第2話 “実務経験ナシ”で飛び込んだWeb制作の世界 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第2話 “実務経験ナシ”で飛び込んだWeb制作の世界

2024.5.18 SAT

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成功を勝ち取れ!異業種からの挑戦

第3回 株式会社ラナデザインアソシエイツ 児玉温子氏の場合


株式会社ラナデザインアソシエイツのFlashクリエイター・リーダーの児玉温子氏は、もともとシステムエンジニアの出身だ。折しも2000年問題が懸念されていた時期に、金融機関のシステムを手がける会社で対応に追われていたという。その後「よりインタラクティブな制作をしたい」という思いにかられ、転職を決意。一見、おっとりとした雰囲気の彼女だが、仕事の話を伺っていると、かなりハードな環境を乗り越えてきた様子。彼女のパワーの源はどこにあるのか──。

第2話 “実務経験ナシ”で飛び込んだWeb制作の世界

──無事退院後、独学で学んだWeb制作の技術をもって、晴れて制作会社に転職されたわけですが……実務経験はなかったんですよね。
児玉●そうですね。未経験での採用でした。デザイナーとして初めて入社した会社は大手広告代理店から受ける仕事の多い制作会社でした。最初はデザイナーだったんですけれども、Flashの仕事が多くなって、それをメインでやるようになったんです。その後、2年目くらいからディレクター職とFlashクリエイターを兼任するようになりました。

──ちなみにデザインの勉強をされたことは?
児玉●正式に学校へ通っての経験はありません。ただ、システム会社で働いている時にデッサンをちょっと習いに行っていました。あとは3Dの講義に出席したこともありましたが、本来のSEの仕事が忙しかったり、当時の3Dソフトが高価だったという理由もあって、なかなか勉強が進まなかったところで……ちょうどWebへの興味の方が強くなっていったんです。

──FlashもHTMLも独学で習得し、後は仕事をしながら学んでいったという感じでしょうか。
児玉●ほぼ全てのプログラムの基礎となるアルゴリズムの思考を習得していたので、独学ですがFlashのActionScriptは親しみやすかったですね。HTMLは実務で必要になりそうな簡単なものだけ独学で習得しました。HTMLはユーザーがソースを見ることができるので、いざとなったらネット上を探せばいいと考えていたんですね、でも、実際に実務についてすぐの頃は、いざというときになかなか目当てのソースをすぐに探せなかったりして、四苦八苦していたときもありました。

──それにしてもディレクター職との兼任となると、当時はかなり忙しい状況だったのではないでしょうか。
児玉●一週間お風呂に入れないようなことがあったり……半月に一度しか家に帰れないときもありましたね(笑)。会社に仮眠室があって、そこで寝泊まりしているような状況でした。ディレクター職をやっていると昼間打ち合わせに行くので時間がとられてしまい、夜中にFlashを制作しなくてはいけなかったりするんですよ。

──それは相当ハードな生活でしたね……。
児玉●そうですね。でも、システム会社にいた時はシステム要件やシステム設計、プログラム設計など、とにかく多くの工程を終えた後、何パターンものテストが続き、結局リリースするのが何ヵ月後、何年後というケースも少なくなかったんです。その点、Webの場合は作ったらすぐに確認でき、個人でテストもできる。さらにWebは世界中のネットユーザーが視聴者になりえるし、世界のどこからでも見ようと思えば見られる、それが魅力だなと思いました。システムを扱っている時は、開発しているシステムの内容自体が複雑で社内の人にさえ理解してもらえないことが多かったんですが、Flashやデザインの場合は自分が制作したものが明確で、同僚にはもちろんWeb制作に関わりのない人にも理解してもらえるのが嬉しい。……自分の仕事の存在感が実感できる部分が多いですね。前職ではFlashクリエイターの人数が少なかったこともあって、自分のスキルとセンスが多くの案件で求められていたので、当時のハードな生活でもそれ以上のモチベーションを保てたんですね……きっと(笑)。

──そんなハードな会社で4年間も! 見かけによらず、相当タフでいらっしゃるんですね。
児玉●女性として扱われていない感じでしたね。週に何度か打ち合わせで顔を合わせる他社の担当の方には「また同じ服だね」とよく言われました(笑)。ディレクター職ではWebサイト制作だけでなく、イベントのパネル展示の進行なども行っていました。

──かなり鍛えられた部分もあったのではないでしょうか。
児玉●そうですね。そんな中で当時、自分が担当したオールFlashのサイトが『MdN』の誌面で、年間ベストに選ばれていたことがありまして……広告代理店の担当の方自身もかなり意外だったらしいんですが(笑)、すごく嬉しかったですね。

(取材・文:草野恵子  撮影:栗栖誠紀)

株式会社ラナデザインアソシエイツ
http://www.ranadesign.com/
1996年に創立、インターネット黎明期から数多くのWebサイトを手がけてきたラナデザインアソシエイツ。立ち上げから運営までのトータルプロデュースを得意とし、ソニーや資生堂、ユニリーバ・ジャパンなどのブランドサイトを数多く手がけている。これまでに東京インタラクティブ・アド・アワード、The New York Festivals 、LONDON INTERNATIONAL ADVERTISING AWARDSなど数々の賞に輝く。つい先日も、同社が手がけたウォーターフォード・ウェッジウッド・ジャパンのサイトが「2007グッドデザイン賞」に選定されるという快挙を成し遂げたばかり。



次週は「第3話 Flashに専念できるような環境を探して——」についてお届けします。

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