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Ajaxで変わるWebライフスタイル

第2回 Ajaxの活用方法と可能性


前回は、Ajaxのアウトラインを解説した。Ajaxの標準化に向けた活動が開始され、多種多様なAjax無償開発ツールも登場。ますますAjaxの敷居が低くなり、様々なコンテンツが登場することが期待できる。今回は、Ajax活用の具体例などを解説していく。

解説:平山 真(デフィデ株式会社)



[プロフィール]

ひらやま・まこと●デフィデ株式会社勤務。同社R&D部門である研究開発部のチーフエンジニアとして、リッチクライアント関連技術やオープンソー スの調査をベースに、新規ソリューションの立案や開発プロジェクトの運営を主な業務としています。プライベートでは、福岡のスカバンド 「SKA☆ROCKETS」のラッパ吹きとして活動中。



1. Webアプリケーションに“スパイス”としてプラスαを加える


1-1. AjaxとFlashの決定的な違い

 Ajaxの利用方法としては、Google MapsのようにAjaxをふんだんに活用したような「Ajaxアプリケーション」としてばかりではありません。「Ajaxアプリケーション」という観点に立つと、「AjaxとFlashは、どちらが優れているのか?」という議論をよく耳にします。AjaxはFlashの対抗技術と見られがちなのですが、ここでは、両者の優劣に関する議論はさておき、その両者で決定的に異なる一点に注目します。それは、Flashは、Flash Playerという、いわば閉じた環境でコンテンツを再生させる"プラットフォーム"ですが、Ajaxは、あくまでHTMLの標準技術をベースとした"手法"だという点です。この違いの意味を考える上で、具体的な例として「Google Suggest」を取り上げます。


キーワードによる検索結果と関連用語などを表示させる。








1-2. 手法としてのAjax

 Google Suggestは、フォームに入力された文字をサーバに問い合わせ、その文字で始まるポピュラーなテキストのリストをもらい、候補として表示する、というのが非常に大まかな仕組みです。この仕組みは、Flashでも同様のことを実現するのは可能です。では、このような機能を、複数のフィールドを持った入力フォームの中にある一つのフィールドとして使いたい場合を想像してみましょう。
Flashの場合、おそらくは入力フォーム全体をFlashとし、その中で、入力候補をリストアップするという機能を呼び出すことになると思います。
Ajaxの場合は、HTMLのフォームの一部がGoogle Suggestのように動作することになります。もちろん、Flash版Google Suggestを用意し、それをHTMLのフォームの中の一つのフィールドとして混在させることは可能かも知れませんが、現実的な実装ではありません。Flashは、HTMLとの混在が得意ではなく、アプリケーションなどの、ある程度大きな塊を形成してしまいますが、Ajaxは、HTMLそのものであるという点で、両者は大きく異なります。これが、先ほど述べた「プラットフォーム」と「手法」の違いです。
バリエーションとして、Google Suggestに似ていますが、以下のような実験的なAjaxコンテンツを紹介します。


Ajaxを使った郵便番号検索
http://pocari.org/tools/ajax/ajaxzip/







Ajaxを使った日本語IME
http://chasen.org/~taku/software/ajax/ime/







 Google Suggestも含め、これらの機能は、ほんのちょっとした機能をもたらすものですが、機能の実現にFlashを採用した場合は、Webアプリケーション全体をFlashとすることを検討しなければなりません。Ajaxであれば、従来型のWebアプリケーションをベースに、必要な部分にだけAjaxを組み込んでいくことができます。今後は、このようにAjaxを部分的に組み込み、便利な機能をプラスαする形での、手軽な利用が進んでいくと思われます。



2. デスクトップアプリケーションの代替として


2-1. Webメールに訪れる変革

 では、「Ajaxアプリケーション型」の場合を考えてみましょう。まず、例としてWebメールを挙げます。Webメールは、Ajaxが登場する以前からCGIなどの古くからある手法で実現されており、非常に一般的なWebアプリケーションです。しかし、一般的であるにも関わらず、これまでのWebメールは「使いにくい」という批判にさらされることが多々ありました。比較対象がOutlookなどのデスクトップアプリケーションであったので、無理もありませんが、Webメールはビジネスマンが出張時に電子メールを確認するなど、特別なケースで補的に使われるのが普通だったのです。
ところが、Ajaxの登場で、Webメールを取り巻く状況が変わりつつあるのを感じます。Ajax化の波は、一般的なWebアプリケーションであるWebメールにも訪れています。ISPが既存Webメールサービスを、Ajaxを採用したものへ移行するようなケースも見られるからです。実際に、筆者する勤務する会社もSo-net様のWebメールシステムをAjaxへシステムを移行のお手伝いをさせて頂きました。また、MicrosoftのWindows LiveメールやGoogleのGMailのように無償のAjaxを採用したWebメールサービスも提供されています。

Windows Liveメールでは、Outlookに近いユーザーインターフェースと操作性をWebブラウザ上で実現しています。GMailも高度な検索や2Gという保存容量を打ち出した点とともに、Ajaxによる快適な操作性といった特徴から、多くの話題を集めました。そして、Ajaxアプリケーションの進化でGMailなどのWebメールをプライベートでメインのメールクライアントとして利用するユーザーが見られるようになってきたのです。
もちろんその理由は、サービスとして全体的に質が高いから、ということにはなりますが、Ajaxにより普段からの利用に耐えられるストレスの無いユーザーインターフェースが実現された。このユーザーサイドの前提が整ったということになると思います。このような実例を見ていると、Webアプリケーションがデスクトップアプリケーションの代替になるという現象が、メールクライアントに対して見られえるようになってきたのです。


2-2. ビジネスアプリケーションのWeb化を現実に

 Webメールの場合は、Ajaxという技術を手に入れて、CGIのWebアプリケーションから進化してきているという流れになっています。もう一つ、AjaxはWebアプリケーションの進化ではなく、誕生をもたらしました。その例として、「Ajax13 inc.」が公開している、「ajaxLaunch」を紹介します。









 Ajax13 inc.は、AjaxによるWebアプリケーション開発にフォーカスし、2006年に創立されたばかりの企業です。Ajaxに特化した企業の登場というのも、興味深い現象だと思いますが、研究に余念がありません。そして、その成果をajaxLaunchでは、Ajax13 inc.が開発した各種プロダクトのデモンストレーションを見ることができるのです。Webサイトに掲載されているものは、ワードプロセッサの「ajaxWrite」、スプレッドシートの「ajaxXLS」、ドローツールの「ajaxSketch」などです。このように、一般的なビジネスアプリケーションのWebアプリケーション化が行われています。現状では、これらが、すぐにデスクトップアプリケーションの代替になるほどの品質や操作性を備えているわけではなく、まだ、操作がワンテンポ遅れたり、全体的に安定していなかったりというのが実情です。しかし、Ajaxが登場する以前では考えられなかった、ビジネスアプリケーションのWeb化という流れがAjaxの登場によって、具体的に動作するものとして、現実のものになりつつあるのです。



3. 確実に広がる活用方法とAjaxの可能性

 今回見てきたように、一言でAjaxといっても、Webアプリケーションの一部に組み込まれるような、部分的な利用から、デスクトップアプリケーションと同等のWebアプリケーションの実現まで、非常に幅広い活用方法・可能性が考えられます。その幅広さゆえ、いたるところで利用され、確実に広がっていくことが予想されます。その流れの中で、Web開発に関わる人間にとって、Ajaxへの取り組みは、程度の差はあっても避けては通れないものになりつつあるのを感じます。

次週へつづく
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