第4話 技術とアイデア、どっちが大事? | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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いま、破竹の勢いで広がるWeb広告界。その最前線で活躍する中村洋基さん(株式会社電通)と佐野勝彦さん(株式会社博報堂アイ・スタジオ)が、さきごろ開催されたアドビ システムズ主催のイベントに講師として登場。今回の「ザ・対談」は、イベント終了後のお二人に話をうかがった。互いの制作スタイル、ルーツ、発想と日常の裏話、Flash、インタラクティブ広告の現在と未来……気鋭のWebクリエイターによる、ざっくばらんなトーク・セッションをお楽しみください。


第4話 技術とアイデア、どっちが大事?



中村洋基さん(左)と、佐野勝彦さん(右)中村洋基さん(左)と、佐野勝彦さん(右)


中村洋基さん(左)と、佐野勝彦さん(右)

好きだからこそ徹夜勝負!



──なんにせよ、スピードを求められる世界ですよね。

佐野●ま、そうですね。そういう面も。

──生活の面でも。

佐野●いや、大変ですよ。

中村●みんな、そうなのではないですか。梅津(岳城)さんとか、Flash上達する方法は「寝ないこと」って書いてた(笑)。

佐野●確かに間違いじゃない。

中村●もともと好きだからできるんですよ。僕も小学校のとき、PCルームがちょうどできて、Basicをいじって簡単なゲーム作ってばかりいた。そのころは、それを仕事にしたいなんて微塵も思わなかったけど、いま考えるとすごく好きだったんでしょうね。

──夢中になれるのがベスト?

中村●ええ。最初に「技術よりアイデア」という話をしましたが、だからこそ技術を知ることがが必要で。

佐野●たとえばFlashを使うことは、誰でもある程度できるんですね。でも、そこから使いこなすようになるには、それこそほんと徹夜勝負。サンプルをもとにノウハウを学んでいったその先、いわゆる説明書に載っていない部分を作れるかどうか……そこがフラッシャーとしてできる、できないの境目で。

中村●いまは昔と違ってWebの制作プロダクションがいっぱいあるんだから、結局、作らなければならない環境に入ってしまえばいいんですよね。

佐野●しごかれて。

中村●ええ。大学3〜4年のとき、デジタルステージという会社にいたのですが、徹夜続きで疲れたから一旦帰宅しようとしたんです。そのほうが残りの仕事もスピードアップすると思って。そうしたら「なんでそんなこと言うのか!」と怒鳴られた。「そういうこと言う、お前の性根がダメなんだよ」と(笑)。

佐野●ハハハ。

中村●そのときは、そういう言い方しなくても……と思ったけれど、彼らの心中がどういう状況だったか。ソフト開発とかしていたので、一番パンパンな状態だったんですね。いま自分が責任を持って作り出す側になると、部下はともかく、自分は「徹夜してでも世に出した方が面白いからやるぜ!」という気合いのほどがあって。それは、そこで養われたかな。

佐野●しかし、僕らサラリーマンだから、徹夜って話題は結構困る(笑)。

中村●ああ、言うと怒られるか。……いや、徹夜してますよ(笑)。


RIGHT TO PLAY


中村さんの仕事より「RIGHT TO PLAY
カンヌ国際広告祭2007 ヤングクリエイティブコンペティション
銀賞を受賞した、中村さんと鎌田貴史(spfdesign)さんの共作バナー。
世界各国から28歳以下の代表クリエイター2名が集まり、
提示された共通テーマのバナーを24時間以内に制作して競い合った。
今年のクライアントは、紛争・貧困地区に暮らす子どもたちを
スポーツで支援するNPO団体



10年後、どうなっているか?



──現在、抱えてる案件の数は?

佐野●時期ときどきで変わるし、自分がどこまで管理するかで、なんとも言えないけど。

中村●終わりがあるようで、バーンとローンチして終わりじゃない。継続的に抱えなければならないし。

佐野●いま盛り上がってるのは3つですね。

中村●僕は佐野さんよりもディレクション領域にいなくてはならないので、数は回さざるをえない。でも、熱いのは5〜6ぐらいで、継続的なものを含めたら15ぐらい。

佐野●おー、僕には無理ですね。混乱しちゃう(笑)。

中村●僕もそうですよ。おっさんになってもできるか、非常に不安です。単純に自分が面白いと思えるものがあったら続けていけるけど……たとえば最近、携帯のキーを打つ方が早い子っているじゃないですか。僕は一生キーボードのほうが早いし、携帯でSNSをやる人とも気持ちのズレがある。食わず嫌いなだけで、やってみれば受容できるかもですが、全然相容れないものになった場合は、たぶん辛い。いまやっていることって、好きなことをそのまま仕事にしただけですから。

──でも、どんな媒体も年齢相応の層があるから、そこに合わせて。

佐野●しかし10年後……考えたことないな。

中村●超管理職?(笑)

佐野●いやいや。僕は専門職の道が理想で。

──作るのが好きだからですか?

佐野●そうですね。ディレクションも含めて。でも、会社にはチームで仕事をしている後輩たちがいて、最近、下の人たちに徐々に仕事を任せられるようになって。10年後、どういうスタイルになっているかわかりませんが、一人ではなくみんなが育っていくってことも今後考えないといけないかと。そのへんは、ちょっと自覚してます。


SHARP「AQUOS VISION」SHARP「AQUOS VISION」

佐野さんの仕事より、SHARP「AQUOS VISION
オープンしたばかりの、液晶テレビ「アクオス」インターナショナル・サイト。
アメリカ、イギリス、スペイン、ドイツ、フランス、イタリア版に加え、近々日本語バージョンも追加される予定

次週、第5話は「Web広告、今後の課題」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:谷本 夏 取材協力:アドビ システムズ株式会社)


*中村洋基さん、佐野勝彦さん両氏が講師を務めたイベント「Adobe Creative Suite 3 Web Edition TOUR−Deep Dive
キモチヨクハタラク!?」のレポートは、こちらまで。


中村洋基さん

[プロフィール]
なかむら・ひろき●1979年生まれ。株式会社電通IC局に勤務。アート・ディレクター/プログラマー。大学在学中よりWeb制作に携わり、ニッポン放送を経て、2002年に電通入社。以降、Flashディレクション、バナー/サイト制作業務に携わる。カンヌ国際広告賞金賞をはじめ、ロンドン国際広告賞グランプリなど、国内外で多くの受賞歴をもつ。


佐野勝彦さん

さの・かつひこ●1976年生まれ。株式会社博報堂アイ・スタジオに勤務。クリエイティブ・ディレクター/アート・ディレクター。企画、デザインからFlashまでトータルにサイト制作を手がける。Cannes Lions 銅賞、NY Fest.銀賞、東京インタラクティブ・アド・アワード金賞など、国内外のアワードを多数受賞。個人での作品制作を行い、文化庁メディア芸術祭審査員推薦作にも選出されている。http://www.30k2.com


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