第1話 パラダイムシフトをおこしたモノを広告に取り入れる | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第1話 パラダイムシフトをおこしたモノを広告に取り入れる

2024.5.16 THU

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2004年にP&Gの「アイラブ困ったさんコンテスト」、2005年にコカ・コーラ ジョージアの「Radio GEORGIA Special Dream Navigators」などにおいて、ブログやポッドキャスティングをいち早くマーケティング手法に取り入れ、Webクリエーション・アウォード「Web 人 of the year」賞受賞。2007年にはナイキジャパン「キメワザバトル」で東京インタラクティブ・アド・アワード金賞受賞といった数々の賞を受賞してきたビーコン コミュニケーションズの渡辺英輝氏。Webならではの新しいツールや技術を広告マーケティングにタイミングよく取り入れる彼のセンスは業界でも評価が高い。そんな渡辺英輝氏に現在のWebの状況、そしてWebの未来についての話を聞かせていただいた。

第1話 パラダイムシフトをおこしたモノを広告に取り入れる。


プレイヤーからプレイングマネージャーへ


——最初にビーコン コミュニケーションという会社について教えてください。

渡辺●ビーコン コミュニケーションズは、アメリカ、シカゴを拠点とする広告代理店レオバーネットとNYをベースにしたダーシーという会社、そして電通の3社によるジョイントベンチャーとして2001年に設立されました。現在は世界第3位の広告グループ、ピュプリシスグループの傘下にもなっています。総合広告代理店として幅広い分野において広告に関する業務を展開しています。

——渡辺さんが所属しているデジタル部とは?

渡辺●僕が所属しているデジタル部は、インターネットを中心にした広告を専門に扱っている部署です。現在ではPCやモバイルが中心ですが、今後はあらゆるメディアがインターネットと密接に繋がるようになってくると思うので、将来的にはPCやモバイルに限らず、インターネットを介した広告を中心に展開していく部になっていくと思います。

——そのなかで渡辺さんの役割は?

渡辺●デジタル部の部長として、主にマネージメント業務と、デジタル部のヴィジョンを描いて、方向性をディレクションをするといった、いわば旗ふり役みたいなことをやっています。デジタル部の創業時はスタッフが2、3人だったので、制作進行管理から、企画、プレゼン、クリエイティブディレクションまですべてをやっていました。最近ではコンセプトなどは考えたりもしますが、現場的なことは他のメンバーにまかせるようにしています。

——状況が変わってきたのは最近の話ですか?

渡辺●広告代理店ではTVCMを手掛けるクリエイターがトップという位置づけがあって、インターネットを中心とした僕たちの仕事が認められるというか、求められるようになってきたのは、やはりここ最近の話ですね。いまはスタッフも18人いて、僕の仕事の役割も変わってきています。

——具体的にどんなことをやっているのでしょうか?

渡辺●18人いるチーム全員が良い仕事をできるように、みんなのモチベーションが上がるような環境を作り出すこと。時にはアジテーションするようなこともありますね。僕はこれまでそういうことをあまりやってこなかったので、仕事としての新しさ、楽しさはあります。プレイヤーからプレイングマネージャーになったというか。


自分でブログをやったら、いろいろなことが見えるようになってきた


——渡辺さんがこれまで手掛けてきた仕事で、転機になった作品というのはあるのでしょうか?

渡辺●ブログが日本に入ってきて、アーリーアダプターが使うようになったのは2003年くらいですかね。僕個人としてブログを書きはじめたのが2004年1月ですが、自分でブログをやってみて見えてきたことがあったんです。

ブログは広告における消費者とのコミュニケーションにおいて、ツールというよりもムーブメントになるだろうとか、ブログをきっかけにインターネットの状況が大きくシフトしていくだろうな、とその時に実感しました。そういった想いもあって、2004年9月にP&Gの「アリエール アイラブ 困ったさんコンテスト」というブログを使った参加型キャンペーンを手掛けたのが僕にとっては転機だったような気がします。広告キャンペーンにおいていち早くブログを取り入れたことで、かなり話題にもなりましたね。

その後も、ナイキの「ブカツブログ」や、コカ・コーラ ジョージアの「Radio GEORGIA Special Dream Navigators」ではポッドキャスティングを使ったりしたのですが、ブログやポッドキャストといった、インターネットの中でパラダイムシフトを起こしたようなものを広告やマーケグィングにうまくそして早く取り入れるということを意識的にやってきました。

インターネットという新しいメディアの中ではそういったムーブメント的なものが一番広告に有効に使えるのではないかと思ったからです。結果としてそれでいろいろと賞をいただいたり、このようにいろいろなところで取材をしていただけるようにもなったのですが。


スターが揃っている会社


——ビーコン コミュニケーションズならではの特徴というのはあるのでしょうか?

渡辺●ひとつは、ビジネスモデルが他の日本の広告総合代理店とは違うということでしょうか。ビジネスモデルが違うので、新しいことをやったり、チャレンジがしやすい会社ですね。

——ビジネスモデルが違うというのはどういうことでしょうか?

渡辺●多くの日本の代理店はメディアのコミッションでビジネスを成立させていますから、彼らのビジネスモデルはマス広告が中心になっているんですね。インターネットを使って何か新しいことをチャレンジするよりもTVや雑誌のメディア枠を売る方があきらかに大きな金額になりますから。

そうなると社員のモチベーションとしてもWebをやるよりもTVCMのほうが高くなりますよね。売上が上がれば自分の仕事の評価も高くなりますから。マスメディアを売って儲けるビジネスモデルの中では、どんなにWebで先進的なことをやったり、たくさんの賞を受賞しても、現実的にはあまり評価されないんですよ。

でも、うちや他の外資系の広告代理店はフィーベースでやっていて、メディアを売るというところでビジネスをしていないんです。クライアントにとって一番効果的で最適なコミュニケーションを提供するというのが僕たちのビジネスになってくるので、そこではメディアの種類はあまり重要ではない。もしかしたら効果的なメディアはTVではなくて、インターネットかもしれないし、イベントという時もあるでしょうし。

あと、うちのチームは若くて優秀なスタッフが揃っているのも特色ですね。新しいことをどんどんやっていこうというのが社風でもあるのですが、ここに集まっている人材としてのクオリティが、うちの売りだと思います。他の代理店と比較したら規模は大きくはないですが、密度が濃いというか、小さいなりにとがっているメンバーが集まっています。僕は今年33歳ですが、世代的にも同じくらいの人が多くて、若いスタッフが中心になっているので、環境的に仕事がしやすいと思います。

——具体的にどのような方がいるのでしょうか?

渡辺●別に賞が全てではないですが、2004年カンヌ国際広告祭のCyber部門でグランプリを受賞した「エコトノハ」のプロデューサーの新野文健や、クリエイティブディレクターの今井康仁も国内外の広告賞を多く獲っていることで業界ではかなり有名ですし。2007年東京インタラクティブアドアワードでグランプリを獲ったNike Cosplayを手がけた柿並俊介も最近チームへ入りましたし。インタラクティブ広告において実績を残している優秀なスタッフがいます。



(取材/蜂賀亨 撮影/谷本夏 )





[プロフィール]
ビーコン コミュニケーションズ
デジタル部 部長 渡辺英輝

1996年米国インディアナ大学、経営学部卒業。
株式会社野村総合研究所を経て、2000年ビーコン コミュニケーションズ入社。
2005年Webクリエーション・アワード「Web人 of the year」賞、東京インタラクティブ・アド・アワード金賞、カンヌ国際広告祭、New York Festival ほか受賞多数。
著書に「Webキャンペーンのしかけ方。 広告のプロたちがつくる"つぎのネット広告"」(インプレスジャパン)がある

http://www.29man.net/

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