山田英二氏が代表を務めるウルトラグラフィックスのデザイン術を紹介してきた本連載。最終回となる第4話では、さまざまな工夫が凝らされたフジテレビ系列の各種DVDパッケージに注目する。
第4話
内容と値段に見合ったデザイン
「各種DVDパッケージ」
ドラマの内容に合わせた体裁
映画やテレビドラマにまつわるグラフィックも数多く手がけているウルトラグラフィックス。いずれの作品にも、購入者を惹き付けるアイデアが奮段に盛り込まれている。たとえば「プロポーズ大作戦DVD-BOX」(ビクターエンタテインメント)。これは写真アルバムを模した形状が特徴的だ。
「このドラマのストーリーは、幼馴染みの結婚式でスライド写真を見ていた主人公が、その現場にタイムスリップして過去をやり直すといったもの。だからポイントとなっている“写真”をモチーフにして、写真アルバム状のDVDケースを作りました」
また、連続ドラマ「東京タワー オカンとボクと、時々、オトンDVD-BOX」(ポニーキャニオン)は、缶のケースにDVDのほか、おもちゃのメガネやタオルなどのグッズが同梱されている。これも劇中に登場する菓子の缶をトレースしたアイデア。「ドラマの世界観に浸ることができる工夫」のひとつだ。
「TVドラマのDVDパッケージを手がける際には、実際に鑑賞して何が一番のポイントになっているか探します。自分で観て印象に残ったことを形にするだけです。DVDの購入者は、そのドラマの内容を気に入っている場合がほとんどなので、内容に合わせたほうがいいと思うのです」
「TVドラマのDVDパッケージを手がける際には、実際に鑑賞して何が一番のポイントになっているか探します。自分で観て印象に残ったことを形にするだけです。DVDの購入者は、そのドラマの内容を気に入っている場合がほとんどなので、内容に合わせたほうがいいと思うのです」
その時々に必要とされる戦略
さらに、DVDパッケージの方向性には、発売時の状況が強く関係するすることも忘れてはならない。代表例としては、連続ドラマより以前に放映された単発ドラマの「東京タワー オカンとボクと、時々、オトンDVD」(アミューズエンタテインメント)があげられる。
「こちらは初めてのドラマ化だったので、むしろ原作の小説をベースにしたパッケージのほうが印象深くなると考えたのです。だから素直に本をモチーフにしました。そのときに何をやるべきかを考えれば、作るべきものは必然的に見えてきます。あまり考え過ぎないのがアイデアを出すコツかもしれません」
シリーズもの、関連製品との兼ね合いについて考慮されているのは「大奥 スペシャル・エディションDVD」(ポニーキャニオン)も同様だ。TVドラマ版のDVDデザインも手がけた山田氏は、映画版のDVDケースでは次のようなアイデアを形にした。
「ドラマ版は金の箱で制作したのですが、今度は映画版ということで、その上をいくものとして桐の箱に入れることにしました。桐の箱というとコストがかさみそうな印象でしょうけど、調べてみると実現できないほどでもなかったんです」
捨てるべきは“ネガティブな思い込み”
これらの企画は、すべて山田氏から提案して実現したものだ。こだわりの数々は、自身もDVDコレクターであるからこそ生まれる発想だろう。
「DVDボックス集は決して安い商品ではないですよね。すると値段に見合った見栄えを提供する必要があると思います。どのような商品でも同じことですが、特にDVDは一度そのドラマや映画を観た方が購入することが多いので、お金を払ってでも買いたいと感じさせることが重要です」
とはいえ、規格外のパッケージを制作したり、奇抜なアイデアを実現しようとすると、さまざまな困難がつきまとうもの。そのような不安を山田氏は次のように諌める。それはジャンルを問わず、デザイン全般にも通ずる含蓄のある言葉だ。
「予算や手間などとの兼ね合いもあって、特殊なことを発想しても“実現できない”と諦めてしまうことも少なくはないでしょう。ただ“今まではこうだったから”と思い込んではいけません。印刷技術やコストは時代によっても変わるものなので、ネガティブな考えにとらわれず、考え込んであきらめる前に行動に移してみることです。型にはまらないことが大切なんです」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
「このアートディレクターに聞く」第19回ウルトラグラフィックスのインタビューは今回で終了です。次回からは成田久さんのお話を掲載します。
「DVDボックス集は決して安い商品ではないですよね。すると値段に見合った見栄えを提供する必要があると思います。どのような商品でも同じことですが、特にDVDは一度そのドラマや映画を観た方が購入することが多いので、お金を払ってでも買いたいと感じさせることが重要です」
とはいえ、規格外のパッケージを制作したり、奇抜なアイデアを実現しようとすると、さまざまな困難がつきまとうもの。そのような不安を山田氏は次のように諌める。それはジャンルを問わず、デザイン全般にも通ずる含蓄のある言葉だ。
「予算や手間などとの兼ね合いもあって、特殊なことを発想しても“実現できない”と諦めてしまうことも少なくはないでしょう。ただ“今まではこうだったから”と思い込んではいけません。印刷技術やコストは時代によっても変わるものなので、ネガティブな考えにとらわれず、考え込んであきらめる前に行動に移してみることです。型にはまらないことが大切なんです」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
「このアートディレクターに聞く」第19回ウルトラグラフィックスのインタビューは今回で終了です。次回からは成田久さんのお話を掲載します。
●ウルトラグラフィックス(山田英二) |