第3話 アートから広がるデザイン | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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様々なジャンルで活躍するデザイナーの来歴をたどるシリーズ。今回はグラフィックデザイナーの仕事と並行しながら、美術作家としても活動を展開する鈴木真吾さんを取材し、紆余曲折の学生時代から今日までの足跡をたどります


第3話 アートから広がるデザイン



鈴木真吾さん

初めてページ物デザインを担当した「秋葉原TV」ドキュメントブックを手にする鈴木真吾さん


仕事を通してデザインを学ぶ



──コマンドNの立ち上げの翌年、1999年に映像ユニット「√R」も結成してますね。

鈴木●きっかけは「秋葉原TV」という展覧会をコマンドNが企画したときです。秋葉原の街中を使って、野外ビデオインスタレーションを開催したのですが、そのとき僕と戸澤徹さん、櫻井たかあきさんの3人で一緒に映像作品を作って出品しました。

──当時の秋葉原は、まだ“電脳タウン”的なイメージでしたよね?

鈴木●ええ。いまオタクの聖地みたいな言われ方をされていますが、その頃は昔ながらの電気街として華やかで、店頭にものすごい数のモニタが並んでいる。そこで映し出されているのはテレビ放送だったり、お店の宣伝だったりするわけですが、オリジナルのビデオアートを流すことによって、街の風景を変えてしまおうというプロジェクトでした。

──プロジェクトのドキュメントブックも鈴木さんが手がけてますね。

鈴木●いま見るとひどい作りですね(笑)。秋葉原の猥雑な雰囲気を再現しようと、わざとゴチャゴチャな見せ方にしたのですが……僕が初めてページ物をデザインしたカタログです。まだIllustratorの使い方もろくにわかっていない時期で、1ページずつ作ってQuarkXPressに貼り付けてました。当初はまったく手探りの状態でしたが、第2回、第3回と重ねるうちに、プログラムもドキュメントブックもまともになったかも(笑)。

──アートの活動がメインで、デザインの仕事はそうしたところから付属していったという感じですか?

鈴木●ええ。その頃から段々、グラフィックの仕事が増えてきましたが、やっぱりアート関係の仕事が多かったですね。展覧会のチラシだったり、カタログだったり。そのうち知り合いのデザイナーからMdNを紹介していただいて、本誌の作例を作ったり、そこから書籍の装幀や執筆の仕事が派生していきました。

──積極的にデザインもやっていこうという意識も?

鈴木●うーん……でも、ガツガツやろうとすると、逆に自分の作品が作れなくなっていくので、その案配が難しい。デザインも仕事をやりながら覚えて、つねに勉強みたいな感覚でしたね。


秋葉原TV プログラム秋葉原TV ドキュメントブック 写真:木奥惠三 デザイン:鈴木真吾秋葉原TV2 ドキュメントブック

秋葉原TV2 プログラム秋葉原TV3 プログラム
鈴木さんの仕事より「秋葉原TV」関連のデザイン
上左:第1回プログラム(1999年2月)
上中:同ドキュメントブック(1999年10月)
上右:秋葉原TV2 ドキュメントブック(2000年8月)
下左:秋葉原TV2 プログラム(2000年3月)
下右:秋葉原TV3 プログラム(2002年3月)

copyright commandN/無断転載・複製を禁じます



忙しいときとそうじゃないときが極端



──コマンドNは現在、神田のプロジェクトスペース「KANDADA」が拠点になっていますね。

鈴木●神田の老舗印刷会社、精興社さんの1階倉庫をリノベーションして、2005年9月にオープンしました。やはり、自分たちのギャラリーがあると活動が活発になります。コマンドNも来年、結成から10年になりますが、最初はみんなでお金出し合って共同の事務所を作り、ギャラリーも車一台分の小さなスペースを借りていたんです。いまは自分たちが思ったことをすぐ形にできる場がある一方、そこを維持する金銭的な面も大変ではありますが。

──鈴木さんはコマンドNにおいて、どのような役割なのですか?

鈴木●現在はWeb以外、フライヤーなどの紙モノのデザインは、ほとんど僕が手がけています。

──自身のアート活動もできるし、グラフィックデザイナーとしても関わりながら。

鈴木●そうですね。

──デザイン業務として名乗っている「magnet design」は一人で?

鈴木●はい。自宅でやっています。フリーなので、いろんな仕事が舞い込んでくるところは楽しいですね。新しい案件ばかりで、そのたび勉強になる。ただ、なかなか安定しないところもあるので……

──それはみんな、フリーランスは一緒ですよ。

鈴木●忙しいときとそうじゃないときが極端なんですよね。忙しいときは「なんでこんなに重なるんだ」ってぐらい重なるし、暇なときは一ヶ月ぐらい何もなかったりするし。これで生きていけるのか?って(笑)。

──Webのデザインを手がけることは?

鈴木●以前、プログラマの方と一緒にやっていました。僕が絵だけ作って、HTMLは任せていたんです。でも、いまはやってません。ちょっとついていけない……というか、あまり性に合わないのかもれない。だから、いまは基本的には紙モノがメインです。


「project collective commandN」展フライヤー 写真:中村政人 デザイン:鈴木真吾

鈴木さんの仕事より、コマンドN主宰のプロジェクトスペース「KANDADA」で開催された
オープニング展「project collective commandN」のフライヤー(写真:中村政人/
2005年9月
copyright commandN/無断転載・複製を禁じます
次週、第4話は「アートもデザインも経験が大事」についてうかがいます。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)


鈴木真吾さん

[プロフィール]

すずき・しんご●1966年神奈川県生まれ。グラフィックデザイナー。桑沢デザイン研究所中退後、多摩美術大学デザイン学科グラフィックデザイン専攻卒業。98年よりコンテンポラリーアートの制作集団「commandN」に参加。99年より映像制作ユニット「√R」としても活動。

http://www.magnet-design.net




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