
第2話に引き続き、資生堂の成田久氏によってデザインされた作品を紹介。第3話で注目するのは、BONNIE PINK『Water Me』(ワーナーミュージック・ジャパン)のCDジャケットだ。
第3話
アンバランスで緊張感のある構図
「BONNIE PINK『Water Me』」
洗練された透明感
レイアウトする際には、特に「間の取り方やバランスには気を配る」と語る成田さん。今回紹介する作品も被写体となる人物の背後に大きなスペースを設けた絶妙な構図が光る。
「これは2007年にドラマ『わたしたちの教科書』の主題歌となったBONNIE PINKさんの楽曲が収録されたCDです。このレイアウトでは、アンバランスな緊張感を出して、ちょっと不可思議な印象を与えたかったのです」
発想の土台となったのは楽曲やアーティスト自身から感じ取った雰囲気。資生堂のブランド『ANESSA』の広告での仕事をきっかけにBONNIE PINKと出会った成田さんは、そのときの印象を次のように語る。
「透明感のある研ぎすまされたものを感じました。ご本人もすごくナチュラルできれいな方。だから『Water Me』のCDジャケットでは、そういった知的なニュアンスや美意識の高さ、楽曲や彼女自身の持っている空気感を表現したのです」
シズルのある水をイメージ
この空気感はトリミング位置だけではなく、全体の色味などを決める際にも重視。ここにも成田さんによる“空間へのこだわり”が集約されている。
「ドラマがいじめをテーマにした内容だったこととも関係しているのですが、彼女が教室の片隅にポツンと座っている雰囲気も意識しました。だから、スタジオに大きなキューブを設けて、そこに座ってもらう構図は、構想の初期段階からあったのです。さらに楽曲のタイトルにもある“水”の冷たさを表現するため、空気のようにも感じられる白いバックを敷いて、撮影の際には背後からライトを当てました。水の色のようにも見える色の違いが出ているのはライトの加減によるものです。水の温度のようなものをうまく表現できて自分でも気に入っています」
PVでも採用された手製の衣装

さらに驚かされたのは「服も全部、僕がミシンで縫っているんです」との発言。もともと成田さんは、学生の頃にテキスタイル科でファブリックについて学んでいた。とはいえ、アートディレクターが衣装まで手がけることは異例のことだろう。またその作業量は膨大となるはずだ。
だが、成田さんの言葉からは苦労や辛さなどを微塵も感じられない。ただあるのは「自分が手がけるビジュアルに登場する方は、女性なら最高にかわいく、男性なら最高にカッコ良く見せたい」との信念。

「 僕が自分でコスチュームを作ることを提案して、黒、白、ブルー、ブルーグレーで、4着のパターンを作ったのです。最終的に使用する衣装はその中から選んでもらったのですが、とても気に入っていただけたようで、色違いのコスチュームをPVやアーティスト写真でも着てもらっています。それはすごく嬉しかったですね」(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第4話は「果てしなく広がる創作意欲」について伺います。こうご期待。
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●成田 久(なりた・ひさし) |




