第2話に続き、山田英二氏が代表を務めるウルトラグラフィックスによってデザインされた作品を紹介し、その制作過程における思考のプロセスに迫る。第3話は、コカ・コーラのグローバルキャンペーン広告。アートディレクションを担った近藤ちはる氏に話を伺った。
第3話
世界規模で展開されるユニークな試み
「the Coke side of life」
キービジュアルを作成する仕事
山田氏のもと、すぐれたスタッフが集結していることも大きな強みとなっているウルトラグラフィックス。今回紹介する日本コカ・コーラの広告では、2005年のJAGDA新人賞を受賞したことでも知られる近藤ちはる氏がアートディレクションを担当した。
「“the Coke side of life”と名付けられたキャンペーンで、日本のみならずグローバルに展開されています。日本語でのキャッチコピーは“コークのきいた人生を”。そのコピーに基づいて日本オリジナルのキービジュアルや、携帯電話のゲーム企画、バレンタイン企画などの、単発で展開されるキャンペーンのビジュアルを作成しました」
このプロジェクトのユニークな点は、日本版のキービジュアルだけではなく、世界各国のデザイナーが作成したキービジュアルが他国でも自由に使用されること。つまり近藤氏の作ったビジュアルが海外で使用されたり、逆に海外で作られたものが日本版に活用されたりするわけだ。
「制作時にはコーラのボトルから何らかのグラフィックが飛び出していることが条件となりました。また半分隠れているロゴのレイアウトや、ボトルからモチーフが飛び出している角度などはフォーマット化されていました。これまでに、日本発のビジュアルとして“人生”“ひらめき”“ケータイライフ”“告白”をはじめ様々なアイデアを形にしました」
商品の性格も考慮したモチーフ
これらのうち、最初に作成されたのは、キャンペーン全体の標題でもある「コークのきいた人生を」の言葉が添えられたポスター。ややシニカルな雰囲気を兼ね備えつつも愛らしいモチーフが、ボトルの口から弾け飛んでいるのが印象的だ。
「一般的なコカ・コーラのイメージというと、日の当たる屋外でも飲む一方、夜のクラブなどにもマッチすることが上げられると思います。それを反映して、ただストレートに“Happy”をビジュアル化するだけではなく、目玉や唇などの変わったモチーフも盛り込んで、商品自体の性格を表現したのです。それらを踏まえながらも、全体的には楽しげな印象を与えるように仕上げました」
そのほかのキービジュアルも、そのつどキャッチコピーと足並みを揃えて作成。キャンペーンの特性をうまくグラフィックで表現した、典型的なビジュアルコミュニケーションワークといえるものだ。
「“ケータイライフ”のキャンペーンでは、主なターゲットが学生などの若者だったので、全体的にポップな印象になるように気を配りました。“告白”はバレンタインのキャンペーンなのですが、ハートをモチーフにしながら全体をピンクでまとめてラブリーなイメージを狙っています。残り1つのキービジュアルでは、電球によって“ひらめき”を表現しました」
「“ケータイライフ”のキャンペーンでは、主なターゲットが学生などの若者だったので、全体的にポップな印象になるように気を配りました。“告白”はバレンタインのキャンペーンなのですが、ハートをモチーフにしながら全体をピンクでまとめてラブリーなイメージを狙っています。残り1つのキービジュアルでは、電球によって“ひらめき”を表現しました」
“思いがけないケース”の楽しさ
独創的なプロジェクトならではの面白さがある反面、前もってフォーマットの制約があることで難しい部分も存在する。通常、全体をコントロールするアートディレクターとして仕事をしていると、部分的な役回りを担うことには戸惑いもあるのではないだろうか。近藤氏は「途中で規定に変更があったりして大変でした」と振り返りながらも、次のように今回の仕事の楽しさを語る。
「私が作ったキービジュアルが海外で使われる可能性もあるわけです。さらに日本版の広告ではキャッチコピーとビジュアルの意味を合致させていますが、海外で用いられる場合には必ずしもそうなるとは限りません。思いがけない組み合わせもあるでしょうし、それはそれで非常に面白いことだと感じました」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第4話は「内容と値段に見合ったデザイン」について伺います。こうご期待。
「私が作ったキービジュアルが海外で使われる可能性もあるわけです。さらに日本版の広告ではキャッチコピーとビジュアルの意味を合致させていますが、海外で用いられる場合には必ずしもそうなるとは限りません。思いがけない組み合わせもあるでしょうし、それはそれで非常に面白いことだと感じました」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第4話は「内容と値段に見合ったデザイン」について伺います。こうご期待。
●ウルトラグラフィックス(近藤ちはる) |