いも最近では沢山しています。

Web2.0ブームは若干沈静化してきました。そこで最近の日本では、技術が新しいかどうかは関係なく、それが役に立つかどうかってところだけ注目しようっていう人がたくさんいます。しかし新しいことには新しいことなりの意味があるわけで、たとえばTwitterが登場したばかりのタイミングで、それにハマっている人達はいったいなにを楽しんでいるのかといった点をしっかりと見ていかないと、変わっていくものの本質がみえてこない。ブログだってはじめはビジネスには使えないって言っていた人たちが、ブログが普及してくると、「これからはブログです」っていったり。僕はそういうのはあまりピンときません。新しいものが出てきたら、タイミングをはかりながらもすばやくお客さんに提案できるような立場であるべきだと個人的には思っています。もちろん新しいことなりのリスクはありますけどね。




(取材:蜂賀亨  撮影 谷本夏)






中野宗(なかのはじめ)

株式会社アークウェブの取締役副社長/CMO(最高営業責任者)。Webプロデューサー。

オープンソースのECサイト構築ソフトウェアの日本語化プロジェクトである「Zen-Cart.JP」の立ち上げ、Web制作者コミュニティ「WebSig24/7(WebSig 24/7)」のモデレーター、Web屋の“楽しい”社会貢献を志す「WebSigエコ&ピース」代表などを務める。最近ではTwitterのマッシュアップサービス「ecoったー」「necoったー」(いずれも自社サービス)の企画など、Webの新しいことにのめりこむ毎日

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