第2話 人を動かし、仕事が回る | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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Webコンテンツの制作を主軸に、ワークショップなど教育事業にも力を入れている株式会社ロクナナ。フリーランス制作グループとしての出立から11年、Web黎明期から現在にかけて「目的なく舟を進めてきた」と代表取締役の上田キミヒロさんは言う。そのオモテとウラに迫るべく、同社役員でありFlashアニメーターとして名高いA.e.Suck(エイサク)さんにも参加いただき、制作会社探訪「ロクナナ」編をお送りしよう。


第2話 人を動かし、仕事が回る



上田キミヒロさん(右)とA.e.Suckさん(左)


上田キミヒロさん(右)とA.e.Suckさん(左)

「ロクナナ」命名の由来



──上田さんのロクナナ以前は?

上田●最初はCD-ROMを作ってまして。Lingoという言語があって、それを書いていたんです。で、いまいち会社に所属したことがなくて、学生の頃からいろんなところで一人でやってて。そうこうしているうちに「インターネットというものが始まったらしい」という話になって、そこではHTMLという言語が動いている……と。仕事先で「それ書けるか?」と聞かれて「できます」と返事したんです。昔からそうなのですが、できないことを「できる」と言っちゃう癖があるんですよね(笑)。

──で、どうしたんですか?

上田●HTMLを書ける人を探してきて「ちょっと教えてよ」とか「ちょっとお願い」とか言って頼んで。そうやって、HTMLできる人、デザインできる人、音楽できる人……いろんな人を見つけていって、仕事を動かしていたんですね。そのうち、多くのフリーの人と仕事し合う状態になり、どんどんインターネットの仕事ばかりになってきたんです。

──ところで、聞き忘れてましたが「ロクナナ」の意味は?

上田●ああ……何にしておきましょうか?(笑)

A.e.Suck●え? 俺は「67年生まれだから」って聞いたぞ。

上田●いやいや、あれはひとつのネタなんですよ。

A.e.Suck●なんだ! ずっと信じてたよ(笑)。

上田●もともと、うちのアートディレクターの竹中が個人で使っていた屋号だったんです。フォルクスワーゲンの67年モデル、ビートルというタイプ1が好きで、ワーゲンマニアの中では「ロクナナ」と呼ばれている。というところから竹中がつけて、当時はビートル のアイコンとかあったんですよ(笑)。

A.e.Suck●へぇー。知らなかった(笑)。

上田●彼と一緒に仕事している中で、場所を借りて会社にしようとなったときに「名前ちょうだい」って。語呂もいいし、数字だし、なんの意味だかよくわからないし。

──こうやって訊ねられるし。

上田●ええ。僕自身は車に詳しくなくて、その車知らないんですけど(笑)。


上田キミヒロさん
 ロクナナ創始から10年余りを経た上田さん。
 取り巻く制作環境もだいぶ変わってきましたが……
 「確かに環境とかは変わりましたが、やってることは変わっていない。
 たとえばFlash
もバージョンアップを重ねていますが、
 コアな描画部分は
ほとんど一緒ですからね。
 あと、エイサクさんから案件の絵コンテをもらうとき、
 いまだに手で描いたものをスキャンして、
 デジタルで作った台詞表に貼ってもらったり……
 アナログで地道な作業、多いですよ」




常に「人が先」という発想



──現在の制作業務は、Web関係が何割ぐらいですか?

上田●半分ちょいですね。どうしてもゴーストでやる仕事が多いので、オモテに出せる事例が少なくて……そのへん、あまり選り好みをしないので(笑)。

──制作のほうにエイサクさんも関わることも?

A.e.Suck●ありますよ。結構、やってます。

上田●いま、まさに進行中の案件があって。社名は言えませんが、Flashアニメーションがメインに流れるコンテンツ。

──広告系が多いですか?

上田●いや、アドよりもコーポレートのリニューアルのほうが多い。今年は名前出せないですが、某大手企業の大リニューアルの裏側をやってました。ついこの間、一通り終わったばかりで。

──全部、社内で?

上田●企画は外部ですが、技術的な面はこちらでやりました。


 オモテに出せるロクナナの制作事例より「お豆腐狂言 茂山千五郎家
 Webサイト。一門の茂山茂氏と上田さんが同級生で、その繋がりから
 リニューアルを担った。古典芸能の“お堅い”イメージを持たれやすい
 狂言の世界だが、一般大衆の娯楽として「観て・笑って楽しむ」を
 アピールする茂山家。その姿勢と活動を、
 ロクナナらしいコンテンポラリーな風合いで表現している











──規模は小さい(従業員数14名)ですが、精鋭が集っているという印象が……

上田●そうだと思います。そうであって欲しい(笑)。いま、一番下のスタッフが24歳で……あ! 今度入ってくるのが奇跡の新卒、19歳ですよ。

A.e.Suck●新卒なんだ!

上田●専門学校卒で、2月に来ます。しかし19歳って(笑)。

A.e.Suck●若いねぇ(笑)。

──上田さんが76年生まれ、エイサクさんが60年生まれで、会社としての年齢的な幅もだいぶ……

A.e.Suck●幅広くなったね。19歳だもんな。

上田●ええ。その子はCSSマスターで、うちの河内(正紀)くんのファンなんです。この間、少しインターンで来てて「気に入ったら来れば」と話をして。

──割と門戸は広く開けて?

上田●ええ。基本的には「来るもの拒まず、去る者は追わず」で。

──制作面で「足りないな」と思うところは?

上田●業務的には安定したい(笑)。どうしても制作が主軸だと、車輪が大きくなっただけで自転車操業には変わりないですから。なかなか難しいものがある。かといって、更新案件を一切受け付けないことにしているんですね。更新をやると、どうしてもスキルが上がらないんですから。

──人員的に、こんな人がいたら……というのは?

上田●うーん……発想が逆なんですよね。こういう人がいるから、こういう仕事をやろうという態勢。たとえばJavascriptが大好きで得意という子が来たから、Javascriptの案件を取ろう。写真家が社内にいるから、写真の仕事を取っていこう……と。常に人が先。昔からそうでしたから。


A.e.Suckさん  アニメーターは基本的に「一匹狼」と言うエイサクさん。
 「アニメーションって普通は“班”で作りますが、みんなプライド高いし、
 俺が一番だって思っているから、結構一匹狼的な人が多いんです。
 でも複数話を制作するシリーズものなどでは、
 一匹狼たちとチームを組みます。群れないと仕事が回らないからね」
 では、腕に自信がある人はエイサクさんの門を叩けば……
 「もちろんチャンスもあると思います。ただ俺、厳しいよ(笑)」










次週、第3話は「好きなことをお金にするには」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)



上田キミヒロさん

[プロフィール]
うえだ・きみひろ●株式会社ロクナナ代表取締役社長、プロデューサー/ディレクター。1976年京都生まれ。CD-ROM制作、Director講師などを経て、Webコンテンツ制作を開始。96年にフリーランス制作グループ「ロクナナ」を発足、2001年に法人化。03年、株式会社となるとともに「ロクナナワークショップ」を開講。
http://rokunana.com/


A.e.Suckさん

えーいーさっく●Flashアニメーター/株式会社ロクナナ取締役。1960年名古屋生まれ。アニメーターとして多くのTV・劇場用アニメに携わった後、1997年からFlashでのアニメ制作に移行。セルアニメ技法を取り入れたFlashアニメーションを専門に制作している。1999年、Flashアニメーション制作プロダクション「ダイナミックトゥーン」を設立。

http://ae-suck.com



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