第2話 色面を効果的に用いた広告 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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第1話に引き続き、野尻大作氏の仕事を紹介し、その制作過程における思考プロセスに迫る。第2話では、オリンパスのデジタル一眼レフカメラ「Eシリーズ」の広告ビジュアルに注目。色面やロゴを用いたブランディングについて紹介する。



第2話 色面を効果的に用いた広告


発売告知の広告であるとともに
ブランディング広告としても機能




──今回ご紹介いただけるのは「E-510」「E-410」などをはじめとする、オリンパスの「Eシリーズ」の広告ですね。


野尻●オリンパスのデジタル一眼レフカメラは、非常に小型で軽量なところが特長です。そのため、古くから自然を撮影するネイチャー系のフォトグラファーなどに支持されています。加えて、子どもを撮影する母親をはじめに、女性がデジタル一眼レフカメラを扱う機会も増えている背景を踏まえての企画になっています。


──広告ではそれらを素直に表現したビジュアルが用いられていますね。


野尻●「GO FIND YOUR WONDERS(発見の旅に出よう)」との大枠のテーマに基づいて制作が行われ、その象徴として、女優の宮崎あおいさんがカメラを持って、いろいろな土地を旅するシーンを表現しているのです。それがCMになったり、グラフィックになったり、ブログで展開されたりしています。「E-510」のグラフィックに用いている写真はモンゴルで撮影しました。


──写真もさることながら、これらの広告では、色面が非常に大胆に用いられていますね。


野尻●一般的には、せっかくモンゴルまで行って撮影しているのだから、もっと写真を大きく扱ったほうが良いのではないかと考えることもあるでしょう。しかし、これらの広告では、あえてオリンパスのカラーでもある青を大胆に見せるようにしています。交通広告などは、ほぼ青一色で構成されていますよ。


──そのような構成にしたのは、なぜでしょうか?


野尻●店頭などで競合他社の製品と競い合っていくわけですが、そのときに色やロゴを強調することで印象に残し、記憶させる狙いがあります。商品単発の広告であるとともに、「Eシリーズ」全体のブランディング広告としても機能する構造を作り上げているのです。


──なるほど。たしかに色面が主張していることによって、強烈なインパクトが残ります。


野尻●また、ビジュアルを見ると分かるように、背景のブルーには影が落ちていて、ややグラデーションがかっていますが、これはデータではなく撮影した「青」なのです。つまり、実際に青いバック紙の上に商品を置いて撮影しています。


──データ上で青を敷いて、切り抜きの画像を配置しているわけではないのですね。


野尻●データで作成したベタの青では、全体の空間として扱うためには弱いと考えたのです。青い背景だけでなく、「E」の文字が元になっているロゴも撮影したものなんですよ。


──すごい徹底ぶりですね。ロゴの中には青い影が入り込んでいますが、これはどのように実現されているのでしょうか?


野尻●ロゴの部分だけ乳白で透過していて、後ろからライティングをして撮影しています。


──あまり商品写真のサイズが大きくないのは、ブランディング広告としての役割を重視したからでしょうか。

野尻●このシリーズ広告は、プロダクトだけに焦点を当てるのではなく、「Eシリーズ」が持つバックグラウンドや世界観などを表現するものだったからです。ただ、たとえば駅構内に貼られるポスターなどでは、B0判1枚に商品写真のみを大きく掲載したりもしています。

──ブランド力が高まっていくことで、個別の商品が売れることにもつながるわけですね。

野尻●それに商品を表現することと、商品写真を大きくすることは必ずしもイコールではありません。たとえ商品を大きくレイアウトしなくても、結果として商品が正しく表現されていればいいわけです。重要なのは、その商品が表現されているか、表現されていないか、だと思うのです。
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)


次週、第3話は「機能性の高い商品カタログ」について伺います。こうご期待。



[プロフィール]
野尻大作(のじり・だいさく)
1975 年横浜生まれ。東海大学教養学部卒。デザイン事務所2社を経て1999年レマンプラス入社。2002年N.Y.ADC銀賞、04年JAGDA新人賞、 ショーモンポスターフェスティバル入選、05年第2回韓国国際ポスタービエンナーレ銅賞、06年ブルノ・グラフィックデザイン国際ビエンナーレThe Mayor of the City of Brno Award受賞。

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