第5回 Phase3 すぐに使える6つのプレゼンテーションテクニック - 思考するWebディレクション | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第5回 Phase3 すぐに使える6つのプレゼンテーションテクニック - 思考するWebディレクション

2024.5.14 TUE

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Phase 3 すぐに使える6つのプレゼンテーションテクニック

1. 話し方だけうまくても
良いプレゼンにはならない

「上手なプレゼン」というと、話し方のテクニックにだけ注目する人が多い。もちろん、話し方にこだわるのはまちがいではないが、話し方がうまいと感じるプレゼンには注意が必要だ。企画内容以前にその印象が際立ってしまうので、そこだけで良しあしが判断されてしまうおそれがある。うさんくさく感じてしまったり、落とし穴があるのではという疑いを抱かせる可能性もあるので注意しておきたい。本当に上手な話し方とは、冷静に判断できる余地が残されていて、企画内容がきちんと伝わってくるようなプレゼンだ。たとえば、読者の周りに「この人の話し方は安心できる」、「この人の話はいつも共感できる」という良い印象を感じたなら、その話し方を研究して吸収していくべきだ。逆に「この人はどこか信用できない」という悪い印象は、反面教師として見習おう【1】。

2. スピードとトーンを
使い分ける

プレゼンのマニュアルにとかく多いのは「ゆっくり聞き取りやすく話をするべし」という解説だが、鵜呑みにしてはいけない。TVに出演している話のうまいタレントなどは、大抵話す速度が速い。これはプレゼンにも共通しており、決められた時間の中にどれだけの情報を詰め込めるかが鍵になる。だから、ただゆっくりとした聞き取りやすい話し方だけではダメなのだ。では、どのように話すか?
そのポイントは抑揚のつけ方にある。プレゼンの導入部では全体の波長を合わせるため、極力ゆっくり話し始める。資料を見ながらの説明ではリズミカルに速く、そして相手の質問に答えるときは相手のテンポに合わせてスピードを調整するようにしよう。これにより単調さが抜け、洗練されたプレゼンができるようになる。  また、プレゼンでの話し方には声質も大事な要素のひとつだ。声質を使い分けることで「相手にとって聞き取りやすいトーン」で話すことができるのだが、実行するのはなかなか難しい。コツは、聞いている人たちの声質にかぶらないトーンで話すように心がけることだ。他人の声質と重なると、話し合いをしているお互い同士やほかの参加者にも伝わりにくくなって、内容が理解しづらく、衝突が生まれてしまう危険さえある。また、相手の声質より若干高めのトーンでしゃべることもポイントだ。こういった点は、TVの通販番組が参考になる。訴求力のある話し方というのは、そのままプレゼンに生かせるので参考にしてほしい。

3. クライアントに
あえて質問をさせる

「プレゼンをより完璧なものにしたい」と思うことはけっしてまちがいではないが、そうすると「スキ」がまったくないプレゼンになる傾向がある。しかし、プレゼンには「スキ」があることもまた重要だ。あえてクライアントからの質問の余地を残すことで、一方的なプレゼンの場にコミュニケーションが生まれる。一方的なプレゼンは美しいものにも思えるのだが、それではプレゼンする側の自己満足に終わってしまう。聞き手の立場からすると、自ら疑問を持って質問して回答を得ることで腑に落ちやすく、理解度も安心感も高められる【2】。また、配布資料の余白に聞き手が自ら回答を書き込むことで、のちのちその担当者が上司に伝達するにあたって、より説得力のある説明が可能になる。他人の言葉だけでまとめられた資料は伝えにくいが、自分の言葉でまとめた資料は伝えやすい。プレゼン準備を進めるときにわざと質問の余地をつくり、プレゼンの舞台にコミュニケーションを盛り込むことでプレゼンの質と成功率は高まっていく。

4. ビジュアルでの伝達は
強力な印象を与える

たとえばデザイン案を提案する際に、Microsoft PowerPointなどで作成したワイヤーフレームだけを見せる場面も多いと思う。それがサイトのレイアウトを表現しているものであったとしても、制作者目線の設計図であって、クライアントには伝わらないことが多い。逆に、ある程度完成イメージに近い状態のデザイン案を見せると、完成に近い分、イメージも伝わりやすくなる。クライアントは漠然としたイメージに対してはなかなか投資できないものだ。案件が確定する前にデザイン案をつくり込むのはコストがかかる。しかし、だからこそ力を入れることで他社との違いを打ち出すことも可能だ【3】。

5. 二案提示で選ばせて
より良い企画に磨き上げる

デザイン案などのビジュアルを提出するときのコツは、完璧なものをひとつだけ提示するのではなく、あえてふたつのバリエーションを見せることだ。人はひとつだけ案を見せられると、それが良いか悪いかで内容の判断をしようとする。だが、不思議なもので、ふたつ案を提示されると、どちらか良いほうを選び出そうとする。さらに検討を重ねていくと、結果的に二案の良い部分だけを抽出した案にまとまることが多くなる。一案だけで勝負するよりも前向きな進行ができるのだ。もちろん、ひとつよりもふたつのほうがコストもかかるが、そこはWebディレクターの腕の見せどころだ。ひとりのデザイナーに100%のデザイン案を上げさせるのではなく、タイプが異なるふたりのデザイナーに50%ずつのデザイン案を上げさせることで、より高いコストパフォーマンスを引き出せるようになる【4】。

6. プレゼンツールを活用し
空間をコントロールする

実際のプレゼンの舞台となる会議室と時間をどう使うかによっても大きく差が出る。ひとつの会議は60分前後に設定することが多い。だが60分もの間、説明だけに費やしていては、どれほど優れた企画内容でも退屈に感じてしまうだろう。人間が集中力をもって他人の話を聞けるのは10~20分程度が限界だ。単調なプレゼンを避けるため、たとえば、導入段階ではプロジェクターだけを用いて全体の概要を説明し、中盤では紙の資料を配布してコール&レスポンスで質問を出させながらメモをとってもらう。終盤は、クライアントを積極的にプレゼンに参加させるためにホワイトボードを使って、アイデアをどんどん書き込みながら参加者全体を巻き込んだスタイルへと持ち込む。退屈なプレゼンの場が、積極的に参加しやすい空間に変わるだろう。
プロジェクターは共通のタイミングで一斉に資料を見せられるツールで、配布資料は相手に自分の言葉でメモをとらせることができるツールだ。さらにホワイトボードは参加者全員の言葉を共有しながらまとめられるツールとの認識を持とう。それぞれのツールの長所を生かしたプレゼンを心がけることで、プレゼンの場をコントロールし、成功に導くことができる。どのようなツールでも自分らしい活用法で役割から見直し、工夫をしていくことで、飛躍的にわかりやすさと訴求力を向上させられるだろう。

direction5-3-1

【1】話し方は相手に与える印象で良しあしが決まる。
人との会話の中で良い印象を感じたならば積極的に取り入れていこう。
悪い印象ならば反面教師に

direction5-3-2

【2】あえてプレゼンの中に「スキ」を与え、質問の余地を残すことで相手とのコミュニケーションが生まれる。
また、クライアント自身が積極的に質問をしてくれることによって、プレゼンに対する理解度や安心感は高まる

direction5-3-3

【3】プロにはすぐイメージできることも、クライアントにはイメージしにくい。
漠然としたイメージなどでは判断しづらい

direction5-3-4

【4】一案だけだと、それが良いか悪いかだけで評価しようとしてしまう。
複数案の場合はどちらか良いほうを選ぼうとする心理が働く

Column Webディレクターのアイデアを広げるワンポイントコラム

【プレゼンにおける究極の勝利とは“戦わないこと”】

「競合プレゼン(コンペ)」とは、同業他社と戦うことを意味する。Webに限らず、だれかと競い、戦うことは勝ち負けにかかわらず、何らかの損害が発生するものだ。たとえば、競合により価格競争が生まれ、値下げ合戦に発展したり、コストに見合わない対応を迫られたりといったケースがある。ビジネスにはある程度のサービスはつきものだ。しかし、クライアント側だけが一方的に得をし続けるような構造では、いつまでも受注側が損をしていることになる。まずは、他社と競合せずに勝利することが重要だ。これは、関係者全員が「Win-Win」になり、ビジネスを前向きに発展させていくうえでの必須要素ともいえる。では、戦わずして勝つためにはどのようにすればよいか? その方法はただひとつ。クライアントと上手にコミュニケーションを図り、信頼関係を強固にしていくことだ。最初は競合プレゼンで受注を勝ち取るしかない。しかし、二度目以降の案件では、コンペディションで競わせる以上のメリットをクライアント側にいかに提案できるかが、Webディレクターにとって必要な能力になる。ビジネスにおける信頼という懸け橋は双方の関係を発展させ、ひいてはWebサイトが生み出す結果をも向上させることを知ろう。
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