第4話 派遣社員から正社員へ。さらなる目標は…… | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第4話 派遣社員から正社員へ。さらなる目標は……

2024.5.18 SAT

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成功を勝ち取れ!異業種からの挑戦

第4回 株式会社博報堂アイ・スタジオ 富岡香好氏の場合


株式会社博報堂アイ・スタジオの富岡香好氏は、もともとWeb業界とはほど遠い不動産業界でのOL経験を持つコーダーだ。新卒時から、いくつかの会社で営業や一般事務、Webディレクターなどを経験しながら、自分がやりたいことを常に模索し、自身の道を見つけていった行動派である。“思い立ったら即行動” ――その驚くばかりの行動力と、さわやかな笑顔が印象的な彼女の原動力を探ります。

第4話 派遣社員から社員へ。さらなる目標は……

──最近たずさわったお仕事について教えていただけますか?
富岡●今年の4月頃に、郵政民営化にともなう日本郵政株式会社と郵便局株式会社のWebサイトリニューアルの話が持ち上がって来ました。今までやってきたコーディングのノウハウをそこでどーんと全部活用できる感じで……大変だったけれども、すごく楽しくて力を発揮できたプロジェクトでした。多くの人が関心を持っている郵政民営化ですから、これらのサイトはユーザビリティやアクセシビリティなど、全部ひっくるめてちゃんとしたサイトにしなくてはいけませんでした。その要求に応えるために準備期間を設けて試行錯誤しながら、いろいろと研究と検証を繰り返しました。

──民営化というタイミングだったこともあって、かなり注目されましたしね。
富岡●そうですね。特にアクセシビリティについて言うと……Web標準に準拠することで最低限のアクセシビリティは確保できるんですけれども、様々なユーザを想定したWebサイトにするには、サイト全体の構造からページ構成、言葉の言い回しなど大きなところから細かなところまで全てが重要になってきます。このプロジェクトでは、アクセシビリティに配慮しつつ、プロデューサーや、コピーライター、デザイナーを含めたプロジェクトメンバー全員で協力して制作することができました。

──なるほど。チーム全体でアクセシビリティに配慮して制作されたというのは素晴らしいですね。
富岡●でも、実際のところは障碍(しょうがい)をもった方がどのように利用するか、制作側ではわからないことが多いんです。それで、たまたまご縁のあった博報堂DYアイ・オーという弊社グループ会社の全盲の女性に検証を協力していただけたので、自信をもって実装することができました。彼女はWebの知識もすごくありますし、音声ブラウザを私たちが聞き取れないくらいの、ものすごい早さで聞くんですよ。その彼女に「どうやった方が使いやすい?」とひとつひとつ検証を重ねて作っていきました。最終的には「すごく使いやすいです」と言ってくれて……ちゃんと検証してもらってよかったなと思います。今まで制作したサイトでは「アクセシビリティを考慮してます」と言っても、はっきり言って、ちょっと自己満足なものが多かったんですよ。読み飛ばし機能を入れていても「便利かな……?」と、探りながらのところもありましたし。これを機に、もっとほかのサイトでも積極的にアクセシビリティを導入して広めていきたいなと思っています。そのためには、もちろん得意先の理解も必要ですが、こちらからの企画提案も必要になると思います。

──つい先日、手がけたサイトが社内のアワードでグランプリを獲得したとお伺いしました。
富岡●そうなんです! カネボウ化粧品のSENSAIというブランドサイトなんですが、これは日本では展開していないブランドで、海外向けのブランドサイトなんです。日本語以外の5カ国語で展開しています。

──5カ国語ですから、かなり効率よくやらないと大変そうですね。
富岡●今回なぜグランプリに選ばれたかを考えると、デザインなどの表現もさることながら、5カ国語をひとつのプログラムを使って効率よく運用していることも含めて評価されたんだと思います。英、ドイツ、フランス、スペイン、イタリア語の5カ国語だったんですけど……たとえば言語によって特殊な記号があったりしますが、HTML上で記号はそのまま表示できないので、実体参照文字に変えるためのプログラムを作ってもらったりしました。テンプレートをうまく活用しスタイルシートを5カ国語分共有するなどして、ファイル数を少なくするとか、「更新性、効率性を追求する」というのをコーダーとして、ものすごく考えましたね。そのプロジェクトチームは、ディレクター、デザイナー、プログラマーとほとんど女性で構成されたチームで、みんなが一丸となって制作できました。あらゆるところを工夫するという、自分たちの中では普通だと思ってやっていたことが会社に評価されてとにかく嬉しかったですね。多言語対応は苦労しましたけど、良い結果が出せたと思います。

──この秋に晴れて派遣社員から正社員になったと伺いました。今後のご自身の目標を教えてください。
富岡●先ほどもお話ししたように、日本郵政株式会社と郵便局株式会社のWebサイトで培ったアクセシビリティのノウハウを、個人的にはさらに追求していきたいと思っています。あとは最近、後輩の指導をがんばっています。実は、私が入ったのをきっかけに、博報堂アイ・スタジオでも少しずつ職業訓練校出身者をインターンのような形で受け入れてます。職業訓練校卒業生の受け入れ先って、まだまだ少ないようなんですが、実はそこで学んでいる人たちはみんな社会経験があるので、一から社会常識を教える必要がなく、意欲のある人が多いんです。そういう人たちに、自分が経験しておいてよかったなと思えることは伝えていこうと思っています。

──なるほど。OL経験者の富岡さんですから、説得力もありますね。
富岡●指導している後輩によく言うのは……「自分の仕事の枠を作ってない?」ということ。特にWebの業界が初めてで、一般事務をやっていた人は、どうしても“待ち”の姿勢になってしまうことがあるんですね。でも、プロジェクト全体を見渡せるようにならないといけないので、案件がどのように進んでいるのか、自分はその中のどこにいるのかということをしっかり掴めるように……始めのうちは何でもしてもらうようにしています。やる気と熱意さえあれば、異業種からでも問題なく入ってこれると思いますよ。

──心強い言葉ですね。ありがとうございました。

(取材・文:草野恵子  撮影:谷本夏)

株式会社博報堂アイ・スタジオ
http://www.i-studio.co.jp/
株式会社博報堂アイ・スタジオは、博報堂100%出資のクリエイティブ企業である。インタラクティブなメディアのクリエイティブ、プロモーション、マーケティングなどのすべてをトータルで提供・サポートする体制が確立されており、より高いクオリティが求められるさまざまな業種の案件を手がけている。国内外の広告賞、デザイン賞も数多く受賞している。



今回で富岡香好さんの記事は終了です。次回をお楽しみに!

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