第3話 好きなことをお金にするには | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-
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Webコンテンツの制作を主軸に、ワークショップなど教育事業にも力を入れている株式会社ロクナナ。フリーランス制作グループとしての出立から11年、Web黎明期から現在にかけて「目的なく舟を進めてきた」と代表取締役の上田キミヒロさんは言う。そのオモテとウラに迫るべく、同社役員でありFlashアニメーターとして名高いA.e.Suck(エイサク)さんにも参加いただき、制作会社探訪「ロクナナ」編をお送りしよう。


第3話 好きなことをお金にするには



ロクナナ社内風景

ロクナナ社内風景(お昼休みで、閑散としてますが……)



仕事は「終わらせる」のが一番大変



──上田さん、自分のことを「究極の裏方」と呼んでいますね。

上田●基本、自分はクリエイターではないと思ってますから。ゼロからイチを作る人のほうが偉いんです。その力をまとめて、サンからヨンにするっていうのが好きで。自分はそこを担って、作る人たちには、作ることを満喫してもらおう……と。だって、好きなことをやってお金がもらえるの、一番ですよね?

A.e.Suck●そりゃあ、ねぇ(笑)。

上田●それが一番恵まれた状況だと思うんです。で、そういう人が増えるといいなというのは常にある。そうなるために、自分はどう動こうか……と。まあ、基本的には雑用係ですけど(笑)。

A.e.Suck●でも、仕事の進め方とか回し方、うまいよね。

上田●ありがとうございます。

A.e.Suck●「こんなの終わるのかよ!」っていう仕事も、なんとなく終わってて。できちゃうんだよね。そういう面では結構、信頼できる。

上田●仕事、終わらせるのが一番大変ですから。

──Webディレクターとは「人の話を聞き、人を動かし、案件を終わらせる」のが仕事だとも書いてますね。

上田●そう。仕事始めるのは、誰でもできる。でも、ちゃんと納品してお金もらうのは難しいことですから。そこは大事に思ってます。

──割とマネージャー的な……

A.e.Suck●あ、マネージャーだね。安心して仕事できる。

上田●結局、クリエイター自身にお金のことを考えてほしくないんです。そっちは僕が勝手に考えるので、作ることが楽しくなるようにやっててくれ……と。どうにかしてお金にしてくるからって発想。

A.e.Suck●頼もしいね(笑)。

上田●言うと、かっこいいですね……よくわからない仕事を持ってきますけど(笑)。


『A.e.SuckのFlashアニメーション講座 絵コンテ編+作画編』パッケージ
『A.e.SuckのFlashアニメーション講座』より『A.e.SuckのFlashアニメーション講座』より

ロクナナ製作による『A.e.SuckのFlashアニメーション講座 絵コンテ編+作画編』
ワークショップでの講義内容を、映像作品としてDVD2枚に収録。
通常は見ることができない“匠の技”を、惜しみなく伝授する“お茶の間講座”だ。
2006年4月発売/6700円(詳しくはコチラコチラをご覧ください)







覚えるよりも“作ること”を優先しよう



──活動が盛んなロクナナワークショップについて、お話を。

上田●ワークショップは事業としてみると、非常に波のある事業なんですね。だから、続けていくことに意味があるのではないかと思っています。ワークショップを始めるきっかけは、先ほど述べたように場所を借りるときでしたが、別にカフェやギャラリーでもいいじゃんって話もあったんです。何かしら人が来る場所にしたかったんです。でも、より人と人が繋がるのは何か……と考えたら“教える/教えてもらう”ということだと思った。どちらも会話が生まれるので。

──後進への育成が積極的なのは、特にWebの世界が他ジャンルよりも活発で。

上田●ほっといても、状況が変わりますから。

A.e.Suck●うん。

上田●今年最新のことは来年は過去のことになる。だから、常に勉強を続けないとならないし、勉強せざるを得ない。そのことに対してはみんな、貪欲ですよ。たとえば「ネットを見る」という表現が、3年後は「Wiiで見る」になっているかもしれない。まったく違うデバイスかもしれない。「ブラウザって何ですか?」と聞かれるときが来るかもしれないんですよ。それはもう周りが勝手に変わっていくので、こっちも頑張ってついていかなければならない。結局、技術が進んでも、コンテンツを提供する側がいなければ、何も普及しないし進んでいきませんから。だからみなさん、勉強熱心ですよね。

A.e.Suck●うん、めちゃくちゃ熱心。前にここに来た子、予習してきてたもん(笑)。「エイサクさん、予習してきた.flaファイルを見てください」って。

上田●すごいですね。

A.e.Suck●やる気満々で。こっちもやりがいあるよね。

──年齢幅は?

A.e.Suck●広いけど、俺より歳とった人は来ない(笑)。

上田●でもワークショップ全体でいうと、過去に80歳のおばあちゃんが来たことがあったんですよ。

A.e.Suck●へぇー、それはすごい。

上田●林(拓也)さんのFlash入門講座。おばあちゃんのマシンだけ、字を大きくしないとダメなんだけど(笑)すごく熱心で。お孫さんと何かをやりとりするとか……。

──いい話ですね。

上田●ええ。

A.e.Suck●趣味の人も多いですよ。アニメーションだと、たとえば主婦の方とか。仕事じゃないから気が楽だしね。あと会社の命令で「勉強しろ」と言われて来てる人もいるし。そうすると、その二人では入り込み方は全然違いますよ。

上田●そうですね。

A.e.Suck●一番思うことは、ソフトを覚えようとしないで“作ること”を優先してもらいたいな、と。作りたいものがあり、自分で実現させるためには、どういう機能を学べばいいのか……であって、最初に「Flashを憶えます」というところから入ると、何から覚えていいのかわからないし、覚えることは山ほどある。そんなの、なかなか身に付かないと思うんです。そういう覚え方はしないほうがいい。作りたいものありきで、まず何か作ってみればいいんですよ。俺だっていまだにFlashの機能、半分以上知らないですし。

上田●ははは。

A.e.Suck●アニメーション制作のコアな部分……昔から変わってない部分だけしか使ってないし、あとからバンバン追加された機能は、よくわからないですよ(笑)。でも、別に困らないんだよね。


ロクナナワークショップの模様Summer Camp 2007の模様

左:ロクナナワークショップより
講師陣はエイサクさんの他、植木友浩氏、植木真氏、大重美幸氏、神森勉氏、小松学史氏、サブリン氏、中村享介氏、野中文雄氏、
NORI氏、林拓也氏……と、Web〜Flashクリエイティブの最前線を担う錚々たる面々。詳しくはコチラをどうぞ。
右:
大重美幸氏のSummer Camp 2007「ActionScript 3.0入門 2日間集中トレーニング」より。
東京・大阪にて、別会場での特別講座も開催。その他、各種セミナーやイベントの企画・運営も手がけている


次週、第4話は「ロクナナの10年先って?」を掲載します。

(取材・文:増渕俊之 写真:FuGee)



上田キミヒロさん

[プロフィール]
うえだ・きみひろ●株式会社ロクナナ代表取締役社長、プロデューサー/ディレクター。1976年京都生まれ。CD-ROM制作、Director講師などを経て、Webコンテンツ制作を開始。96年にフリーランス制作グループ「ロクナナ」を発足、2001年に法人化。03年、株式会社となるとともに「ロクナナワークショップ」を開講。
http://rokunana.com/


A.e.Suckさん

えーいーさっく●Flashアニメーター/株式会社ロクナナ取締役。1960年名古屋生まれ。アニメーターとして多くのTV・劇場用アニメに携わった後、1997年からFlashでのアニメ制作に移行。セルアニメ技法を取り入れたFlashアニメーションを専門に制作している。1999年、Flashアニメーション制作プロダクション「ダイナミックトゥーン」を設立。

http://ae-suck.com



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