
第2話に引き続き、enamel.の石岡良治氏によってデザインされた作品を紹介し、その制作過程における思考のプロセスに迫る。第3話では、ファッションブランド「DIET BUTCHER SLIM SKIN」のカタログに注目。
第3話
到達すべき着地点までのプロセス
「DIET BUTCHER SLIM SKIN」
仕事のきっかけとなった“縁”
今回紹介するカタログは、クライアントから通常通りのオーダーを受けて始まったものではない。一連のプロジェクトは、DIET BUTCHER SLIM SKINのデザイナーと石岡さんとの“縁”に端を発している。
「もともと彼らは、僕たちenamel.が制作しているバッグを買ってくれていたお客さんだったのです。それで次第に“何か一緒に面白いことをしよう”という話になって始まった仕事なんです」
現在では東京コレクションなどにも登場するDIET BUTCHER SLIM SKINだが、当時はファッションショーやメディアへ必要以上の露出を避けるブランドであったという。そんな状況を把握した石岡さんは、あえて王道を選び「カタログのようなものを作ったら面白いのではないか」と提案。とはいえ、ブランドの個性を付加するため、一般的なカタログとは趣が異なる仕上がりを目指し、その制作プロセスも型破りなものとなった。
カタログに登場するモデル
「モデルは、ほとんどが街中でスカウトした方たち。クライアントがいいモデルを探してくるのがうまいんです。撮影現場では、お酒を飲んでもらったりもしたのですが“少しトラブルやハプニングが起きても面白いかな”と考えていたほどです」

基本的に素人モデルを採用したが「全員が素人だと仕上がりが締まらない」と語る石岡さん。そこで1冊の中で最低1人はプロを起用しながら、全体のバランスを調整。
「プロのモデルとして、初年度のカタログではダンテさんという方に登場してもらったのですが、それを見たお客さんにすごく人気が出ました。そこで、次のカタログでは彼を中心に据え、魔法使いのような役を演じてもらったのです」
他にもこのカタログには、さまざまな趣向が盛り込まれた。表紙のタイトル文字は、浜辺で磁石を用いながら砂鉄を集めて作成したもの。本文ページには、小口に折り返しのあるページを設け、「引き出しを開けて洋服を見たくなるイメージ」が表現されている。
着地点までの道筋を楽しむエッセンス
これらのアイデアは、いわゆるノリやその場の流れに沿うプロセスから発生したものだ。
「みんなで盛り上がるだけ盛り上がって、それを形にしているだけなのです。良い意味で“その場しのぎ”なのです」
その後、ファッションショーにも登場するようになったDIET BUTCHER SLIM SKIN。初めてのショーでは緊張感のあるバックステージを撮影し、それが次なるカタログのビジュアルとして活用された。まさに、その場の臨場感と流れを活かして、プロジェクトは進みゆく。
「DIET BUTCHER SLIM SKINの場合には、ノリを大切にすることが最も彼らのテイストに適していると思うのです。仕事なので達成
しなければならない着地点は決まっているものですが、そこに到達するまでには、いろいろな道筋がありますよね。僕はそのプロセスを“どのようなエッセンスで面白くできるか”を、この仕事では大切にしています」

しなければならない着地点は決まっているものですが、そこに到達するまでには、いろいろな道筋がありますよね。僕はそのプロセスを“どのようなエッセンスで面白くできるか”を、この仕事では大切にしています」 (取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
次週、第4話は「異業種との“化学反応”を楽しむ」について伺います。こうご期待。
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●石岡良治(いしおか・りょうじ) |




