
enamel.によるデザイン術を紹介してきた本連載。最終回となる第4話では、彼らがクライアントワーク以外の活動として続けている自社ブランドについて話を聞いた。
第4話
異業種との化学反応を楽しむ
「enamel.」
受注生産によるオリジナル商品
enamel.は、彼らの屋号であると同時に、彼らが個人的に手がけるバッグや食器などのブランド名でもある。石岡さんとパートナーの紗佑里さんとは学生時代からの付き合いだが、2人は卒業後すぐにenamel.としてのポジションを固めたわけではない。
「僕も最初はデザイン事務所で働いていましたし、彼女はバッグデザイナーとして企業に属していました。ただ、通常のビジネスのスパンでは、気合を入れて作った商品が、次のシーズンには流通できなかったりする寂しさがあったのです。そこで“ゆっくり2人で自分たちのペースを保ちながら、ハンドメイドでもの作りをしていこう”と話し合ってスタートしました」
enamel.で扱う商品は、基本的にすべて受注生産。ルックブップカードやWebページから商品を選んでもらうスタイルだ。
「以前は“どこで作品が見られるの?”と問い合わせを頂くことも多かったのですが、現在ではアトリエを日曜日だけ開放し、そこで実物を見てもらえるようにしています」
「以前は“どこで作品が見られるの?”と問い合わせを頂くことも多かったのですが、現在ではアトリエを日曜日だけ開放し、そこで実物を見てもらえるようにしています」
自主トレーニングによるデータの蓄積
バッグデザイナーとグラフィックデザイナーの共作。だが、布製品や紙製品以外に、テーブルウェアなどの商品もラインナップされている。専門分野ではなかった食器などの生産を始める際に、とまどうことはなかったのだろうか。
「マテリアルが異なっても興味が背中を押してくれることが多いのです。ゴールを設定せず、自分たちでもどうしたら良いのか分からない状況を楽しんで、思いのままに模索を続けています。たとえば、ガラス製品にも挑戦しましたが、制作過程で割れてしまうことが多いんですよね。だから仕上がる確率は低いし、さらに割れたものを再び焼くと、また形が変わって面白くなることも分かりました。そのようにデータを蓄積していって次に繋げているのです。いわば自主トレーニングを繰り返しているようなものです」
異なる分野のプロとの“化学反応”

“明確なゴールが存在しないこと”は、自主制作ならではの特徴だ。ただ、そのような違いはあっても、石岡さんにとって受注仕事と自主制作には「それほど大きな違いはなく、完全な別物としては捉えていない」とのこと。
「このような自主トレーニングの延長線上に、日常の仕事があります。自分たちのみで完結するものだけを作っていたいわけではなく、むしろ、さまざまな分野のプロフェッショナルたちと一緒に仕事をして、そこから派生する化学反応を楽しみたい。他のジャンルの方に対して“僕らはこんなことができます”と分かりやすく伝えるための自主トレーニングでもあるわけです」
グラフィックデザインとファッションの両方をうかがわせる名前のenamel.。石岡さんは「一応そのような意味は込めていますが、それほど深くこだわって名付けたわけではない」と照れてみせるが、その活動スタイルは、見事な化学反応を体現している。
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
(取材・文:佐々木剛士 人物写真:谷本夏)
「このアートディレクターに聞く」第21回石岡良治さんのインタビューは今回で終了です。次回からは柿木原政広さんのお話を掲載します。
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●石岡良治(いしおか・りょうじ) |




