第4話 果てしなく広がる創作意欲「成田久 個展『ヘンタイ』」 | デザインってオモシロイ -MdN Design Interactive-

第4話 果てしなく広がる創作意欲「成田久 個展『ヘンタイ』」

2026.4.24 FRI

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資生堂の成田久氏によるデザイン術を紹介してきた本連載。最終回となる第4話では、彼がプライベートで開催した個展に注目。仕事とアーティスト活動の関係について話を伺った。



第4話
果てしなく広がる創作意欲
「成田久 個展『ヘンタイ』」



大学時代から続けているアート制作



 成田さんの言葉からは、資生堂での仕事を心底から楽しんでいる様子が感じられる。それは、まさに天職のようで端から見ていても羨ましい限りだ。しかし、彼のクリエイティビティは仕事の現場だけに留まらない。

 「プライベートでの創作活動を学生の頃から続けています。2007年の9月にも、銀座にある現代アートのギャラリー、巷房で個展を開催しました」
その展覧会の題名は「ヘンタイ」。DMには「変、だけど美しい。かわいい。けど狂ってる」とのキャッチコピーがある。成田さんが手がけている日常の仕事とは、やや趣が異なるものだ。

 「会社の仕事に携わっているときや講演などで発言するときには、やはりどこか資生堂の一員としての自分を意識するものです。ただ、仕事が大事だからこそ、飽きないように自分の頭を切り替える場も必要だと考えています。会社では実現できなくても、個人的に表現したいことはありますしね」


“変”な“タイ”がテーマ



 会場にズラリと飾られたのは、すべて自らソーイングしたネクタイ。ストライプやボーダーのカラフルなもののほか、金・銀をメインにしたものなど、計200本が展示された。

 「今回の展覧会では、自分でも“使いたい”と思うようなネクタイを作りました。もし気に入ったものがあれば、そのまま来場者が購入できるようにしたのです。さらに、そのネクタイをモデルに着けて、フォトグラファーの前田洋伸さんに撮影してもらった写真も飾っています。モデルの男性はオーディションで決めたのですが、いろいろな髪型を試してみたり、半裸になってもらいながら、カッコ良いのだけれど少し変なギリギリの線を狙いました」

 この展覧会で成田さんは、展示作品や会場の空間演出とともに「会場を訪れてくれた人たちとのコミュニケーションも“アート”だ」と感じたという。

 「作品の購入者の中に、スーツ姿で派手なネクタイを実際に着用している写真を送ってくれた方がいました。とてもシュールで面白かったです。そんなところからも、新たなインスピレーションがわきました」


創作の軸は“成田久”という人間



 巷では、学生時代に個人的な創作をしていても、仕事を始めると忙しさからそれを諦めてしまう人も多い。だが、「無駄に時間を使うのが苦手」と語る成田さんは、仕事もアーティスト活動も犠牲にせず見事に両立している。

 「会社の仕事も個展などの活動も、両方とも自分がやりたいことですからね。僕にとっては、プライベートでの作品制作があるからこそ、普段の仕事もできるのです。個人的な活動から、会社で新たなアイデアをアウトプットできることもあるし、反対に資生堂の仕事が僕個人の作品制作に影響を及ぼすこともあります。それに、企業に所属してはいますが、やはり成田久という人間を軸にした生き方でありたい。創造力やクリエイティビティは、自分の頭の中にあるものですから。それは会社の仕事でも同じこと。やはり自分だからこそ実現できるデザインを大切にしたいと考えているのです」
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)


「このアートディレクターに聞く」第20回成田久さんのインタビューは今回で終了です。次回からはenamel.さんのお話を掲載します。




●成田 久(なりた・ひさし)
1970年生まれ。多摩美術大学卒業後、東京藝術大学大学院修了。1999年資生堂に入社、宣伝部デザイン制作室に所属。アネッサ、マシェリ、マキアー ジュといった資生堂を代表するブランドのアートディレクターとして手腕を発揮する一方でアーティストとしても活動。定期的に作品を発表している。またイン ハウスデザイナーの枠に留まらず、ボニー・ピンクのCDジャケットをはじめとしたパーソナルなデザインワークでも注目される。

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