着実に浸透したエレクトロニックダンスミュージックのWEBメディア、higher-frequency。そして、その配信サイトであるhrfq。両サイトのプロデューサーでもある株式会社サウンドグラフィックスの代表、中村英訓氏に話を伺った。
第3話 higher-frequencyから派生してきたもの
——higher-frequencyの運営というのは?
中村●現在は、機材メーカーさんとかレコード会社さんの出稿などで細々とやっていますが、やはりイメージ的には消費者金融のバナーとか載せられませんし、あるひとつのMP3プレイヤーのみに集約するのはどうなんだろう?とかいろんな議論があって。そこはあくまで、私としてみたら会社のブランドを作る時ぐらいの感じで、借り入れで全部まかなって運営している。それも半端じゃない金額なってしまっているんですが(笑)。
ただ、スタッフは今13人いるんですけれども、ハローワークに半年以上広告出しても誰も応募ないんですね。池尻大橋の小さな事務所で5〜6人でやっている会社に応募してくるような方はなかなかハローワークにはいないんですが、higher-frequencyにはものすごい応募があるんです。しかも、とてもみんな優秀なんです。おそらく普通のハローワークとかでやるよりは、こういったメディア力ブランド力を使って採用した人の方が、全然ランクが高い。トータルのアセット、資産として考えるととっくの昔にペイバックしてると思うんですよね。
実際、higer-frequencyがあったからこそhrfqという配信サイトをつくることができて、それがきっかけで海外では知名度が広がり、結果として現在弊社のメインでやってる仕事である外国のポップミュージックのソングライターの曲を輸入して、国内のレコード会社やマネージメントなどに曲を輸入して使ってもらうという仕事をしていますから。
——それは権利販売ということですか?
中村●イギリスにある我々のオフィスを経由して、曲の権利を買い付けてきて、アレンジとか歌詞は日本でやりますから、メロディーラインの輸入みたいな仕事なんですが、これもひとえにhrfqをやっていて、海外と1000を越えるレーベルとのつき合いがあってこそだと思います。信頼度が必要な仕事ですから。higer-frequencyとは、出稿もそんなに積極的に取りに行ってませんからビジネスとしてのバランスは悪いですが、人が集まることで人材は確保できていますし、クラブシーンで一番大きいメディアをやっている会社というところで信頼をいただいてますし、今後はそこをどんどん加速度的にやっていこうと思っています。
——配信ビジネスをはじめてからはどうでしょうか?
中村●ご存知のように日本の音楽配信の市場は世界的にも群を抜いて巨大であると言われていますが、その95%は携帯電話で、残り5%がPCという状況なんですよね。だから、その中でもニッチなクラブミュージックですから正直言って売り上げベースで言うとまだまだスタートしたばかりという感じです。
特にbeatportという大手がありますから、我々もそこと真っ向に勝負しようと考えていないです。「携帯はなぜなんでやらないんですか?」ってよく聞かれるのですが、正直言って携帯業界はまだまだ着うたというものが主流ですし、そういった点ではうちはまだ乗り遅れてるんです。ですから、「着うた」という制限のあるフォーマットの中に1000万〜2000万の資金を用意して後発で入っていくよりは、むしろ今起きているストリーミング配信だったり、あるいは将来的にますます活発化してくるはずのPCとの連動だったりに集中したほうがいいと思っています。電話料金のみでしか回収できなかったバリエーションもこれから当然増えて来るでしょうし、支払い形態も徐々に変わりつつありますし。今までは公式サイトでないと電話料金での回収を認めなかった各キャリアも、徐々に勝手サイトのパワーを見逃せなくなってきているいるし。
2006年8月頃から、そういった状況が業界内の仲間うちでも語られるようになってきたので、今慌てて参入するよりは、様子を見てその間に楽曲数と付き合っているレーベルの数だけどんどん増やそうと思ったんです。今許諾が取れている楽曲だけで8万曲〜9万曲があるのですが、実際にはまだ4万5千曲ぐらいしか上がってないのですが、年末までには10万曲にする予定です。年内にはヒップホップとラウンジ系のサイトも開けようとしていて、そこで1年〜1年半くらいで15万曲〜20万曲くらいの楽曲数を持っていれば、生意気な言い方ですけどもほっといてもビジネスになるんじゃないですかね。。
そういう形でやっているのが音楽配信の現状です。既存の着うたサイトを運営されている会社から、協業のお誘いもいくつか頂いていたりしますけど、ここが開けば赤字解消かなと思っています(笑)。
——ロンドンにオフィスを設立されたのは、そういうこともあってなのですか?
中村●そうですね。業界では世界的にbeatportという大きな存在があって、残りはどこもどんぐりの背比べなんですが、世界ランクではうちは4位らしいんです。ただ90パーセントぐらいはbeatportが持っていて残りの数パーセントをみんなで争っているランクなので全く意味をなさないのですが(笑)。ただ、そういったポジションを作りながらも、欧米では東洋のいいサイトよりも、地元のしょぼいサイトのほうにユーザーが流れていってしまう。それは人種的なものもあるし、普段クラブで顔を合わしてる人間の方の話を聞いてしまうというところもあるのでしょうけど、やはりアジアからの遠隔操作には限界があるのかなとも思ったんですね。もう一方で、それを使って楽曲の輸入という仕事がチャンスの一つとして偶然あったので、それではということで5月イギリスオフィスをたちあげました。
(取材・テキスト/服部全宏 撮影/谷本夏 編集/蜂賀亨)
中村●現在は、機材メーカーさんとかレコード会社さんの出稿などで細々とやっていますが、やはりイメージ的には消費者金融のバナーとか載せられませんし、あるひとつのMP3プレイヤーのみに集約するのはどうなんだろう?とかいろんな議論があって。そこはあくまで、私としてみたら会社のブランドを作る時ぐらいの感じで、借り入れで全部まかなって運営している。それも半端じゃない金額なってしまっているんですが(笑)。
ただ、スタッフは今13人いるんですけれども、ハローワークに半年以上広告出しても誰も応募ないんですね。池尻大橋の小さな事務所で5〜6人でやっている会社に応募してくるような方はなかなかハローワークにはいないんですが、higher-frequencyにはものすごい応募があるんです。しかも、とてもみんな優秀なんです。おそらく普通のハローワークとかでやるよりは、こういったメディア力ブランド力を使って採用した人の方が、全然ランクが高い。トータルのアセット、資産として考えるととっくの昔にペイバックしてると思うんですよね。
実際、higer-frequencyがあったからこそhrfqという配信サイトをつくることができて、それがきっかけで海外では知名度が広がり、結果として現在弊社のメインでやってる仕事である外国のポップミュージックのソングライターの曲を輸入して、国内のレコード会社やマネージメントなどに曲を輸入して使ってもらうという仕事をしていますから。
——それは権利販売ということですか?
中村●イギリスにある我々のオフィスを経由して、曲の権利を買い付けてきて、アレンジとか歌詞は日本でやりますから、メロディーラインの輸入みたいな仕事なんですが、これもひとえにhrfqをやっていて、海外と1000を越えるレーベルとのつき合いがあってこそだと思います。信頼度が必要な仕事ですから。higer-frequencyとは、出稿もそんなに積極的に取りに行ってませんからビジネスとしてのバランスは悪いですが、人が集まることで人材は確保できていますし、クラブシーンで一番大きいメディアをやっている会社というところで信頼をいただいてますし、今後はそこをどんどん加速度的にやっていこうと思っています。
——配信ビジネスをはじめてからはどうでしょうか?
中村●ご存知のように日本の音楽配信の市場は世界的にも群を抜いて巨大であると言われていますが、その95%は携帯電話で、残り5%がPCという状況なんですよね。だから、その中でもニッチなクラブミュージックですから正直言って売り上げベースで言うとまだまだスタートしたばかりという感じです。
特にbeatportという大手がありますから、我々もそこと真っ向に勝負しようと考えていないです。「携帯はなぜなんでやらないんですか?」ってよく聞かれるのですが、正直言って携帯業界はまだまだ着うたというものが主流ですし、そういった点ではうちはまだ乗り遅れてるんです。ですから、「着うた」という制限のあるフォーマットの中に1000万〜2000万の資金を用意して後発で入っていくよりは、むしろ今起きているストリーミング配信だったり、あるいは将来的にますます活発化してくるはずのPCとの連動だったりに集中したほうがいいと思っています。電話料金のみでしか回収できなかったバリエーションもこれから当然増えて来るでしょうし、支払い形態も徐々に変わりつつありますし。今までは公式サイトでないと電話料金での回収を認めなかった各キャリアも、徐々に勝手サイトのパワーを見逃せなくなってきているいるし。
2006年8月頃から、そういった状況が業界内の仲間うちでも語られるようになってきたので、今慌てて参入するよりは、様子を見てその間に楽曲数と付き合っているレーベルの数だけどんどん増やそうと思ったんです。今許諾が取れている楽曲だけで8万曲〜9万曲があるのですが、実際にはまだ4万5千曲ぐらいしか上がってないのですが、年末までには10万曲にする予定です。年内にはヒップホップとラウンジ系のサイトも開けようとしていて、そこで1年〜1年半くらいで15万曲〜20万曲くらいの楽曲数を持っていれば、生意気な言い方ですけどもほっといてもビジネスになるんじゃないですかね。。
そういう形でやっているのが音楽配信の現状です。既存の着うたサイトを運営されている会社から、協業のお誘いもいくつか頂いていたりしますけど、ここが開けば赤字解消かなと思っています(笑)。
——ロンドンにオフィスを設立されたのは、そういうこともあってなのですか?
中村●そうですね。業界では世界的にbeatportという大きな存在があって、残りはどこもどんぐりの背比べなんですが、世界ランクではうちは4位らしいんです。ただ90パーセントぐらいはbeatportが持っていて残りの数パーセントをみんなで争っているランクなので全く意味をなさないのですが(笑)。ただ、そういったポジションを作りながらも、欧米では東洋のいいサイトよりも、地元のしょぼいサイトのほうにユーザーが流れていってしまう。それは人種的なものもあるし、普段クラブで顔を合わしてる人間の方の話を聞いてしまうというところもあるのでしょうけど、やはりアジアからの遠隔操作には限界があるのかなとも思ったんですね。もう一方で、それを使って楽曲の輸入という仕事がチャンスの一つとして偶然あったので、それではということで5月イギリスオフィスをたちあげました。
(取材・テキスト/服部全宏 撮影/谷本夏 編集/蜂賀亨)
中村英訓 株式会社サウンドグラフィックス 代表取締役 プロフィール 1967年岡山県生まれ。大学卒業後、東京銀行に入行。4年間の勤務の後、音楽好きが講じてワーナーミュージック・ジャパンに転職。その後、約10年間にわたって、会長室、編成部など、主に制作部門を側面支援する部門を歴任する。'03年に新しいエンターテイメント・ビジネスのあり方を追求するために(株)サウンドグラフィックスを設立。印刷・Web・音楽配信・音楽出版業務などを事業の中心にすえながら活動している。現在5期目 |